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隊長、魔法が使えるのにワープ装置が作れません!  作者: まさな
第一章 軍人のなすべきこと
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第十三話 正当防衛

 ファラド村を出発してから三日目。

 アリアと二人だけで行軍しているが、目的地はまだ見えない。


「ブライさんの話では、そろそろ、カンデラ街が見えてくるはずなんだけど……」


 アリアが片眼スコープのズーム倍率をいじって、周囲を捜索している。


「村から三日の道のりだろ? 今日の夕方くらいじゃないのか」


「それならいいけど、途中で道を間違えていたら、面倒なことになるわ」


「夜になって見つからなかったら、あの迷った地点に戻れば良いさ」


 街道に沿って歩いているが、草が無い道と言うだけでそれほどはっきりしていないため、途中、分かれ道のように見える場所があった。AIも使ってこちらの方が確率が高いと進んできたが、確率だから間違うことだってある。

 それは仕方の無いことで、迷うのを恐れていてはどこにも進めない。


「待って! 向こうに馬車が見えるわ」


「おお、じゃあ、その馬車に追いついて、道を聞いてみたらいいんじゃないか?」


「そうだけど、何か様子がおかしいわ。六人くらいに囲まれていて、何かあったみたい。道の真ん中で停止してる」


「パンク……車輪に問題でもあったのかな」


「分からないけど、行ってみましょう」


「ああ」


 荷物を抱えて、戦闘用全身補助(コンバット)動力装置(スーツ)の補助無しで走るのは結構キツいが、道を教えてもらえるなら大した労力でもない。

 そう思って俺達は先を急いだが、近づくにつれ、状況がもっとややこしい物であると気づいてしまった。


「あれは、脅されてるみたいね」


「盗賊だろうな……まったく、なんて世界だ」


 これがファジスなら、各所に配置された防犯カメラとAIがすぐに犯罪の芽を察知して、民間警備会社の警備員を派遣し、犯罪を未然に防ぐというのに。


「馬車の人たちを助けてあげましょう」


 そう言ってアリアがレーザーライフルの安全装置を外したので、俺は焦った。


「ま、待て待て、俺達はここの警察組織じゃないんだぞ?」


 ただでさえ俺達は宇宙保護条約に抵触している状況だ。

 不時着と宇宙船の捜索という理由があるから、今の行動も許されていると思うが、積極的に現地人と関わったり、現地の治安組織や法律を無視するような行動は、さらなる厄介事を招き、任務の支障にもなりかねない。


