猫27
時間が戻る。
死んだはずの彼。
…………。
私は、人間?
分からない。だって、人間の記憶がないから。
でもね、こんな私でも覚えてることはあるよ。
それは、声だったり、手の温もりだったり。とても良い思い出……だと思う。今でもそれは変わらない。どんな姿になっても、どんなに私が変わっても。
【タケルちゃん、起きて】
彼は、面倒臭そうに起きた。やっぱり生き返ったんだ…。あの人の言っていたことは正しかった。
良かった…。
本当に良かった。
私は今、とんでもないことをしているのかもしれない。
死ぬはずの人間を生かしている。こうやって。きっと、いつか、近いうちに私は。罰を受けるだろう。これは、いけないことだから。本当は、やってはいけないこと。
旅に行った。タケルと二人で。タケルに正体がばれるんじゃないか。そんな不安を掻き消すように、私はこの時間を楽しんだ。
でもね、分かってたんだ。もう、終わりが近づいていること。
タケル…ちゃんと、また離ればなれになるって。そして、今度こそ、二度と会うことはない。
こうやって二人でいられるのもあと少し。
タケルがいない時、私は隠れて泣いていた。涙を上手く拭けないから、畳を汚しちゃったけど。
帰ってきたタケルちゃんは、それを見ても何も言わなかった。やっぱり、優しいね…。あの時から、何も変わらない。
なんで私は、こんな姿なの?
こんな姿で…。
鏡に映る黒い猫。
…。
私の罪。
人を殺したこと。
お父さんを殺した。
でも、でも、でも仕方なかった…。
あぁしないと私…私。
消えてしまうから。