単位計算から教えないと駄目なのか!
みんな素直に進んで行くんだな。
待たされている間におみくじに並んでいる人々を見ながら思ったことが、これだった。
俺の家は、いわゆる古武術の宗家というやつで、俺もれいにもれず小さい時から鍛錬を積んだ。
長男ということもあり、師範でもある祖父の鍛錬はとても小さい子に対するものではなかったが、素質があったのか着々と身に着いた。
高校に入る頃には師範代になった。
(まあ、実力的には師範でも遜色なかったらしいが、祖父が人生経験の無さを理由に却下したらしい。)
高校は地元を避け、寮に入った。
高校3年間は、俺が強引に祖父から勝ち取った時間だった。
鍛錬は欠かさない事を条件に許可された時は、自室で静かにガッツポーズをしたもんだ。
決して古武術が嫌いになったわけではなかったが、『普通』の学生にもなりたかったからだ。
「まあ、死んでしまったらしょうがないけどな・・・。」
1人にされると色々考えてしまう。
「お待たせいたしました。」
「はい、許可は下りましたか?」
「はい、今回はこちらの手違いということで認可が下りました。」
「ちなみに、創造神の加護はどういったものでしょう?」
受付のお姉さんが呆れたような顔をしたのは気のせいだよな。
「・・・12神の力を借りることが出来ます。但しレベルに応じて変わります。」
「具体的に言うと?」
「創造神の加護を思い浮かべながら『我 求む 大地神の加護』と唱えれば、大地神の加護が得られます。」
「それは凄いですね。レベルに応じて変わるとは?」
「簡単に言えば、レベル1だと1割しか力を借りることが出来ないという事です。」
「他の人のスキルでは、10割のところレベル1だと1割ということですか?」
「そうです。レベルは10までありますので、最大にあげれば他の人の加護と同じになります。」
「先ほどの話では、加護は『スキルではない』とのことでしたが?」
「はい、加護には創造神様は含まれませんので、今回特別に『創造神の加護』というスキルを作成しました。」
ピューイ。
おっと、思わず口笛を吹いてしまった。
これで、『スキルならあと1つ加護が付けれますね。』なんて言ったらどうなるんだろう?
なんてことを考えたが、欲張りすぎると碌な事がないと考え直した。
あれ? でもスキルなら使い方を知らないと駄目だよな。
「スキルという事なら、使い方の記憶は残しておいていただけるという事でよろしいでしょうか?」
「はい、そうですね。ただ余りにも小さいうちに前世の記憶があると生活に支障をきたす恐れがありますので、10歳の誕生日記憶が戻るようにするとのことです。」
うん、高校生の記憶を持ったまま赤子からやり直すのは、キビシイものがあるしね。
「ありがとうございます。」
俺はお礼を言いながら立ち上がった。
受付のお姉さんがホッとした顔をしたが、気付かなかったふりで質問する。
「この後は、あの列に続けばいいですか?」
俺はおみくじの列を示した。
「はい、本日は誠に申し訳ございませんでした。」
うん、本調子を取り戻したね。
俺は笑顔で軽くお辞儀をすると列に並ぶべく足を進めた。
列が進むと先頭でなにやらやっているのが見えた。
どうも、水晶玉っぽいのに手を置くと状態が見えるらしい。
俺の番になった時、係りの人が眉間にしわを寄せた。
「申し訳ございません。加護が1つ足りないようです。」
「ああ、代わりにスキルを付けてもらったんです。前世の記憶付で。」
俺が笑顔で答えると、やっぱりホッとした顔をした係りの人に促されてゲートをくぐった。
俺が生まれた家は、商人の家だった。
そこそこ裕福なようで、俺には乳母が付いている。
・・・。
そう、現在進行形で『乳母が付いている』んだ。
生まれてから丁度10ヶ月たった日、俺は兄にベッドから落とされたらしい。
らしいと言うのは、気が付いたら兄が泣きながら謝っていたからだ。
何で俺はあの時、言語神の加護を得なかったんだろう。
本当 マジ 勘弁・・・。
創造神の加護? もちろん使ったさ。
ただ、赤子の状態では満足に言葉を発することが出来ず、疲れて気を失っただけだったけどな。