猫9
その日は、朝からツイてなかった。俺が住んでるアパートの前でガス管設置の工事が始まり、…とにかくうるさい!
…………イライライライライライラ。
俺
「あ〜うるせぇなぁ」
猫
「シャ〜シャシャ〜」コイツもキレてるらしい。
コイツの名前だが、結局決まらなかった。
俺と猫は、騒音から逃げるように外に出た。挨拶してきた道路整備のおっちゃんを睨みつけ、当てもなく歩く。…………歩く。ただ歩く。
猫
「この街も変わった…」
突然、猫が俺に話しかけてきた。
俺
「そうか?さほど感じないけどな」
猫
「……あっそ」
………………………………歩いていて気付いたことだが、コイツの言葉は俺以外の人間には聞こえないらしい。これは、かなり都合が良かった。話す猫の存在がバレたら、騒ぎになるし。
街から抜けると、田舎の香りが強くなる。畑やら、川やら、田んぼぐらいしかない。
駅前に戻ろうかと思ったが、…たまにはこんなマッタリした時間を過ごすのもいいかもしれない。
俺
「…………」
猫
「……………」
まっ……………………たり。
突然、俺の携帯が鳴る。現実に戻された。
俺
「はい」
賢治
「仕事を頼みたいんだ。………忙しい?」
この状況で、忙しいとは言えない。
俺
「いや、大丈夫だ」しばらく話した後、電話を切った。最近は、警察連中も街中をウロウロしてるからな…しばらく様子見たかったけど。
猫
「行かない方がいいよ。…てか、行くな」
恋女房かよ、コイツ(笑)
俺
「大丈夫だって。知らない仕事じゃないし、第一俺にはこれしか稼ぐ方法がないしな」
猫
「まだ分からないの?アンタは、ただの捨て駒だよ」
そんなことは、分かってる。それでも、やるしかないんだ。やるしか…………。アパートに引き返した俺と猫は、夜までボ〜と過ごした。
時間になり、俺は部屋を出る。猫は、不自然なぐらい大人しかった。
待ち合わせの場所まで行くと、もう車はあった。時計を見る。………遅刻はしていない。
俺
「やけに早いな。そんなに俺に会いたかったのか?」
賢治
「ハハハ。まぁそんなとこだ」
いつものようにメモとカバンを受け取る。そして、お互い別れた。
メモに書かれていた場所は、工場の跡地だった。そこに数人の男がいた。
男1
「おぉ来たか!待ってたぜ」
俺
「…………」
……………。何か違和感を感じた。
男2
「早くカバンの中身を見せてくれませんか?確認したい」
俺
「あぁ……これだ」
違和感は、確信に変わる。……チッ