表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/20

超馬鹿話、空中戦艦「白頭山」

1.はじめに

※小難しい事は考えたくないよと言う方には3又は4から読んでください。


反日とは何か

 日本以外の他国で行われる日本を貶める行為を言う。日本国民が行う事は外患誘致の内乱罪、騒乱罪等日本の国益を損なうもので一言で言えば売国奴になる。良識ある日本人なら国益を損なう行為には荷担をしない。


火葬戦記とは何か

 商業作品を例に出すとBOOK OFFやAmazonで安売りをしている保存価値の無い火葬したくなる架空・仮想戦記のことを表す。一方で粗悪品が流通した結果、敷居が下がったとも言える。総じて考証の甘い、表現力の低いミリタリー系の作品を指す。



2.童心にかえってみよう!


 読み物として火葬戦記はナンセンスギャグとして楽しむものだ。中高生等の若年層には中韓を叩く威勢の良い作風が受ける。トンでもと呼ばれる兵器が登場する場合もあるが、作品を盛り上げるための小道具であり目くじらを立てる程の物ではない。

 日本人なら日本が勝つ作品を読みたい。それは自然な感情と言える。そこに反日を入れてみたらどうか? 生粋の日本人が売国奴ではなくネタとして楽しむなら、それは言うなればプラモデルを作って自分で潰す遊び方と同じかもしれない。

 反日をネタとして扱うならば、物語の展開上、日本は負けなくてはいけない。そんなマゾな作品を誰が読みたがるとなるが、あえて読むならお約束がある。そこは馬鹿話という事は当然理解した上での読み物だ。


 作品を書くには資料収集を怠ってはならない。相手の政治形体、軍事力、過去の戦歴から見た戦術行動の可能性など様々な情報がある。

 相手を舐めると言う慢心は危険だ。

 典型的なテンプレ表現がある。

 語尾に「アル」「ニダ」を付ける物で、下品なレベルに自身も落ちている。

 敵を軽んじ負けた先例等幾らでもある。

 アメリカの小説「エンド・オブ・アメリカ」「レッドアーミー侵攻作戦」ではステレオタイプなソ連ではなく対等な人として描いていた。下品に成らず、しかし嫌みを含めて書く事が必要だ。

 例えば朝鮮戦争に於ける韓国軍の奮戦は否定できない事実だ。

 まずは自分が考える程度の事は相手も考える。国を守ると言う意思の前では民族的優劣は関係無い。

 では例題として次に進む。



3.空中戦艦「白頭山」

 甦った旧日本軍が世界征服を開始。これに対して空中戦艦「白頭山」が立ち向かう物語。



 2015年、宇宙から飛来した隕石が日本に落着。隕石についていたバクテリアが飛散した。

 アドミラル56と絶対無敵の超日本神兵軍団が復活し売国奴や不良外国人を一掃し始めた。日本は土葬式ではなく火葬式なのに、なぜゾンビ映画の様な事が起こるのだと当初は騒がれたが、それは些細な事でしかなかった。

 平和であった日常は一夜で一変した。街に響き渡る銃声、怒号、悲鳴、硝煙の香り、死臭。日本国内に潜伏していた売国的マスコミや政治家、市民団体の皮を被ったゲリラ及びコマンド部隊は自動小銃やロケット弾、迫撃砲等を持ち出してテロ活動を行った。だが大陸で一万人斬りを達成した歴戦の超日本神兵にとって敵ではなかった。

「ふはははは、愚かな非国民め。裁きを受けるが良い」

 超日本神兵の軍刀は切れ味抜群、料理の下ごしらえから頭蓋骨までさくさく綺麗に切り飛ばしていく。

 神州を蘇らせたアドミラル56は「日本を食い物にしてきた事に対して謝罪と賠償を要求する」と諸外国に宣言。強力無比な超日本帝国が聖戦を開始、第三次世界大戦が始まった。

 アドミラル56のサイコキネシスによって打ち上げられた霊峰富士山の溶岩は、最強の実体弾として各国の主要都市、基地施設を破壊。超日本神兵を有する超日本帝国軍は瞬く間に北東アジアを席巻した。

