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せいばあ!  作者: ギョーム・カピエート
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ふぁいてぃんぐ!

「腕を突かれたんだよね」


え、今さっき軽く手を伸ばしただけなのに!?


「突こうと思って腕を伸ばすとひじが上がってくるよね?そこに剣を出しただけ」



……そうか……自分が突くことばかり考えててそんなとこを狙われるなんて考えもしなかった、

ルールは単純みたいだけどそういうとこ慎重にならないと勝てないんだろうなぁ…


「まあ、いまのはちょっと初心者には厳しかったかな? 次はもうちょっとハッテンバックちゃんに

考えて動くくらいの余裕は与えてやりなさい。でも簡単に突かせ手もダメだからね!」


「そう言われてもなかなかむずかしいっす…」


ホントそうだ。だって私まだ構え方しか教えてもらってないし…というか名前覚えられてるよ…このままやめたら

今後気まずくなりそうだ…


「オンガード!……プレ・アレ!」


試合再開だ、といってもさっきはなんかやろうとした途端に突かれて終わったから今度は手も出しにくい…

とりあえず後ろに下がってみるか……そうするとエイノさんも自分が下がった分前に詰めてきた…

どうすりゃいいんだ…?

結局どうすることもできずに下がり続けるしかないじゃん…


「アルト!!」


先生が大きな声で何か言った。


「ハッテンちゃん、下がってばかりじゃ勝てないでしょ、ていうか試合だとエンドラインってものがあって

そこより後ろに下がったら負けになって相手に一点入ることになっちゃうよ?」


「変な略し方しないでくださいよ!」

ってそもそもそんなルールも説明されてないよ、まあたしかに下がってばかりじゃ勝負にならないもんな。

じゃあ結局どうすりゃいいって話だよ?


「はい、またここまで戻ってきて!やりなおすよ…オンガード!……プレ・アレ!」


だからどうしろと?構えから動けない…そういえば最初に聞いた金属音って剣がぶつかった音だったのかな?

なら自分も剣で剣をぶつけてみるか、どうせさっきみたいにすぐやられるだろうけど…

ほかにやることが思いつくはずもなくさっきより控えめに前に出ながら相手の剣を叩きに行った。


チンッチンッ…カキーン…


相手も叩き返してきて甲高い金属音が鳴り響いた。

やっぱりこういうことだったのか!


「お、いいじゃんいいじゃんその調子だよー!」


先生にわけもなく褒められる…それでここからどうしろと?結局何の解決にもなってないような…


「あ、会議あったの忘れてた! んじゃあとは頼む」

そう言うと先生は足早に体育館を出て行ってしまった…気まずい…このあとどうしたら良いんだろう…?

しょうがない、それならもうこれしかないと思った。


私は勢いよく右手を挙げた。


「すいません、私も放課後用事あるんでそろそろ帰っても良いですか?」


そう言ったら、エイノさんはマスクを取り剣を上にあげた。最初にあいさつしたときにやった動きと同じだ。


「ありがとうございました」

私も、同じ言葉を返す。そしてエイノさんは剣を持ってない方の手を差し出してきた。握手しろってことかな?


「右手でしてくださいっす」

つい利き手である左手を出そうとしてしまいコードにぶらさがった剣が揺れて当たりそうになってしまった。


「あ、すいませんつい」


「気にしなくていいっすよ、先生に無理やり連れてこられて大変っすね?」


「ええまあ、でも楽しかったですどうもありがとうございました」


会話しながらエイノさんはさりげなくさっき先生に付けられたコードを外してくれた。後は着替えてさっさと

帰るか…と思ったらちょっと気になることを見つけてしまった。エイノさんが持ってた剣、置いてあるのを見ると

けん銃のような形をしている、どこかで見たような…あ、倉庫にあった鍔の小さい剣と同じだ!


「あの…その剣の持ち手の形って…」


「え?あぁ、これっすか。ぼくのエペの剣は握りやすいようにこういう突起が付いてるっす」


「使う人によって剣の持ち手の形は違うもんなんですか?」


「そっすね、エペは特にいろんなタイプ使う人がいると思うっすよ」


「その人の好みってことですか?」


「そっす、指導者とか環境にもよると思うっすけど」


そうなのか…まあ私にとってはどうでもいいことだけど、よくわからない知識だけを得てその日は

学校を後にしたのだった。


逃げるように帰ってきたら疲れてそのまま寝てしまった…今日の強引な入部について親に説明するのはまあ

明日でも良いか…何やってんだろ?

やりたいことを続けられなくなって新しいことをしようと思っても結局尻込みしてばかりで…こんなんじゃ

まともな大人になれないかも…まあそれは今考えることでもないか、フェンシングってオリンピックの時ちょっと

だけ話題になるやつだったけどあれって種目が分かれてるんだね。体操競技みたいに基本全種目やるってもの

じゃないのかな?陸上競技や水泳は種目によって出る選手が基本分かれてるみたいだけどそんな感じなのかな?

