決戦(5)
リカルドとソフィアはグラゾール帝国に戻り、鬼の形相をした軍医に理不尽に怒られながらダリルの病室に面会できた。
ダリルに小瓶を渡し、森での出来事全てを話した。
ベッドに座っていたダリルは顔を上げた、目は潤んでいた。
「そうか……レオナルドは勇敢だっただろう?あいつは真面目なんだ、多分死ぬまで戦ったんだよ」
リカルドは胸が締め付けられた。
「助けられなくて……すまない……」
「あいつは兵士だ、誰かを守れたことを誇りに思ってるさ、ふふ、もしかしたら俺にこう言ってるのかもな、ほら俺は戦ったぞ、次はお前の番だってな」
ダリルの涙が一粒落ちた。
「俺からも、貴方達に教えなきゃいけない事がある」
そしてダリルは、ジョルノやグリッチャーの事、執事殺し、化け物の事全てを話した。
軍事機密に当たる事も話した。それはレオナルドを一度は助けたことの感謝からだった。
レオナルドは死んだのだろう。
あれは普段は軽い男だが、間違い無く優秀な兵士だ、魔力を持つ事を差し引いても充分過ぎるほどに……だからこそ部下を差し置いて自分だけ逃げ帰ることはしない。
認めたくないが……ジョルノさんに殺されたのだろう。
ダリルは全てを話すと、二人に頼み事した。
「エルフは森の中では超人的な五感を持つと聞く、化け物探しを手伝ってくれないか?見つけるだけで良い、後は俺がやる、化け物を捕獲してジョルノさんの目を覚まさせたいんだ」
ソフィアが言った。
「レオナルドさんに命を助けられておいて、なんだけど……私達はまた化け物の捕獲に行くの、依頼はできる限り成功で終わらせたい。あなたが付いて来てくれるならこっちも助かる」
「それは良かった。だが危険だぞ?」
「覚悟の上よ、それに奥の手もあるし…」
リカルドは願いを込めて言った。
「ソフィは残った方が良いと思う……あまりにも危険過ぎる」
「その話はもう済んだはずでしょ!絶対に行く!自分だけ待ってるなんて、そんなの卑怯者のする事じゃない!……そんなことより、あなたの部下は来るの?」
「俺は小隊長だが、門兵だ、流石に門兵を森に連れて行く事は出来ない、部下は連れて行かない」
「そう……そういえば、もう一つ聴きたいのだけど、その小瓶は何?」
ダリルは手に持っている空の小瓶を見て答えた。
「エルフの霊薬の試作品と言っていた、材料が分かったから作っていると……」
「材料がそんなに簡単に手に入るとは思えないのだけど?」
「それは知らない、そもそも材料が何かも知らない、王国から届いたそうだ」
「……そう」
ソフィアは呟き、俯いて考え込んだ、それから一切喋らなかった。
ダリルは7日後に退院する。
両者はその日に森に行き、化け物の「生きたまま捕獲」に協力することを誓った。
ダリルはジョルノの目を覚まさせるため。
エルフ達は化け物を「生きたまま捕獲」して得る金貨と人々の安全のためだ。
少なくともソフィアは本心からそう思っていた。
ダリルと別れ、安い宿の窓でリカルドは夜空を見上げた。
リカルドはダリルの話しを聞いて、姿を変える化け物の有効性に気付いていた。
そして帝国は間違いなく、化け物の力を敵国要人の暗殺に使い、一気に領土を拡大することは容易に予測できた。
そうなれば、いずれ2人の母国である、エルフィン連合国にも戦火が訪れる。
多種族が住み、連合国とは言っても種族間に強い繋がりを持たないエルフィン連合国は、帝国と比べて一体感ある軍事行動は苦手だ。
一度戦争が始まれば、いくら強力な種族が多かろうと、分が悪く苦戦を要するだろう。
森のエルフ達は死を恐れず、勇敢に戦うだろうが、エルフの中で異端であるリカルドは死を恐れる、それは他人であろうと、いや他人の命だからこそ強く思う。
このままでは戦争で多くの故郷の友が死んでしまう。
ソフィアも仲間と共に戦い、死んでしまうかも知れない。
リカルドはベッドで眠るソフィアを優しく見つめた……
その夜初めて明確に覚悟した。
化け物は殺す。それを邪魔する者も全て……
この事はソフィアには言えない。
生きたまま捕獲するとダリルと約束してしまった。
言えば、嘘を嫌うソフィアは協力を破棄するだろう。
今は一人でも味方が欲しい。
ジョルノという男には二人では勝てない。
必然化け物も殺せないだろう。
嘘を嫌うのはリカルドも同じだが、嘘で仲間を、ソフィアを救えるのならば自分のそんなもの容易いものだ。
しかし、ソフィアに嘘をつく事は耐えられそうに無い。
何よりも間違い無くソフィアから嫌悪されるだろう。
リカルドはもう一つ決意した。
ソフィアとの旅はここで終わる。
リカルドの頬を涙が流れ、声を殺して一晩中泣いた。
——
9日が経ち、リカルド、ソフィア、ダリルは朝森に入った。
ソニーはジョルノと相変わらず、奇妙な親子関係を保ち、戦い方を教わっていに
森にはほんの少しだけ前に大きな集団が化け物の捕獲に向かっていた。