 韓半島を治める超大国、大高麗連邦共和国の偉大な指導者、総裁キムは元大韓民国陸軍参謀長で、クーデターにより政権を握った。アジアの劣等人種、底辺国家であった祖国を立て直し北東アジア最強に導いた英雄だ。キムの努力にも関わらず超日本帝国軍は独島を粉砕、地図から抹消すると釜山を橋頭堡に進行開始した。

 わずか三日で首都平壌を失ったキムは北へ兵を下げ、先祖を祭る白頭山で神に祈った。

(南無八幡大菩薩、主イエス・キリストよ。どうか我が祖国を護りたまえ。アーメン)

 その瞬間、雷が落ち山肌が崩れた。

「汝の願いは聞き遂げましたよ」

「え、誰。キリスト様?」

 どこかからの声に反応したキムだが、周りはそれどころではなかった。

「何だあれは」

 崩落した山肌に開いた大穴。そこからドックに鎮座する戦艦の姿が見えた。巨大な三連装主砲が黒光りを放っている。

「これは日帝の戦艦ヤマト?」

 ドックを調べるうちに残された機密書類から判明した事がある。

 第二次世界大戦末期、日本軍が極秘に研究していた空中戦艦「武蔵」である。

「武蔵」はシブヤン海で沈んだ。しかしその船体は潮流に乗って黄海に流れ着いていた。日本が誇る天才平賀中将は、日本医学界の神様とも言える石井中将の開発した人造人間を使い、白頭山に「武蔵」を隠した。「武蔵」は戦争期間中、活躍する事が出来ず敗戦と共に機密は葬り去られた。

「そして私は最後の人造人間、山田太郎28号です」

 これは地球の危機であるとしてキムは太郎に協力を要請した。

 キムの熱意ある説得により山田は協力を約束した。

「武蔵」改め「白頭山」は高麗連邦軍の持つ技術で生まれ変わり、ハイブリッドされたキメラである。

 既存の蒸気エンジンの他に、大気中のエーテルを利用した補助エンジンで浮力を追加する。灯油/リッター200kmの低燃費で、武装は46cm主砲をプラズマ砲に換装、あらゆる艦艇を当たれば撃破可能だ。

「これは試作品だからな爆発には気を付けてくれ」

 艤装委員長から艦長に横滑りしたペク大佐はスタッフを集めて今後の計画を討議した。

「まずは韓半島の解放でしょうか」

 超日本帝国軍の進行速度は早く、一部は中国国境まで迫っていた。祖国解放を優先したい気持ちは痛いほど理解できる。だが大局を指揮官は見失ってはならない。

「いや、フジマウンテンを破壊し砲撃を止めさせるべきだ」

 意見が出尽くした所でペクは艦長として決定を告げる。

「これはレベル上げで雑魚を倒すゲームではない。一気に敵司令部を叩く」

 魔神アドミラル56を倒すべく空中戦艦「白頭山」は出航する。

「蒸気エンジン全開、「白頭山」出航!」

 エンジンの音、ごうごうと轟かせ威風堂々と日本海を横断し魔都東京に向かう「白頭山」であった。

「作戦は簡単だ。アドミラル56は東京湾の人工島、ネオ・東京にいる。艦砲射撃で島を破壊し陸戦隊を降ろす」

 東京湾には戦艦「第2大和丸」を中核とした真連合艦隊が展開している。問題となるのは防空能力だ。「白頭山」陸戦隊は精鋭の空挺や特戦団、海兵隊から集まった猛者だ。降りることさえ出来れば超日本神兵も敵ではないと自負している。

