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隊長、魔法が使えるのにワープ装置が作れません!  作者: まさな
第一章 軍人のなすべきこと
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第十五話 冒険者ギルド

 ギルドの看板はネリーが知っていたので、すぐに見つけることができた。

 中規模以上の街にはたいていどこにもあるそうで、翼と靴を組み合わせたマーク。

 ネリーの話を総合すると、許可を得て活動する個人事業の民間傭兵企業ということらしい。


 この世界にはやたらと強くて危険な魔物がうろついているから、こういう商売も成り立つのだろう。

 ヤダヤダ、未開惑星って。

 早く現代文明のファジスに帰りたい。


 扉の無い入り口をくぐって中に入ると、そこは木造ホテルのロビーのような趣で、奥側に受付カウンターがあり、手前には休憩できる丸テーブルと椅子が置かれている。右の壁にはたくさんの木の札がかけられており、ネリーが言うにはあれは仕事の依頼票で、掲示板の役目を果たしているという。


 ただ……傭兵の集まる場所とあってか、武装したゴツい男達が大勢いて、落ち着かない雰囲気だ。


「おい、邪魔だ。そこに突っ立ってんじゃねえよ」


「す、すみません。じゃあ、カウンターに行こう」


 十五歳以上なら誰でも登録できるということなので、受付に向かう。


 ムスッとした中年男と綺麗なお姉さんが二人並んで受付をしているが、当然、右の親切そうなお姉さんの方に話しかける。

 アリアも別にそれには文句は付けてこない。


「すみません」


「はい、何でしょう」


「登録をしたいのですが」


「冒険者の新規登録ですね? では、こちらの板に必要事項を書いて下さい。文字が書けないようでしたら、口で言ってもらえれば、私が代筆しますよ」


 こちらの世界の会話はすでに解読しているが、文字はまだだからな。


「代筆でお願いします」


「はい。では、お名前は?」


「シン=クラド准尉、あっと、シンです。シンだけで」


「分かりました。別に貴族の方でも、登録はできますけど?」


「いえ、貴族では無いです」


「はいはい、お忍びですね。いいですよー」


 なぜ貴族だと決めつけるのかがよく分からないが、まあいい。


「出身地はどこですか」


「ファ……ファラド村です」


 別銀河の惑星ファジスなんてこの世界の人が知るはずもないので、ファラド村の名前を使わせてもらうことにする。

 村長さんも黙っていてくれるだろう。


「あー、ファラド村ですかぁ。あそこ、強い人が多いんですよねえ。魔物も手強いと聞いてます」


「そうですね。やたら凄いのがいました」


「職種は何ですか? これからやろうと思う職でもいいですよ」


「あー、じゃあ、狩人で」


「狩人さんですか? 見たところ、弓も持っておられませんけど」


「あ……そこは素手で!」


「素手っ!?」


「おいおい、兄ちゃん、お前、オレ達を舐めてんのか? 武器無しでどうやって戦うってんだ」


 近くにいた冒険者が文句を言ってきた。


「そこは格闘で」


 構えてみせる。


「格闘ってなぁ」


「いや、東の国じゃ、素手の格闘術があると聞いたぞ?」


 別の冒険者が言うが。


「ハッ、そんなもん、剣士にかなうもんかよ。剣が最強だ! どれ、お前が冒険者でやっていけるかどうか、オレが実力を見てやろう。どっからでもかかってきやがれ!」


 血の気が多いなあ。


「いえ、遠慮します」


「ふん、ビビりやがって。お前、そんなんじゃすぐ死ぬぞ」


 それ以上はつっかかってこないのでこの人も親切心で忠告してくれているようだが、ま、俺達にはコンバットスーツがあるから問題無い。


「まあまあ、最初は採取や運搬から初めていくものですから。何もいきなり討伐やダンジョンって言ってるわけでも無いですし」


