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猫の手紙  作者: サシミ
8/28

猫8

〈AM10時〉電話である男に呼ばれた俺は、喫茶店にいた。時間通りにソイツは来た。

「客は、満足してたか?」

「まぁな」

この男は、賢治…………名字は忘れた。

賢治

「お前さ、いつまであんな生活続ける気だ?いい加減、こっちに…」

「俺の自由だ。そこまで介入するなよ、賢治」

賢治

「…………」

喫茶店と言う楽しい場所からは想像も出来ない話をする二人。

賢治

「親父がさ、お前を欲しがってるんだよ。一度でいいから会ってくれないか?…な、頼むよ」

「俺はさ、今のままで満足してるんだ。だからさ、それは無理」

どこかで聞いたことがある曲が店内に流れる。良く見ると、学生服を着ている奴や子供連れの主婦が多い。

「…………」

賢治

「………」

せっかく頼んだコ―ヒ―が冷めていく。アイツなら喜んで飲むかな。猫舌だから…。

「話はそれだけか?そろそろ帰るよ」

賢治

「………あぁ」

駐車場には、一際目立つベンツがあった。あいつの車だ。中には、数人の男がいる。俺の姿を確認すると、軽くお辞儀をした。

「………はぁ」

……………………………気疲れした俺は、アパートに直行する。部屋では、毛繕いをしている猫が一匹いた。

「………そういや、そろそろお前にも名前をつけないとな」

「!!!」

予想外にビックリした反応を見せる猫。

「マリモとかどう?」

「…………」

何か考え込んでいる。

「……じゃあ、猫美(ねこみ)は?」

「……………………………は…」

「うん?何か言ったか?」

「はるな…がいい」

この部屋だけ、時間が止まった。それは一瞬だったけれど、俺の思考はかなり長い時間止まったまま。

「なんで、お前がその名前を知ってる?」

「…」

「答えろ!」

しばらくして、猫はゆっくりと言った。

「なんか…好きなんだ。その名前…」

…………………………………………………俺

「……そうか。でもお前には似合わないよ。その…名前はさ」

その日、俺と猫はもうこれ以上の会話をしなかった。

お互いに話しかけたりしない。

ただ、偶然やっていた料理番組には両者の視線が釘付けになった。


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