「はたして東京まで行けるのか……」

「いざとなれば、この艦を弾頭に見立てて島に特攻させる」

 途中にあった佐渡島は通報の恐れがあると核攻撃で滅ぼした。高空を飛行する空中戦艦「白頭山」は高射砲の弾さえ当たらず無敵である。

「あれが呪われた都の灯か……」

 新潟、甲信越と上空を通過し魔都東京が見えてきた。炎の柱が五方星を描いている。帝都防衛の結界であるが、空を飛ぶ「白頭山」には関係無い。

 選民思想である魔神山本によって街では、バクテリアで甦った超日本神兵によって虐殺が行われていた。

 炎の前で政治将校が「神に罪を悔いよ!」と説教をしている。

 積み上げられて燃え盛るバイクの傍らに並べられた男達が処刑の順番を待っている。中にはネット右翼と呼ばれた中二病のネット小説作者の姿もあった。

「俺は愛国者だ! 左翼や売国奴じゃない! 尖閣や竹島は日本領だ! 自衛隊は国防軍にすべきだ! 10式戦車は最強だ!」

 その言葉に対して政治将校はオタク気持ち悪い、と冷たい目で告げる。

「お前達の信条はどうあれ、係累に半島や大陸の血が流れている。卑しく民族の純潔を汚す罪だ」

 自分が嫌っている半島や大陸の血が流れている。その事を告げられて狼狽する。

 脳裏を過るアクセス稼ぎに登場兵器や登場人物募集やバトン、展開のアンケート、休止宣言をチラチラした日々。活動報告で中国や韓国を批難した言葉がそっくり自分に返って来た。意識が真っ白に染まり叫び出す。

「と……トンスル? レイプ、独島、ナマポ……嘘だあああああああ」

 発狂する自称愛国者を気にもせず「一億火の玉」「欲しがりません勝つまでは」と叫び銃剣でチーマーやDQNを処刑する超日本神兵。その戦闘力は一騎当千と言われ、戦時中は南京で一千万の敵将兵、武装ゲリラを日本刀と未来人から供与された米国製M16A1自動小銃で殲滅。B-29を三菱製超硬化竹槍でばたばたと撃墜し、恐れをなした米軍は昼間爆撃を禁止した程だ。

 上空の「白頭山」では着々と攻撃準備が進められていた。

「太陽爆弾投下用意!」

 太陽爆弾は高麗連邦軍の決戦兵器で、そもそもは対馬・九州奪取を目的とした対日侵攻作戦の為に用意されていた。ペク大佐は当時、浦項の海兵隊で橋頭堡確保の上陸演習を繰り返していた。

「日帝のくそったれを滅ぼしてやる」

 投下地点の中心に戦艦「第2大和丸」の姿があった。全長20km、航空機1000機と10個師団の兵員、1000セルのミサイルを乗せ最大速力1000ノットで走る人類史上最大の多胴原子力強襲揚陸核弾頭登載不沈航空イージス重装甲打撃高速戦艦だ。

 これほどの化け物艦は大きく目印としては十分だ。

「地獄へ落ちろ」

 民衆を巻き添えにしても勝てば良い。歴史は勝者が作るからだ。

 膨れ上がる光球を前に「白頭山」は安全圏まで離脱すべく上昇を開始した。艦内ではマンセーの声をあげる暇もなく忙しかった。

 投下された太陽爆弾はネオ・東京を吹き飛ばし東京湾を干上がらせた。東京湾沿岸部は地下水が無くなり陥没した。

「おのれ高麗連邦軍。余は再び戻って来る! アイシャルリタアアアアン!」

 魔神アドミラル56の断末魔の叫びが高空を飛行する「白頭山」までしっかりと聞こえた。



 その後、太陽爆弾で開いたオゾンホールを大宇宙から飛来した病原菌が突破。人類を女体化させ、生殖能力を失った人類は死滅した。戦争はむなしく勝者は居なかった。



4.あるチート能力者の転生

 チート能力者が第二次世界大戦中に転生。自分の国を築こうとする。



 キム・ガーランドは高校3年生。少女と見間違えられる程、容姿端麗だが顔に似合わず着痩せするタイプらしく筋骨隆々としている。体育の授業の時に傷だらけのキムの体を見て同級生は驚いていた。