「じゃあ、あなたは犯罪を見過ごせって言うの?」


「そうは言ってないが……んん?」


 馬車から一人の少女がナイフを持って飛び出してきたのが目に入った。

 威勢良く自分からというわけではなく、突き飛ばされてよろけながらといった感じだ。

 周りを囲んでいる盗賊達がそれを見て笑い飛ばしたが、細腕の彼女には戦闘など難しいだろう。いや、明らかに無謀だ。

 なにせ、彼女はブルブルと震えている。


「あれで戦えるのかしら? でも、戦う意思があるなら、少し様子を見ましょうか。盗賊が襲いかかった後なら、正当防衛も成り立つでしょうし」


「いや、それで怪我をされても困る」


「あ、ちょっと、シン!」


 俺は荷物を置くとすぐに駆け出し、レーザーライフルの安全装置を外した。

 だが、人間相手でレーザーはまずいと思い直し、ライフルをその場に捨て、素手で行く。


「戦闘モード!」


 コンバットスーツが音声認識で俺の指示を認識し、人工筋肉の補助が始まった。

 一気に走るスピードが加速する。


「まずは、一人!」


「ぐえっ!」


 バイキング兜を後ろから思い切り殴りつけて昏倒させた。


「な、なんだてめえは!」


 突然の乱入に、他の盗賊達が驚いた。任務中に周囲の警戒を怠るとは。


「通りすがりの旅人だ!」


「はっ、この人数を相手にしようってか、馬鹿め」


「馬鹿はそっちだ! よってたかって女の子を襲うなんて、恥ずかしいとは思わないのか!」


「青臭いことを抜かすんじゃねえ! 野郎共、やっちまえ!」


「「「 応! 」」」


 一斉に剣や斧を振り下ろしてくるが、片眼スコープの軌道予測を使うまでも無い。

 俺は絶えず位置を変え、素早く相手の死角に回り込み、正拳突きを叩き込む。


「な、なんだコイツ、速え! ぐはっ!」


「鎧を着た奴を素手でだと!? あひぃっ!」


 六人全員を沈黙させるのに要した時間、およそ五秒。


「やるわね!」


 アリアが拍手で褒めてくれたが、手伝ってくれても良かったんじゃないですかね。まあ、この相手なら俺一人で充分だったが。


「でも、妙だな……」


 俺は倒れた盗賊達を見てつぶやく。


「何が?」


「いや、ファラド村の人たちは鉈をぶんぶん振り回してイノシシを解体してただろ?」


 あれは、とても人間とは思えない動きと筋力だった。ブライも主に襲われたときは木の上に瞬間移動していたし。


「ああ……」


「だから、ここの現地人はみんな強いのかと思ってたんだが、そうでも無かったみたいだな」


「そうねえ。あっ、それより、あなた、大丈夫?」


 アリアが馬車の側でへたり込んで座っている女の子を助け起こした。


「は、はいっ、大丈夫です。ありがとうございますっ」


 俺と同じ黒髪のその少女は、頭に猫耳を付けている。

 ファジスでもコスプレイベントの集会でそんなことをする人たちがいたが、世間的には異端者扱いだ。


「顔が汚れてるわ。これで拭いて」


「い、いえ、こんな綺麗な布は使えませんっ、お嬢様」


「お嬢様って……いいから拭きなさい」


「あう」


 アリアがやや強引に拭いてしまったが、身を縮めている少女も嫌がったわけではなく、大人しく拭かれていた。


「はい、綺麗になったわ」


「ありがとうございます……」


「おいっ、ネリー、生きているのか」


 馬車の中から男の声が聞こえてきた。


「は、はいっ、ご主人様!」


 ビクッとしたネリーが答えたが、男の使用人をやっているらしい。


「盗賊はどうし……おお、これは助かった」


 頭にターバンを巻いた商人風の男が馬車から降りてきたが、なんだか灰汁(あく)の強そうな顔つきだ。


「これはこれは危ないところを助けていただいて、本当にありがとうございました、旅の御方」


「いえ」


「これはお礼と言ってはなんですが、どうぞ、お納め下さい」


 布袋を商人が渡してきたが、硬貨が入っているようだ。


「いえ、要りませんから」


「まあまあ、そう言わずに。金は多くても困ることはありませんぞ?」


 強引に押しつけられてしまった。俺は生活に必要な分だけあれば、もうそれでいいけどね。


「あの、私達はカンデラの街へ行きたいのですが、街の場所はこの方向で合っているでしょうか?」


 アリアが聞いた。


「ああ、それでしたら、間違いないですよ。私もそちらへ向かう途中です。そういうことでしたら、旅は道連れ世は情け、馬車にお乗り下さい。一緒に参りましょう」


「じゃあ、そうさせてもらいましょうか」


「そうだな。荷物を取ってくる」


「ネリー! 何をしている。その方達の荷物をさっさと運ばないか!」


「は、はいっ、すみません!」


 何も怒鳴らなくたって良いと思うのだが。


「いえ、私達で運びますから」


「そうですか、大事な荷物でしたら、失礼致しました」


 荷物を持って馬車に乗り込んで気づいたが、他にも三人、女性が乗っていた。

 ただ……その全員が首輪を付けているのが気になる。

 着ている物も、ボロ布の服で、ご主人様の服と比べると段違いだ。


「身分制ということかしら」


 アリアが小声で無線通信してくる。


「だろうな」


「奴隷共と一緒の馬車で申し訳ありませんね。私は奴隷商人でして」


「ああ……」


「降りましょう。止めてもらえますか」


 アリアは容認できない様子で、そう言った。


「や、これは失礼しました。やはり、貴族の御方で?」


「いいえ、でも、やっぱり歩きで行きたくなったものですから」


「分かりました。では、ご自由にどうぞ」


「それと……この人たちを解放してもらう訳にはいかないのかしら?」


 アリアが頼んだが。

本日二話目です。次は明日19時投稿予定です。

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