決戦(9)
ジョルノを森の奥に招き入れたソフィアはジョルノの20歩の距離に立つ。
ソフィアはすでに魔法を発動させ、リカルド、ソフィア、ダリルの3人分の水袋分の水球を宙に漂わせていた。
即席の矢の種は残り少ない。
背中の矢筒にある特別製は濃茶、薄茶、紫に赤の4本。
右手には先程作った矢が4本作られている。
ジョルノが口を開く
「他はどうした?後方に隠れているのはダリルだろう?もう一人のエルフはいつの間にか居なくなっていた、さすがエルフと言うべきか……」
ソフィアはすでに即席の矢を4本作って握っていた。
「安心して、今ここで、あなたと戦うのは私だけ。エルフの約束よ……ダリルはあなたがきちんと着いてくるために付いて来させただけ……その前に最後通告よ、戦うか、降参するか、答えて」
「無論、戦うさ、もう二度とグリッチャーを失うわけにはいかないのでね」
「言っとくけど、私は全力を出すよ、一人で戦うのは全力を出すと、巻き込まれてしまうからよ」
「私も一対一で本気を出すのは久しぶりだ」
「そう……」
一瞬の沈黙の後に先手を取ったのはソフィアだった。
心臓を狙って放たれた一本の矢をジョルノは難なく避け、距離を一気に詰める。
次の矢を左手のナイフで弾き、勢いを増して駆ける。
ソフィアが矢を二本同時構えたときにジョルノの足が取られた。
エルフとドライアドのハーフであるソフィアは直接触れた植物を操る事が出来る、その条件はすでに達成していた。その精度と成長速度は触れた時間に比例するが、生命力溢れる森の中でなら一瞬で良い。
ジョルノは視覚の外、地中からはい出て足に絡まる植物の根を、身体感覚と剣捌きによって視認することなく右手の剣で切り取るが、一瞬足が止まる。
そこに同時に放たれた二本の矢を一本は避け、一本はナイフで弾いた。
ソフィアの狙いはこれで終わりでは無い。
その直後に足を狙って放った特別製の矢、濃茶の矢だった。
二本の矢によって死に体となり、命中するはずの濃茶の矢をジョルノは脳が認識するより速く体がそれを避け、足元に刺さった。
濃茶の矢から距離を取って油断なく剣を構えた。
「矢を放つのが先ほどより速いな、手加減してたのか?」
「矢の準備があって、目的がサポートで無いならこの程度の連射はリカルドだって出来るわ……」
ソフィアはそう言いながら2本目の矢の製作に取り掛かっていた。
ジョルノが無言で返し、腰を落とし地面を蹴って一気に距離を詰める。
地面から湧き出る植物の根を次々と切り裂き、眉間と足に向かって真っ直ぐに飛ぶ二本の矢を避ける。
ソフィアまで数歩の距離に迫ったときに水球が薄い板状に変化し、ジョルノに向かう、さながらそれは壁だった。
壁は表面が波打ち視界を歪ませる。
ジョルノは剣を寝かせて叩き、水を吹き飛ばして視界を確保したが、そこからはやはり特別製、薄茶の矢が眼前に迫った。
ナイフで受け流し、近くの木に突き刺さる。
「視界を遮るなら、次に来る攻撃を予想する事は容易い……」
剣の間合いに捉えたジョルノはそう言って、紫の矢を握るソフィアの右腕を斬り飛ばした。血飛沫が宙を舞う——
しかし、ソフィアの左手には赤の矢が握られていた。
命を賭した痛恨の一撃、それはジョルノの鎧の隙間、脇腹を捉えた。
しかし、ジョルノは人知を超えた反応速度でそれを避けたのだ。
大きく退いたジョルノは無表情に危機を乗り越えていた。
かなり有力な手だったが、ジョルノにとって捨て身の一撃など何度も乗り越えたよくある手の一つだった。
ソフィアは失った右腕を抑えながら大きく退いて距離を取った。
「惜しかったな……」
ジョルノの目は泳ぎ、殺すかグリッチャーのオモチャにするか迷っている様子だった。
◇
絞め殺しの木の拘束が解けたソニーは、リカルドに森へ誘い込まれていることを承知で後を追っていた。