「何だ、その傷は?」

「ああ、親が石油会社に勤めていてアフリカや中東を転居していたんだ。それで物取りに襲われてね……」

 言葉を濁すと勝手に想像してくれる。TVや新聞を見ていれば大抵の者は知っている事だが、ステレオタイプなイメージ通りに貧困と内戦、強盗の存在する地域だ。

「アフリカって病気とか戦争あるんだろ?」と言う友人にオリエンタルスマイルで答えるキム。キムの本性を知ればドン引きする事だろうと予想できた。

 キムは裏の世界で名の知れた凄腕の少年兵で、CIAの下請けでリビアやエジプトの政権転覆に参加した。中国や北朝鮮のスパイを拷問して口を割らせた事もある。女スパイの場合は甘いマスクと半島の売春街で身に付けたテクニックで落とす。

 日本人離れしたキムの容姿は、同級生の少女達にとって魅力的に映り告白される機会も多い。日本の伝統に据え膳食わぬは男の恥とある。美味しく戴いてきた。

 結果的に多くの男子を敵に回し襲撃される事もあったが、大阪湾で撒き餌になってもらった。中には直接キムを襲わずに家族を標的にする者もいたが、今の両親は金で雇ったカバーで血縁関係はない。死んでも変わりが居る。

 それに現在は、母国の韓国軍特殊部隊に高給でスカウトされて少佐待遇。鞄には常にハンドガンと手榴弾、ナイフを忍ばせていた。愛用のハンドガンはデザートイーグル。小学三年生から使って手に馴染んでいる。

 しかし完璧と言う物は存在しない。偶然と言う要素が起こりうるからだ。

 ある日、夕飯に買ったフレンチブルドックの子犬が逃げ出した。キムの殺気を感じた生存本能かもしれない。

「まて、俺の晩飯!」

 道路に出た子犬を捕まえようとしてキムはトラックに引かれた。

「扶桑組」と言う建設会社の文字が見えた。

(街中ではスピードを落とせよ……)

 耳に聞こえるタイヤの軋む音、体に受けた衝撃と痛み。

 目の前に眩しさを感じてキムは顔をしかめる。

 光が収まると目を開けた。

 真っ暗な闇の中に銀髪の幼女とキムだけが居た。辺りを見回しても他に誰もいない。幼女の着ている物は古代ローマ人様な服装だった。

(何だこいつ)

 見た目は可愛い幼女でも騙されない。世の中には自爆テロを行う子供も居る。咄嗟に武器になる物を求めるが、鞄は手元には無い。

(落ち着け俺!)

