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総攻撃、暗号名ゴードン

 悲劇の英雄ゴードン。西ドイツでソ連軍と戦い、戦死したNATO軍将校の名前だが、ゴードンは軍事行動での代名詞になった。

 冷戦時代。自由主義陣営にとって共産主義は人類にとって憎むべき敵で悪だった。そして冷戦は終わり、熱い戦いが始まった。

「ゴードンだ」

 敵に押されていた師団司令部では、師団長から告げられた言葉に幕僚が活気を取り戻した。

「ゴードンですか」

 疲労を滲ませていた顔に笑みが浮かぶ。

「ゴードンだ」「ゴードンだ」と喜びの声が広がっていく。

 前線に貼り付き消耗していた部隊にも作戦計画が伝えられた。

「本作戦にはコンビ1080(師団)からハンバーグ(第960普通科連隊基幹)、魚フライ(戦車中隊)、ポークカツ(通信中隊)、チキンカツ(特科中隊)、若鶏からあげ(警務小隊)、焼肉(施設)、オムレツ(衛生)が参加する」

『3品1480からチキンカツ860、ランチは730か?』

「ああ、日替わり650より威力を保証する」

 普通科中隊から火力調整の打ち合わせで連絡が来た。特科中隊の装備は105mm榴弾砲ではなく155mm榴弾砲だ。

 1150時。

『ひとくちビーフカツ(戦闘団本部:指揮所)から焼肉900(戦闘団通信系:隷下全部隊)へ。ゴードン、ゴードン、ゴードン』

 ゴードンが発動された。

 国道を挟んで対峙する様に展開するソ連軍はおよそ1個大隊の自動車化狙撃兵を基幹に戦車、砲兵、対空等の増強を受けている。此方も普通科連隊基幹だが、世界基準で見ると精々が大隊規模。敵の方が恵まれている方だった。

『ハンバーグ960、チキンカツ860。左第一線より叩く。誤射に注意してくれ』

「チキンカツ860了解」

 味方の戦車が前進開始した。偽装網には申し訳程度の草木が散りばめられている。戦闘が始まれば何処かに吹き飛んでしまう。

 施設科が地雷原を拓いている間、味方の戦車が援護をしていた。第一線のソ連軍は迫撃砲小隊や対戦車小隊がそれに対して必死の阻止攻撃を行っている。

 ソ連軍は歩兵小隊にドラグノフを装備したスナイパーを配備している。味方でも戦場で鹵獲したソ連軍の装備が使われていた。ドラグノフで敵歩兵を排除してると敵の応援がやって来た。

 T-72戦車、東側の戦車なので舐められていたが歩兵相手の戦闘能力は十分すぎると言えた。

 戦車の出現に対して空自の近接航空支援を要請したが、第二線に展開するソ連軍の高射特科も黙ってみていない。

『ダラス4、目標を確認。攻撃開始する』

 A-37ドラゴンフライ攻撃機は戦車を狙うが、ZSU-23-2対空機関砲や近SAMで簡単に落とされた。

「ヘボイな」

 味方から見ても不甲斐ない有り様だった。

「ああ、ダサい」

 残ったドラゴンフライが逃げ去ると、戦車の支援でソ連軍が後退を始めた。速やかな状況判断だ。

 小隊は戦闘区域に向っていた。窓から外を見ると荒廃した市街地が広がっている。極東空軍と海軍航空隊によって爆撃が行われた結果だ。

 戦場にはソ連軍の他に日本人民解放戦線の戦車部隊が存在すると情報が入っていた。

 日本人民解放戦線は在日朝鮮人のゲリラで、米軍施設から奪った76mm砲塔載のM41戦車と90mm砲塔載のM48戦車を装備している。中戦車2個小隊に対して重戦車1個小隊の割合だ。

「前方敵戦車!」

 61式戦車の90mm砲は十分対応可能だ。右端のM48戦車から順番に叩き潰すべく主砲が火を噴いた。

 戦車の次は後続の装甲車が目標となる。

 BMP-1装甲車は攻撃を受けて回避行動を始め、歩兵を慌てて降ろそうとしてるが停車すれば的になる。

 BMP-1は搭載している9M14対戦車ミサイルを撃ち込んで来た。自衛手段としては有効だ。しかし61式戦車の砲弾は装甲を打ち抜いた。被弾した装甲車は派手に吹き飛んでいる。

 歩兵でも勇者を極めれば戦車に勝てるが、戦車砲相手だと通常の装甲車は分がわるい。

 爆発炎上する残骸の脇を通り過ぎると、民家の陰からロケット弾の攻撃があった。履帯を破壊され停車する61式戦車。

 RPGの射手は移動不能にされた74式戦車に止めを刺そうとしたが、随伴していた普通科と上空に居たコブラの弾幕に捉えられオーバーキルで倒された。

「やりすぎだ」外に出た車長がそう呟くと中隊本部から指示が来た。

『ビーフステーキ1840、ランチは終了した』

 戦車中隊は弾が残り少なくなり追撃を終了する。小隊もその場に停車し警戒に入った。

 しかし歓迎会はこれ終わりではない。

 兵士を満載し逃げるソ連軍のBTR-70装甲兵員輸送車が突如爆発した。レンジャーの連中が退路に仕掛けた地雷だ。対人地雷は廃絶されたが対戦車地雷は存在した。

 アフガニスタン、チェチェンでゲリラ戦を経験したソ連軍は対処が早い。押しのけようと戦車が脇に回る。

 だがT-72戦車は事故を起こした。護岸工事された堤防に乗り上げて亀のように身動きが出来なくなっている。

 味方の61式戦車がここぞとばかりに90mm砲でT-72戦車を撃ち抜いた。

 野戦特科の155mm榴弾砲も後続するBMP装甲車を吹き飛ばして撤退支援を妨害してしている。AH-1対戦車ヘリコプターがさらにTOWで生き残ったAFVの破壊に向っていた。

 地上部隊を少々、潰した所で敵には空中機動部隊(アンビル)が存在する。ミル24ハインド強襲ヘリコプター、ミル17大型輸送ヘリコプターが兵員とロケット弾を満載して来たら厄介だ。

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