猫7
懐かしい夢。俺は、あの時何を見たんだ?どうしても思い出せない。春菜が笛のようなものを吹いていたのは覚えているが、その先が………。俺って、こんなに記憶力悪かったっけ。………少し悲しくなった。
猫
「……暇」
黒猫の横には、食い散らかした缶詰めがある。行儀レベルは、最低だ。話せるということを除けば、コイツもただの猫。
俺
「お前、汚いな。洗ってやるよ」
正直、このまま歩き回れたら部屋が余計に汚くなる。
猫
「シャ〜シャ〜」
怒ってる。
俺
「…じゃあ、タオルで拭いてやる」
俺は濡れたタオルで黒猫の体を拭いてやった。その間、何度となく爪で引っかかれ、俺は傷だらけになる。………数時間後、黒猫は綺麗になる。汚れの落ちたその体は、どことなく品があり、…高く売れそうな気がした。
俺
「………」
猫
「守銭奴のような最低最悪な目つきしてるな、タケルは」
売る計画がバレた。
テレビからニュースが流れている。俺には関係のないツマラナいものばかり。
交通事故?
不正融資?
離婚?
…………眠くなる。
猫
「………」必死に猫は、ニュースを聞いている。もしかしたらコイツは、こうやって人の言葉を覚えたのかもしれない。………な、わけない。
俺
「前にも聞いたけど、なんでお前は話せるんだ?」
猫
「………………」
やはり答えない。
俺
「じゃあ、………じゃ…あ…」
まぁ、どうでもいいか。そんなこと。
猫
「タケルは、なんであんな仕事してる?」
俺
「なんでかな」
テレビ以外の音は聞こえない。とても静かな夜だ。
猫
「アンタ…近いうちに死ぬよ」
俺は、テレビ画面を見たまま考える。俺は、死ぬのか?……………俺の勝手だろう。これは俺の命なんだから。バカバカしい!
俺
「さっさと寝ろよ、バカ猫」
猫
「お前がな」
…………憎たらしい。
テレビを消し、寝る。
無意味に睡眠薬を飲む。この癖は、なかなか直らない。昔から……。
【シナせなイ】
そう、聞こえた気がした。