 ここがどこかはわからない。まずは現状の把握だ。

「ここは?」

 できるだけ自然さを装って話しかけた。

「ここは次元の狭間。そして私は神だ。疑問は色々あるだろうが、結論から言えばお前は死ぬ予定にはなかった」

 神を名乗る幼女に告げられ疑いを抱く事は無かった。自分がトラックに跳ねられた瞬間を覚えていた。試される腹と書かれたキャバレーの宣伝文句が印象的だった。

「それで元に戻れるのか」

「だめポ」

 無い胸を張って答える幼女神にキムは怒りを感じた。

「ふざけるな糞が!」

 押し倒された幼女神。キムは怒りの捌け口として神を犯した。服をむしりとり床に押し倒した。素早く自分のベルトを弛めて粗末な物を取り出す。

「ぷっ」

 笑った幼女神の頬を拳で殴り付けた。口の中を切ったのか血を流している見た目幼女の姿にサディスティックな興奮を覚える。

「ひぎぃ!」


     《お見苦しい点もありますので中略》


「誠意を見せろ、誠意を。お前の謝罪は誠意が無いのか!」


     《お見苦しい点もありますので中略》


「おきろ」

 色々な体液を流してぐったりしている神を起こして要求をする。

「お前が神なら俺に力を与えろ」

 虚ろな瞳をした神は頷きキムの言うままに動いた。体に溢れる力を感じた。

「ふははは。これが神の力か。ハーレムを築いてやる」

 喜び勇んで転生の扉をくぐるキムの背中を神は暗い笑みを浮かべて見送った。


     †


「なんじゃこりゃあああああ!」

 見渡す限りの山。

「あのアマ、どこに送りやがった」

 まずは状況把握するためにも情報収集。人家を探さねばならない。

「こんな時に乗り物があればな……」

 ヘリコプターを想像した。次の瞬間、光が走り何もなかったはずの場所にヘリコプターが現れた。

「うおっ!」

 神の力は健在でUH-60Pが現れた。

「すげえ、本物じゃないか」

 ベタベタさわりながら操縦席に入る。

「わかる、わかるぞ!」

 操縦に必要な知識が自然と脳裡に浮かんできた。これも神の力だ。

 木の葉を舞い上げてヘリコプターは離陸する。

 カタログスペック以上の性能を発揮したヘリコプターは超音速で天を駆ける。

「な、何じゃありゃあ!」

「逃げろ、食われちまうぞ」

 村を見つけて近付くと、ヘリコプターを怪物と捉えたのか村人が怯えて家に閉じこもる姿が見えた。ヘリコプターを着陸させ降り立つキム。

「あんずる事はない。私は神だ。出てきなさい」

 だがなかなか出てこない村人達で、焦れたキムはボロ屋を炎上させた。

「ぎゃああああああ」

 火達磨になって転げ出た住人はのたうち回り動かなくなる。

「見ろ、これが神の力だ! 出てこないと皆殺しにする」

 キムの言葉で村人は恐る恐る出て来る。

「ここはどこだ」

 頭を踏みつけて尋ねるキム。

「へ、へえ。平壌府です」

「へいじょうふ?」

 頭にUPされた智識が湧き出して来る。

「ふむ、なるほど」

 キムが送り込まれたのは第二次世界大戦の朝鮮半島。キムの生きた時代では北朝鮮の首都に当たる場所だ。

(祖国が分断されたのも、俺が在日なのも全て倭寇のせいだ)

 祖国を日帝から解放し自分の王国築くと決意した。

「私に従え。信じる者は王道楽土の平和が約束される」

 キムが両手を広げると、屍が光に包まれた。現れたのは火傷一つ無い姿。

「お、俺、生きてる?」

 死者が甦り五体満足な姿に村人は叫んだ。

「奇跡だ!」

「神の奇跡だ!」

 キムが「K-2あれ」と言えば創造の力で戦車、「KF-16あれ」と言えば戦闘機等を産み出した。

「戦車は無敵戦車のK-2があれば十分だな」

 戦後3.5世代の最新戦車。55口径120㎜滑空砲はこの世界で敵無しだ。

 この時代なら技術レベルが違いすぎており、世界中の科学者を集めても歯が立たない。

 キムには開発に必用な技術者、工具、資源さえ必要ない。

 神の力は無限にあるから、生産コストや維持費を考えずに戦力を用意出来た。

 他にも様々な用意をした。動かす人手はクローン兵士で補う。神の力で生み出したクローン兵士は朝鮮民族の血が流れた純血種で忠誠心も高い。洗脳など必要ではない。

 1941年12月1日、クローン兵士の数は揃った。朝鮮半島解放のオペレーション・ダウンフォールを発動した。

「今こそ邪悪な日帝に裁きの鉄槌を下す時である」

 B737-700早期警戒管制機(AEW&C)の誘導で、KF-16戦闘機とF-15E戦闘爆撃機の編隊が朝鮮半島に展開する朝鮮軍の駐屯地を叩いた。上月良夫中将の第十九師団、永津佐比重中将の第二十師団が標的だ。精密誘導の高々度爆撃によって各連隊は駐屯地の兵舎ごと吹き飛んで行った。

「いったい何事だ!どこの攻撃か分からんのか」

 朝鮮軍司令部は京城府龍山に置かれている。

「電話、無線は通じません。伝令を走らせていますが……」

 鳴り響く爆発音に、司令官板垣征四郎大将は事態の掌握に努めようとしたが、電波妨害により通信は遮断されていた。

 同じ頃、第二十師団司令部も混乱の渦中にあった。

「中共による攻撃だろうか」

 永津中将の言葉に対して参謀長中井増太郎大佐は頭を振って否定する。

「あれは新型機です。蒋介石にそこまでの戦力があるとは考えられません」

 兵器部長の藤田秀八中佐も同意する。

「英米からソ連に渡された装備では無いでしょうか」

 戦死した日本兵の遺体は荼毘に付され、畑の肥料として民に配られた。

 永興湾の永興湾要塞では、M270A1自走ロケット砲が砲撃を浴びせて、K-2戦車を先頭にK-21歩兵戦闘車が突っ込み掃除を行った。制圧された湾内にキムの力で艦隊が現れる。続々と上陸するクローン兵士は生き残りの抵抗を粉砕して行く。


