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隊長、魔法が使えるのにワープ装置が作れません!  作者: まさな
第一章 軍人のなすべきこと
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第十四話 猫耳ネリー

 盗賊に襲われている馬車を助けたまでは良かったが、それは奴隷商人の馬車だった。

 銀河同盟では奴隷を禁止しているため、アリアも見逃せず解放を頼んだが……。


「ご冗談を。これは私が苦労して南方で買い付けてきた獣人達です。大事な商品ですぞ? まあ、お金を払って下さるなら、考えなくもないですが」


「ううん、今すぐは払えませんけど、これからお金が入る予定なので……」


 アリアが心苦しそうに言う。まだ俺達は一文無しだもんな。 


「でしたら、私はしばらくカンデラにいる予定ですので、そのお金が入りましたらトマスの店をお探し下さい。あなた方は盗賊から助けていただいた恩人ですから、格安でお譲りしましょう」


「このお金で、と言うのは足りませんか」


 そういえば、と思って俺はさっきこの男からもらった袋を差し出してみる。


「申し訳ないですが、こちらも商売でして、元手もかかっております。ですが、まあいいでしょう。一人だけなら、それでお譲りしましょう。ネリー、左腕を出せ」


「は、はい」


「あなたも、お願いできますかな?」


「ん? こうですか」


「ちょっと痛みますぞ」


 男が針を取り出したので、俺は手を引っ込める。


「奴隷の所有権の書き換えです。そこは我慢していただかないと」


「ええ? それは何かのまじないですか? それとも……」


「大丈夫、血を一滴垂らせば終わりますよ」


「エー?」


 それにどんな意味があるんだと。


「シン=クラド准尉、そこは男を見せなさい」


「アリア=ハーランド准尉、君が女を見せてくれたっていいんだが?」


「じゃあ、じゃんけんにしましょうか」


「そうだな。じゃんけん、ぽん!」


 負けた。とほほ。


「よしっ!」


 小さく拳を握りしめたアリアは細かいところでも負けず嫌いのようだ。


「では、お手を拝借」


 スーツの手の部分を解除し、むき出しにして、大人しく針を刺される。

 チクッとした。

 その垂らした血をネリーの左腕にある紋様に吸い込まれると、青く光った。

 回復魔法と似ているが、どういう仕組みだ?


「では、これでネリーはあなたの物です。ネリー、新しいご主人様にご挨拶しろ」


「は、はい、よろしくお願いします、ご主人様」


「ああ、俺の名はシンでいいからね」


「はい、シン様」


「では、お先に失礼しますぞ」


 奴隷商人が馬車を出発させた。


「じゃ、ネリー、まずはこれは外しておきましょ」


 アリアがネリーの首輪を外して取ってやった。


「それと、服も買ってあげないとね」


「じゃ、街へ行くか」


「ええ」


 人見知りなのか、緊張した様子で俺とアリアの顔色を窺い、とてとてと付いてくるネリー。

 小柄で、お尻には可愛らしい尻尾がくねくねと……尻尾!?


「ネリー、その尻尾、ちょっと見せてくれないか」


「ひゃっ、だ、ダメです、シン様、はふう、こ、こんなところで、触らないで下さいぃ」


 おお、やっぱりちゃんと動いてる。自立型の動力装置付きだろうか?


「ちょっと! シン! 何をイヤらしいことをしてるの!」


「ええ? いや違うぞ、アリア。俺はただこの尻尾を――」


「ええ? これ、動いてるの」


 アリアも触る。


「はう、アリア様、そんなに触られたら、ネリーは、うう、もうらめれすぅ」


「あっ、ごめんね? 痛かったりするの?」


「いえ、とても気持ちは良いのですが、その、恥ずかしいと言いますか……」


「むむ、分かったわ、お尻に直接触るようなものかしらね。尻尾だし。シン、触ったら軍規違反だから、気をつけて」


 指さされた。


「分かったよ。でも体から生えてるということなら……ネリー、悪いがちょっと血を見せてくれないか?」


 遺伝子解析をしようと思って俺がナイフを取り出すと、ネリーが怯えて真っ青な顔になってしまった。


「大丈夫よ、ネリー、さっきみたいに、血を一滴、もらうだけだから」


 アリアが説明する。


「はあ、私、痛いのや、刃物はちょっと苦手で……」


「じゃあ、目を閉じてて。大丈夫、すぐ終わるわ」


 ぎゅっと目を閉じたネリーの指をナイフの先端でちょっとつつき、血玉を作らせる。

 そこに簡易測定器で遺伝子解析だ。


「解析完了。99%は人間と同じですが、一部、独自の進化が見られます」


 AIが報告する。


「つまり、猫とのハイブリッドじゃなくて、私達から枝分かれした種ということね」


「そう考えられます。人間との生殖も可能です」


 途端にアリアが俺をキッと鋭い目つきでにらむが、その信用の無さはなんなのか。いくらなんでも酷いと思います……。


「安心してくれ、おかしな事はしないから」


「頼むわよ」


「分かってますって」


 気を取り直して歩くと、すぐに石垣が見えてきた。ぐるりと街を石垣が囲っているようで、その中央には門がある。


「見て! きっとあれがカンデラの街よ」


「ああ。ふう、ようやく着いたな」


「あっ、先に服を着ておきましょう」


「そうだな」


 コンバットスーツでは目立ってしまうので、その上から布服を着る。

 スーツは薄く断熱性もあるので、厚着しても特に問題は無い。


「ああっ! これでようやくシャワーが浴びられる!」


 アリアが凄く期待したように言ったが、ここ、シャワーなんて無いと思うんだが……。


「とにかく、行ってみるか」


 門には鉄の鎧を身につけた兵士が一人、歩哨をやっていた。

 俺とアリアは目配せで頷き合い、やや緊張しながら門に向かう。


「そこの三人、止まれ」


「……何でしょうか?」


「見ない顔だな。カンデラは初めてか?」


「ええ、そうです」


「なら、身分証と通行料を出してもらおう」


「ええ?」


 困ったぞ……。


 アリアがレーザーライフルを手に取るが、それはよろしくない。

 俺は首を横に振って止めさせた。


「あの! 私達、トマス様とはぐれたんです」


 ネリーが言う。


「んん? ああ、あの奴隷商人か。じゃ、入って良いぞ。次からはぐれないようにしろ」


「どうも」


 助かった。


 街に入り、門番の兵士が見えなくなるところまで歩いて、立ち止まる。


「ネリー! ありがとう。さっきは助かったわ」

「ありがとな」


「いえ、ご主人様達がお困りのようでしたから」


 機転の利く子だ。見た目よりと言ったら悪いが、賢いな。


「だが、早めにここの身分証を作っておいた方がいいな」


 俺は言う。


「どうやって作るのよ」


「そりゃあ、偽造なり、買うなり……」


「ええ?」


 アリアはその方法が気に入らなかったようで顔をしかめる。


「あの、それでしたら、冒険者ギルドが良いと思います。流れ者でも身分証を作れますよ」


「おお! それだ!」

「そうね!」


 さっそく、俺達は冒険者ギルドを訪ねることにした。

次話は明日19時投稿予定です。

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