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アイトワラス  作者: 無名サツカ
決戦
20/30

決戦(3)

 ソニーは体が貫かれる前に左腕を払った。

 4本の剣が左腕に刺さり、4人の兵士頭部を叩き潰した。


 ソニーの左腕は痛みを訴えたが、度重なる戦闘経験により、痛みを耐えるすべを身につけた。

 動かすとは言えないまでも、気にせずに戦うことは可能だった。


 それよりも耐え難いのは、治すときだ。傷を治すときの痛み、あの痛みは何度経験しても慣れない。

 いっそのこと腕は治さなくても良いと思えるほどの激痛だが、そうするとジョルノがうるさいのだ、一睡もせずに声をかけて来る、痛いか?熱は無いか?治せないのか?いつもは治せているだろう?早く治せ!など、治すまで止まらん。


 左腕は使えないが、治すのには苦痛と時間がかかる、右腕一本で残る3人を倒さなければならない。


 ソニーは優先順位を決めていた、あのレオナルドと言うやつから殺さねばならない。ジョルノから聞いた事がある、土の魔法だ、初めて見たが、間違いない。


 しかし、ソニーは攻めるに攻めれないでいた。

 兵士は一定の距離を置いて剣を構えて取り囲んでいる。岩のような硬度を持つ土塊を盾にレオナルドが後方に立ち、飛びかかるには時間がかかるが、そうすると、先程のように背中から攻撃されるだろう。


 まずは兵士から狩ると決めて動き出そうとした時、ソニーの背中を土塊が突き飛ばした、前のめりになって兵士2人の間を通るとき、左腹と右腕を切りつけられる。


 傷は深くない、相対する形となったソニーはやはり攻めれなかった。


 おそらくこの兵士達は勇敢で優秀だ。死を恐れずに攻撃してくる。地を這う蟻と同じ。自分の命を捨ててでも襲ってくる。そういう風に訓練されている。


 簡単には近づけない。

 ならばこれしかない、最近は使って来なかった得意技を使う、数々の強敵を打ちのめしたアレだ。


 ソニーはゆっくりと下がりながら石を拾った。


 ソニーは力一杯に投げる、

 何度も投げるが、効果は薄いと言わざるを得なかった。

 何せ腕が長く変化させなかったために威力を出せない。

 その上相手は鎧を着ている。

 投石は鎧に当たり金属の乾いた音を鳴らす。痛く無いはずは無いと思うが、……なるほど、痛みを耐える技は兵士なら持って当然なのか……


 もっと威力を高めねばならないが、腕を伸ばす隙は与えてはくれないだろう。


 ならばこういうのはどうだろうか、ソニーは自分の左腕に刺さった4本の剣の1本を引き抜き、力一杯振り回した。


 剣術なんてものじゃないそれは鬼人を思わせる程の剛力だった。

 判断を誤り、剣を受け止めようとした兵士の体が吹き飛ばされ、ソニーの剣は砕けた。


 もう一本剣を引き抜いて振り回し、兵士へ剣を振り下ろすと土塊が飛んで来てその初動を止め、一瞬の隙が出来た。

 ソニーの腹へと兵士の持つ剣が突き刺さる。ソニーは剣を捨て、素手で兵士の頭部を叩き潰した。


 左腕は全く使えない。体幹も反応が鈍い、右腕は痛むが問題無い、両足は無傷。


 あとはレオナルドただ1人。


「この、化け物がっ…!」

 レオナルドが呟き、土塊が浮遊したまま回転を始めた。


 ソニーは構わずに突撃するも、高速回転する土塊から小さな塊が無数に飛んでソニーを襲う。だがそれではソニーは止まらない。

 小さな傷には慣れている。それに幾多の戦闘経験から今は好機だと判断した。

 相手の好きにさせてはならない、好きにさせては何をするか分からない。させないぞ。


 しかし、今回は裏目に出た。

 いやどのみち防げなかったかも知れない。

 これは防げない。

 ソニーが踏み込んだ地面が落ち、3メートルほどの縦穴に落ちたのだ。


 土の魔法は土を操る魔法。

 攻守共にバランスが良く重宝される、しかし真骨頂はここにある、足場の破壊ができる。


 レオナルドはソニーが落ちた穴を土塊で蓋をし、岩ほどの硬度を持つ土の牢獄に閉じ込め最後に空気穴を作り、見事にソニーを捕獲した。

 後は魔力の回復を待ち、再度魔法を行使して少しずつ牢獄を狭め、指一つ動けないようにした後に運べば良い。


 レオナルドは仲間全員の死を確認した後、目を閉じて祈った。

「すまない。最初に発見出来れば1人も死なずに捕獲出来たはずなのに」


 レオナルドが目を開けた時、首から冷感がし、背後から何者かに剣が当てられていることに気づいた。

 驚愕した、ただただ驚愕した。

 全く気がつかなかったのだ。

 数秒だけ目を閉じてはいたが油断はしていない。

 ここは森だ、獣も魔獣もいる、音や気配には常に注意していたつもりだ、それなのに目を開けるまで一切気づかなかった。


「グリッチャーを出せ」


 レオナルドは先程と同じほど驚愕した。この声はダリルの病室で聞いた事がある、憧れの存在だ、忘れるはずが無い。ジョルノさんだ、そのジョルノさんが、グリッチャーいや、あの化け物を出せと言っているのだ。


「…ジョルノさん…ですよね…?なぜこんな事を…?」

「早く息子を解放しろ」

「…息子ですって……?ジョルノさん?…あれは化け物ですよ…?」

 しばしの沈黙の後にジョルノが言った。

「…黙れ、早くしろ」

 静かな声はゾッとするほど冷酷な匂いがした。

 レオナルドの首からは血が滲む。

 レオナルドも兵士だ、帝国のために命を捧げている。命惜しさに化け物を解放すると死んで言った部下に申し訳が立たない。

 レオナルドは死を覚悟して目を閉じた。


 ——刹那


 一本の矢がジョルノの頭部めがけて飛び、ジョルノがそれを避けた事でレオナルドは解放された。


 刀と弓を持つエルフ、リカルドとソフィアの2人が森の闇から現れた。


 レオナルドは2人のエルフの接近にまたしても気づかなかった。


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