猫24
くたびれた街。常に私の鼻には、下水のような臭さがくきまとっていた。
ここは、どこ?
私は、ダレ?
分からない…何も思い出せない。
歩いていると、お腹がすいた。でも食べるものがない。だから盗んだ。知らない家に忍びこんで。
何してるんだろう?
私…わたし…わた…。
私は、猫という生き物らしかった。誰に教えてもらったわけじゃない。だけど、知ってる。なんでかな………。いい香りのする女に、猫ちゃんと呼ばれた。たまに、タマと呼ばれる。私の名前……なまえ…分からないや。
ある日、男に会った。知らない男じゃない。たまに、見かけるヤツ。
男
「寒い?」
………。なんで私に話しかけるんだろう。
私
「……普通」
凄く驚いた様子の男。なんで?
男
「…寒い?」
私
「しつこいんだよ!人間野郎」
正直、私はパニックを起こしていた。なんで、この男は私の言葉が分かるんだろう。同じ猫だって、私の言葉は分からないのに…。
男と別れた後も私はずっと考えていた。
初めて、言葉が通じた。言葉が…。
涙が出た。…止まらない。その時、新しい匂いがした。とても優しい匂い。涙の匂い…。
もう一度、会いたいその夜、見た夢を私は覚えている。覚えていることなんて何にもないはずなのに…。その夢は、変わっていた。夢だから仕方ないんだけど。
あれ?人間だ。私が人間?…へぇ、二本足で立つのもいいね。なんか頭がフラフラ揺れるけど。
顔は見えないけど、小さな人間が私の目の前で寝ていた。小さな息づかいが聞こえるから死んではいない。
私
「…………」
あれ?声が出ない。
しかも、動けない。だからずっと、寝てるのを見ていた。
………不思議な夢。