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共食い(2)

「もし、僕がこの殺人免許証を使ったら…」


「6人のメンバーに命を狙われ可能性が高いわね。ただ、君は彼らにとっては、始まりを作った、言わば神。メンバーの中には君の復活を喜ぶ奴もいるでしょうね」


「…どんな6人なんですか?」


「殺し方に特徴があって、まず爆弾を使う通称『爆男』。もちろん、女の可能性もあるけど、そう呼ばれているわ。そして、毒を使う通称『マムシ姫』。こちらも男かもしれないけどそう呼ばれている」


なんだか僕より模倣犯のほうが個性が出ていて、少しムッとした。


「次にお風呂でターゲットを溺死や感電死をさせている通称『裸婦』。こいつは多分女だわ」


「どうしてですか?」


「殺された相手は全員男で、風呂場で油断するのは死の清算者が女だから」


「なるほど」


「それか、絶世の美少年か」


優子さんは冗談ぽく笑って話を続ける。


「あとは、警察官が持っているリボルバーを使用している通称『ポリスマン』。ナイフで心臓を一突きで殺している『キューピッド』と、車等の乗り物に細工をして事故死させている『ダイアナ』の6人よ」


「僕と同じように、殺人免許証を交付されているのでしょうか?」


「誰も逮捕されていないから、それを持っている可能性は高いわね」


「そう言えば、このカードのマークに見覚えがあるのですか?」


「忘れるわけがないわ。刑事になってまだ1年目で担当した事件だもの。公園で、ホームレス3人が殺されていたわ。首を切られた者、腹を刺された者、心臓を刺された者。まるで、犯人の殺人の練習台にされたようだった。そして、その現場の地面に、このマークが書かれていたの。でも、誰かがそれを踏んで消してしまったみたいで、激怒していた先輩がいた」


「甲田さんですか?」


「そうよ。甲田さんは私たちが知らない情報を何か持っているはず…」


「どこに行ったのか、心当たりはないのですか?」


「君もわかっているとは思うけど、プライベートな話は一切しない人だったから」


「そうですよね…。その公園の事件の犯人は、ナイフを使う死の清算者『キューピッド』でしょうか?」


「おそらく…。とりあえず、今ある手掛かりは、銃器の販売場所ね。LINEに連絡が届いているでしょう?」


「スマホは持っていますけど、契約が切れていて使えないですよ」


ポケットからスマホを取り出し、確認してみると、回線が繋がっていた。


「おかしいな。釈放された時は使えなかったのに…」


「これもきっとななしの組織の仕業ね。連絡は?」


「あっ、LINEに住所が届いています」


優子さんは、USBメモリを取り、パソコンの電源を切ると立ち上がった。


「行きましょう」


僕も行く気はあったが、嫌とは言わせないような優子さんの視線には少しムッとした。


「今は君が私の相棒よ」


それを察したのか、優子さんは笑顔でそう続けた。


「それとも、千里に夜食を作ってもらう?」


「行きますよ。もちろん」


さすがは刑事、優子さんは脅しのプロだ。


優子さんの部屋から出ると、ちょうどバスタオルを巻いた千里ちゃんがお風呂から出てきた。


「早く行くわよ」


「…はい」


「出かけるの?また、来てね。私、いっぱい食べる男の人好きなの」


千里ちゃんもやっぱりかわいい。好きになってしまいそうだ。でも、ダメだ。千里ちゃんを好きになってはいけないんだ。僕はそう自分に言い聞かせながら、美人姉妹宅を後にした。


再び優子さんが運転する車に乗って、LINEで届いた住所に向かうと、古びれたラブホテルに着いた。一部屋だけ空いていた。


「きっとこの部屋ね。行くわよ」


ラブホテルに来ても動揺しない優子さんはやっぱり素敵だ。

部屋に入ると、ナイフや拳銃はもちろん、マシンガンやショットガン、使い方がわからない爆弾らしき物など、武器がぎっしり飾られており、それぞれに値段が書かれていた。


それぞれの武器に、あの三日月がクロスしたようなマークが入っていた。


「呆れたわ。全部、本物みたいね」


優子さんが、マシンガンを手に取り、僕に銃口向ける。優子さんなら僕を撃つかもしれないし、それで死ねるなら僕は本望だ。でも、それでは優子さんが殺人犯になってしまう。


「行きましょう。これを用意した組織に繋がるような情報はないみたいです」


僕が部屋を出ていこうとすると、優子さんがチッと舌打ちする。


「それに、僕がここで拳銃を買ったら、優子さんに逮捕されるでしょ」


「ええ、そうよ。銃刀法違反で逮捕できたのに」


優子さんに捕まるのも悪くないけど、もう少し優子さんの相棒役を楽しみたい。


「自宅に案内したのも、僕を油断させるため…」


「どうしてわかったの?」


「優子さんのパソコンです」


「私のパソコン?」


「デスクトップ画面が散らかっていたんです。いかにも、普段使っているパソコンのように。車内も部屋もあれだけキレイにしている人が、デスクトップ画面を整理しないわけがない。つまり、万が一USBメモリを差してハッキングなどされても困らないパソコンを使っていたわけです。それを僕に教えなかったのは、完全に相棒と認めていない証拠」


「裏目に出たか…」


「その時、優子さんが僕に気を許している芝居をしているって思ったんですよ」


「まあいいわ、とりあえずここにある銃器だけでも押収できるし」


優子さんは、苦笑いを浮かべながら警察署に電話をかけた。

しかし、押収した銃器は、翌日になると『モデルガン』だったとして、すべて処分されていた。

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