 受付のお姉さんが間に入ってなだめてくれた。

 続けてアリアとネリーも登録を済ませた。

 ネリーは十四歳だそうだが、俺達とパーティーを組むならと言う条件で登録を認められた。


 アリアは他の冒険者にからかわれたり絡まれるのが嫌だったか、「私は後で剣を買うつもりです」などと言っていた。


「そこは銃だろ」


「変な事言わないで。ここの人たちが理解できるわけないじゃない」


「はい、それじゃあ、三人とも、この水晶玉に手を乗せて下さい」


「これは何ですか?」


「んー、何でしょう? 乗せるだけで良いですよ」


 ニコニコ笑う受付のお姉さんは、何やらごまかしている様子だが、まあ、これをやらないと登録できないのだろうし、仕方なく手を乗せる。


「んー? あれれ? 反応しませんね。まあいいか。はい、シンさんは問題なしです。次、アリアさん、どうぞ」


 アリアも反応無し。

 一方、ネリーは水晶玉が青色に変わった。


「ああ、綺麗なライトロウですねー。そのまま無垢な純真でいて下さいね、ネリーさん」


「は、はあ」


「その水晶玉はな、カルマを見るためのもんなんだよ。犯罪ばっかりやってると黒く光って登録も拒否されるんだ」


 先ほどの剣士が教えてくれた。

 制度としては理解できるのだが、では、どうやってその『カルマ』とやらを判断するのだろうか?

 ちょっと不思議だ。


「AI、仕組みが分かるか?」


「データ不足です。未知のエネルギーが観測されましたが、それ以上のことは不明です」


「ふうむ」


「じゃ、皆さんはFランクからのスタートなので、装備を調えたらそこの掲示板のFかEの依頼票の仕事を探して下さいね。Dより上はまだ受けられませんよ」


 ランク制度か。


「じゃあ、ちょっと見てみようか」


「待って、シン。それより、装備を調えないと。あと、魔石をお金に換えられるはずよ」


「そうだった。あの、これ、お金に換えられますよね?」


 俺はリュックから『森の主』の魔石を取り出した。紫色のガラス玉だ。


「そっ、それはっ」

「お、おいおい……」

「なんだ、あの大きさは」


 その場の冒険者達がざわめいた。


「ええと、お金……」


「あ、は、はいはい、ええ、ギルドでは魔石を買い取りますよ。でも、これは何の魔石ですか? 私も初めて見ました」


「森の主、イノシシです」


「お前、ヌシを倒したってのか!」


 中年男のギルド職員が血相を変える。


「え? ええ、そうですが……」


「な、なんて奴だ。ファラド村のヌシと言やあ、この間もBランクパーティーが全滅させられたばっかりだってのに」


「おい、本当だろうな、その話? フカしてねえか?」


「フカ?」


「いや、その魔石が動かぬ証拠か。どう見たってそいつは大物の石だ。ちょっと待て、ギルドマスターを呼んでくる。リリアン、そいつらを足止めしとけ。逃がすなよ!」


「は、はい」


「ねえ、シン、まずくない?」


 アリアが懸念した様子で小声でささやく。


「ああ。何か、通常とは違うことになってる感じはするなぁ……」


 確実な安全を考えるなら、今のうちに立ち去った方がいいのかもしれないが……。


「おっと、逃がさねえぞ? リリアン、オレに任せときな」


 剣を抜いた剣士が身構えた。


「あの! ここで刃傷(にんじょう)沙汰(ざた)はやめてくださいね? 大丈夫です、ちょっと上の者を呼んでくるだけで、お金は間違いなく支払われますから、逃げないでください」


 この感じなら大丈夫だろう。


「お前らか、ファラドの森の主を倒したって言うのは」


 低い声が響き渡り、バイキング兜を被った男が階段を降りてきた。

背は妙に低いが筋肉が隆々として、たくましい体つきだ。

 片目は昔の怪我で失明したようで、何かの爪にやられたのか、大きな三本の傷跡が顔斜めに走っている。

次話は明日19時投稿予定です。

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