 朝鮮半島を瞬く間に解放された。

「偉大なる神、キム・ガーランド万歳!」朝鮮人民は熱狂的に驚喜した。

 民衆の圧倒的支持でキムは大韓帝国の樹立を宣言。世界各国の主要都市に巨大なキムのホログラフィーが現れた。

「余はここに神の国、大韓帝国の樹立を宣言する。我が神州を侵す者には神罰を下す」

 ドイツ軍の侵攻を受けていたスターリンは、キムの独立を承認。支持を表明した。

 日本軍の対ソ参戦が完全に遠ざかり、ドイツに専念できる。さらに上手くすれば火事場泥棒で満州の権益が獲得できる。

 黄金とダイヤモンドで飾られたキムの悪趣味な王宮にやって来たモロトフ外相は、キムが求めるならソ連軍派遣の用意があると伝えた。

「中国は好きにするが良い。カンフー映画は好きだが、この時代の薄汚い中国に興味などない」

 キムとスターリンの間で秘密協定が結ばれた頃、半島では祖国解放記念の宴が連日連夜行われた。美女侍らせながら食事を進めるキム。

 キムの前に豪華な料理が並べられた。焼肉も野菜ももりもり食べる。神になり未成年を卒業したので地酒もがんがん飲む。

(過去に戻ったらマイナス60歳ぐらいになるのか?)

 とりとめもない事を考えながら5つ星シェフのクローン料理長を呼ぶ。

「この肉は上手いな」

「上質の赤犬です」

 犬は生きてる時に叩くほど旨味が増すと信じられている。キムは料理法にまで口出しをしない。

(何を食っても美味ければ良いんだよ)

 食欲が満た後は性欲で子作りに励む。夫や父親を亡くした妻娘は進んで後宮に入った。キムに保護された事で生活が保証されるからだ。

「ふひひひ。全て任せろ」

「は、はい」

 朝鮮王朝の係累と言う娘を抱いた。浅黒い肌も風呂で磨けばそれなりに見映えがする。


     《お見苦しい点もありますので中略》


 性欲の次は日本征伐。対馬解放だ。

「オペレーション・コロネを発動する」

 軌道上の攻撃衛星から上陸の支援射撃が始まった。太陽電池で動くマイクロ波による兵器だ。巨大な電子レンジが空に浮かんでいると思えば良い。古賀龍太郎少将を司令官とする対馬要塞司令部はこの一撃で壊滅した。対馬要塞を無力化した後は、残った敵にAH-1Fが対地攻撃を行い着陸地域を確保した。UH-60PとCH-47Dが降下し兵士を吐き出していく。

 海を渡るに当たって障害があった。日本海軍だ。

 佐世保、呉に集結していた第一、第二艦隊と第一航空艦隊は露払だ。朝鮮半島に上陸して解放する陸軍が主役になる。大陸では南方作戦に参加予定だった部隊に移動命令が下り満州に集結していた。

 軍港の動きは高空からの目でキムは把握していた。キム海軍は対馬沖に進出し迎撃の構えを取っていたが日本海軍の艦艇、乗員の能力はこの当時、世界でもトップレベルでありまともに戦えば未来の海軍と言っても損害が出る。

 幾ら無限に生産できるとは言えキムも暇ではない。

「隕石の直撃でも食らわせればご自慢の艦隊も消滅するな」

 アステロイドベルトから手頃な隕石を選ぶと軌道上に移動させた。落着の影響で地球を塵が覆ったり、半島に津波が来ては元も子もない。威力を軽減させて戦場にフォースシールドを張った。

 対馬沖を航行する第一艦隊旗艦「長門」の艦橋に年若い青年がいた。彼の名は堀大樹、21歳。幼女神によって転生させられた未来知識を持つミリタリーオタクで海軍少将の階級を貰っていた。

(こんな歴史は知らない。朝鮮半島が大東亜戦争開戦前に独立するなんて!)