リカルドは刀を構えてソニーを待つ。
森ではただでさえ速いエルフの、その俊敏さに特化したリカルドの本気の速度について来れる者はいない。
出会い頭に投げ込まれた投石を刀でいなして火花が散った。
ソニーと会敵する。
リカルドの目は殺意に飲まれた。
一方ソニーに殺意は無く、純粋に楽しんでいた。
ソニーの長かった両腕が少し短く太くなる、あまりに長い腕は木々が邪魔して使えなくなるとの判断だろう。
しかし、それとは対照的に10本の爪を剣のように長く鋭くした。
ソニーの腕の一振りは細い木々は切り倒し、太い足は一足でリカルドに飛びかかる。
しかし、ここは森の中……
リカルドは木々を足場として縦横無尽に飛んで避ける。
ソフィアとの共闘では移動速度が早すぎて相性が良くない技術である。
ソニーが間髪入れずに突進するが、リカルドはそれを難なく避けた。
森の中のエルフは水を得た魚。十二分にその身体能力を発揮できるのだ。
ソニーの両腕が短くなって、攻撃速度が落ちたことを合わされば、川辺の戦いのように
は行かないのだった。
三度目のソニーの突進を避けるのは簡単だった。
避ける際に、一瞬で二太刀浴びせて右の爪5本を切断する。
爪は切った端から生えて来た。
肉で無いのなら痛みは無く、消耗も少ないのだろう。
肉を切らねば、とリカルドは思った。
リカルドは木から木へと飛び交い、三次元の動きでソニーに迫った。
リカルドは速度だけならばジョルノと並ぶ俊敏さを持つ。
リカルドは木々を飛び交う途中に葉が茂る枝を切り折り、それをソニーに投げつけた。
ソニーは視界を妨げる枝を宙空で切り裂き、僅かな隙が生まれる。リカルドはそれを見逃さずソニーに接近する。
当たれば必死の隙のないソニーの連撃を掻い潜り、刹那の一瞬を見逃さず、ソニーの懐に肉薄し、筋肉が緊張しながらも大きく曲げた膝を一気に伸ばして退くと同時に斜めに斬りあげた。
ソニーの胸から血が吹き出し、リカルドの頬からも少し出血した。
退くときに、爪から生じる風が少し触れた、それだけでこの鋭さと威力だ。
鎧を身につけず、そもそも受けて防御する事を考えていないリカルドには過ぎた威力だが、脅威には違いない。
だが、リカルドは確かな手応えを感じていた。
次で殺せると確信したのだ。
腰を深く落とし、跳躍の準備を整えた。
ソニーはここに来て先程思いついたことを実践した。
リカルド達とジョルノの戦いを見て思ったのだ。
腕が増えればジョルノを殺せたのでは無いか?と。
ソニーは両腕を分裂させ、4本に増やした。
腕力は落ちるが、手数は文字通り倍になった。
リカルドはそれでも相打ち覚悟ならば殺せると確信しながらも、死にたく無いと言うエルフとしては考えられない欲が出た。
ソフィアを守るために戦うリカルドに自身の命を捨てることへの迷いは無い。
だが、長年の付き合いあるソフィアへはきちんと別れを告げたいと言う気持ちが出たのだ。
だからこそ、少し前に見た一撃必死の親子喧嘩から思いついた策を使う事にした。
予定には無い策、成功すれば化け物を労せず殺し得るゆえに2人に相談できなかった策。
少なくともどちらかの弱体化を狙える、うまくいけば両方とも殺せる。
リカルドの化け物を殺すという手段と、ソニーの強敵と狩合いたいと言う目的は一致していた。
リカルドは悪魔の策を口にする。
「お前、ジョルノを殺したくないか?」
それは汚い策を嫌うエルフとして誇りをリカルドが捨て去った瞬間でもあった。
ソフィアや誰に蔑まれようと、それを守る盾であれば良い。
ソニーは目の前のエルフを殺したい衝動を抑え、話しを聞く事にした。
それからでも遅く無いのだから。
誤字、脱字が多いかもしれません!
すいません!
読み難いなどありましたら直します、教えて下さい。