聞いとけばよかった…ってそこまで気にするほどじゃないか、たしかフェンシングには三種目あってフルーレと

今日やったエペと……あと一つは何だったかな?教えてもらってただろうか、まあいいやもう眠い……


そのまま朝まで眠ってしまったみたいだ…親はもう出かけたらしく朝食が置かれている、言うタイミングを完全に

逃してしまった…今日はどうしよう?あんなやり方で入部させられた部活に顔を出すべきだろうか、登校する時部員にあったら気まずいなあ…といっても顔見知りといえるのはエイノって人ぐらいだしちょっと話しただけだけれど…


「あ、どもっす」


あ…やっぱりこうなってしまうのか…


「あ、おはようございます」


挨拶はともかくこの後どうすりゃいいんだ…そうだあのことを聞いてみよう!


「そういえば昨日はエペってのを体験させてもらってありがとうございました、フェンシングって三種目

あるって聞いたんですけどフルーレとエペともう一つは何なんですか?」


「サーブルっす」


「さあぶる…サーベルじゃなくてですか?」


「同じじゃないっすか?多分、サーブルはフェンシングで唯一カットができるフェンシングの中でもけっこう

異質な種目っすね」


「カットって切るってことですか?」


「そうっす、昨日やったエペの剣みたいに剣先のポイントを押すことでランプが点くんじゃなくて剣全体が通電

するんでメタルの部分に触れたら光るんす」


メタルってなんだよ?まあそれはともかくフェンシングにも剣道みたいな切ったりする種目もあることは理解

できたぞ。


「サーブルやってみるっすか?ぼくはエペ人っすけど」


エペ人?ってことはやっぱり体操の個人総合みたく全員で全種目をやってその合計で勝敗を決めるような

競技ではないのか。


「え、どうしようかな?そんないろいろやらしてもらって悪いなあ…」


「そんなの全然気にすることないっすよ、自分のやりたい種目なんて体験してみなきゃわからないっす

百見は一体験にしかずっす!先生に言っとくんで今日はサーブルをやってみると良いっす」


そんなことわざあったか?って結局今日も行くことになってしまった…


余計なことを聞いてしまったせいで今日もあの部に行かなくてはならなくなってしまった…

といってももう5月…そろそろ部活選びも終わりにしないといけないしいまさら事情を説明して白紙にしたところ

で今後自分に合った部活なんて決められる自信もない…流されるのも悪くないのかも?いや、そんなことで

良いのか…?とりあえず言われた通り別の種目の体験するだけだからっ!そう自分に言い聞かせながら授業が

終わるまで耐える…そして重い足取りで昨日行った体育館へ向かった。


「よろしくお願いしまーす!」


「よっ!来たね、サーブルの左の用具一式出しといたから着替えたらそれ持ってこっち着て」


エイノさんがちゃんと言ってくれたのか準備万端のようだ、ここまでされたらますますやめにくくなるなぁ…

そして着替えた後、用具を持ってくるよう言われたので適当に置かれた剣や服一式をまとめて持ち上げ…ようと

したとき


「痛っ…」


なんかこの服ザラザラしてるな、エペの時には着てなかった銀色のジャケット、よく見たらマスクもそんな

感じになってる…これ特別な素材なのかな?お高いのだろうか…


「それね、エペのとちょっと違うから。まず昨日みたいにコード通して白いジャケット着てみて」


そこまでは同じか、そのあとこのザラザラしたジャケットをつけるってことかな?


「着れた?じゃあメタジャケねこれは普通に着れば良いだけだから」

そしてこれか、ホント手触り悪いな…


「そしたらコードの先のクリップをメタルの部分に挟んでね」


コードにクリップ?そんなのついてたっけ…そういえばこれ昨日のコードと片側の先が違うような、どうだった

かな…


「あとエペと違ってマスクにもコード付けるからね」


なんかよくわからんけどエペと違ってメタルの部分が多くたくさんコードを付けるんだな…ハイテクスポーツ

っぽい。そういえばこの手袋もメタルになってる…


「できたかな?じゃあチェックして、ブースターちゃんお願い」


「ほいな、よろしくな後輩ちゃん!」


「ブーちゃんはフルーレ人だけどフットワークが良いからサーブルも兼任しててそこそこやるんだよ」


「せんせぇ~その略し方なんやねんな~やめてや」


いつの間にか私の相手になってくれる人が準備して待っていた。先輩のようだが身長は私より少しだけ低い、

6フィートと1インチくらいの関西弁で明るそうな方のようだ。


「こちらこそよろしくお願いします!」


それからガードを突こうとしたがはじかれて腕を軽く剣で叩かれた、相手側のランプが光る。


「ワイの手ぇもやってや!」


見よう見まねで同じことをしてみる、今度はこっちのランプが点く。これがサーブルのチェックの仕方なのか?


「後サーブルはマスク含めメタルになってる部分しか攻撃してもランプは点かないからね、剣のどこで

触れても点くけどガードの部分で当てちゃだめだよ、反則になるから」


「は、はい」


「それじゃオンガード!」


そういうと相手の関西弁の人は剣を床とほぼ垂直になるぐらい立てていた、昨日のエペの人とはだいぶ構えが

違うようだ。人によって違うものなのか、それとも種目によって違うのか…?

とりあえず私は昨日教わった構えをする。


「……プレ・アレ!」


と同時に相手がすごい勢いで突進して私のマスクを切った!?


「パイヨォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


関西弁の人が叫ぶ!昨日もそうだったが今日も何が何だか分からない…?

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