 彼はまだキムの転生を知らなかった。

(これは俺が転生した為に起きたバタフライ効果なのか?)

 先の読めない状況に表情を強張らせる堀。その様子を視界に治め眉間に皺を寄せる連合艦隊(GF)司令長官山本五十六大将に先任参謀黒島亀人が囁く。

「堀の未来予測とは大分異なっている様ですが……」

 未来が変わり堀の知識が当てに出来なくなった。その事を現実的に受け止めていた。

「こうなっては堀もただの若者か」

 未来の電話機や電算機を見せられても技術転用は不可能だったが、暗号の改定、工業規格の統一等出来る限りの事はした。

「こう言っては何ですが、お払い箱かと……」

 キムが現れた時点で未来知識は役に立たなくなっていたが、まだその事を知る者は居なかった。

 衛星からキムの元へ、リアルタイムで三次元映像で映し出されている。

 航行する艦隊は観艦式の様で美しい。

「……だが、さよならだ! 見るが良い。神の力を」

 キムが指を鳴らすと成層圏に浮かんでいた隕石が重力に引かれる様に落下を始めた。

「何だ、あれは!」

 見張りの叫びに艦橋から身を乗り出し天を見詰めるGF司令部の面々。迫る巨大な隕石は悪夢の様だった。

「嘘だ……こんな歴史はあり得ない……」

 呆然と呟く堀を無視して艦隊に回避命令を出す山本だったが全ては遅すぎた。人知を超えた力で連合艦隊(GF)は壊滅した。

「海は汚してはいけないな。ぽぽいのぽいっと」

 キムは残骸やその他もろもろを文字通り世界から消し去った。

 知識はあってもチート能力の無い転生者はキムの敵ではなかった。存在さえ気付かれず、日本海軍共々を撃滅。制海権を握った事で、年明けに九州上陸を始めた。

 襄陽級掃海艇が日本軍の設置した機雷源を開口する中、沖では世宗大王級駆逐艦(DDG)、李舜臣級駆逐艦(DDH)、広開土大王級駆逐艦(DD)、仁川級フリゲート(FF)、浦項級コルベット(PCC)に守られた独島級揚陸艦からLCACが吐き出されている。

 1942年1月1日、台風の九州上陸にあわせて神の軍が上陸した。

 日本軍は、朝鮮独立軍による本土侵攻には大規模な渡洋能力が必要であり、船舶を揃えるには最短でも半年はかかると想定していた。そこにいきなりの奇襲上陸と言う状況で、反撃の戦力を揃える事が出来なかった。出来たのは機雷をばら蒔くだけで、上陸阻止の砲撃も無かった。

 侵攻第一段階の攻略目標は北九州の制圧だ。主攻は日本軍の戦力が集中している福岡県だが、まずは橋頭堡を固める事を優先している。

 山口県からの応援が駆けつけるのは間違いない。本土に上陸されては、大陸の占領地も放棄するしかない。対英米蘭の南方作戦をしている余裕もない。

「畜生、帰って来たと思えばまた戦争かよ」

 松井秀治大佐麾下の歩兵第百十三聯隊は9月末に再編成されたばかりであった。

 西部軍の兵力は、正規の師団が大陸に行っており留守師団しか存在しなかった。四国・善通寺の第五十五師団、九州の第五十六師団である。

 編成途中の歩兵第百四十八聯隊が松井大佐の応援に送り込まれた。

 西部軍司令部は在郷軍人や学生を動員して進行を阻止しようとしたが焼け石に水でしかなかった。九州兵の龍兵団と言えば、それなりに期待されていたがキムのクローン兵とは装備が違いすぎた。

 平井卯輔大佐の捜索第五十六聯隊は装甲車を先頭に戦線に駆けつけたが、航空優勢はキムにあり良い的でしかなかった。上陸軍の橋頭堡は頑強で撃退は不成功だった。

 戦車を前面に展開した楔形隊形でキム軍は日本軍の前縁に突っ込む。

 砲弾はコピーによって幾らでも増やせる。贅沢に撃ち込まれる火力は制圧効果も十分だ。

「全軍、突撃! 突撃! 突撃!」

 地形防御も戦術も関係ない。鉄量が戦いの勝敗を決める。

 抵抗は貧弱で大分県にキム軍先鋒が到着したら主要都市は灰燼に帰していた。在日朝鮮人による後方攪乱だ。略奪、暴行、強姦、殺人が許されていた。一気に九州全土を席巻する。

 帝都東京は混乱の渦にあった。突如、独立宣言した朝鮮。対馬を占領、海軍を壊滅させて北九州に侵攻したと思えば一週間もせずに九州全土を制圧下に置こうとしていた。

「ここまでか……」

 藤江恵輔中将の言葉に参謀長佐々真之助少将も項垂れる。

 九州の日本軍を撃滅した神の軍は山口県に上陸した。目指すはキムの生まれ故郷の大阪民国。時代は変わっても故郷には変わりはない。

「天長節(キムの降臨した日)までに大阪を落とせ」と将軍達は部下を指導した。

 日本国内では朝鮮系出稼ぎ労働者が蜂起。後方攪乱に活躍していた。

 日本にとって悪夢のような長い戦争が始まった……。


     †


 1942年、新年を迎えた世界の勢力図は大きく変動していた。東欧ではドイツ東部軍がコーカサス地方に進撃を始め、北東アジアでは日本帝国が国家存亡の危機に悲鳴をあげていた。

 対日開戦を口実に欧州に介入する予定であったアメリカ合衆国は、計画の大幅な修正を余儀なくされていた。枢軸陣営であった日本はレースが始まる前に脱落しようとしている。

「朝鮮の独立で日本の軍事力は急速に低下している。我々にとっての脅威は無くなったと言えるが、この状況をどう考えるね」

 ホワイトハウスでは今後の対日政策変更について討議された。放っておけば日本は消滅する。それは問題ない。その後釜がコントロール出来るかが問題点だった。

「これは日本を我が国の影響下に置く機会です。日本は疲弊しており九州で兵や装備を失いました。やつらに恩を売ってやりましょう。時間が経てば応援を送る事も難しくなります」

 米軍の派遣に異論はない。問題は、朝鮮の独立軍が日本軍を凌ぐ兵器を保有している事だ。

「連中が日本軍を叩いてくれれば、その分だけ我が軍を派遣した時に影響力を残せる」

 打算的な考えは間違いではない。だがタイミングを間違うと派兵が無駄になるどころか、こちらにも火の粉が降りかかる。

「上陸した敵の兵力は?」

 大統領の頭の中では、すでに派兵は決定事項に入っていると質問が物語っている。

「独立を機会に臣従した朝鮮人もいるでしょうが、多くても10個師団程度と分析しています」

 陸軍参謀長の報告に海軍作戦本部長も頷く。

「朝鮮軍は九州全域の確保を優先している。九州を前進拠点に東進するのが妥当な流れだな」

 海兵隊出身の補佐官がつぶやく。

「朝鮮軍は独立から日本侵攻まで入念な準備していたようですね。これまでの動きは早く、停滞は見られません」

 アメリカの分析は常識に捉われている。神の力と考えた事は無い。神だという奇跡は幾度もあるが認められていない。


     †


 朝鮮半島が独立した日、支那方面軍と関東軍は討伐の兵を半島に送り込んだが生きて帰ってくる者は居なかった。南方作戦の為、動員されていた部隊は邦人と共に満州へ引き揚げた。

 九州に敵が上陸し、先行きの見通しは悪かった。大陸で国民党軍や八路軍が活発な動きを見せており、支援の無い支那方面軍は引き揚げざるをおえなかった。

 海軍が叩かれ海を渡る手段がない以上、選択肢は限られている。

 敵の根拠地である朝鮮半島を狙うしかなかった。

 米軍の介入前に自分達の手で片を付けるべく日本軍は朝鮮へと雪崩れ込んだ。

 先鋒は山下奉文中将麾下第二十五軍。精鋭第五師団と近衛師団の機械化部隊が切っ先となって前進し、側面は勇猛果敢な指揮官で知られる牟田口廉也中将の第十八師団が援護した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