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猫の手紙  作者: サシミ
22/28

猫22

もう何年も前に捨てた記憶。最近まで思い出すこともなかった。その記憶の前に俺は今立っている。何も変わらない。ここは。

「ここがタケルの…」そう、ここで俺は育ったんだ。

ここへは、二度と来ないと思っていた。

公園…俺と春菜が遊んだ場所。毎日のように俺たちは、暗くなるまで遊んでいた。ブランコにそっと触れる。

「………」

すぐに昔が蘇ってくる。俺は、それが嫌ですぐにブランコから手を離した。

それでも手に残る鉄臭さは消えない。

公園を後にし、町を練り歩く。

見慣れた一軒の民家がある。ワケの分からない草が生い茂り、何年も放置されていたことが分かる。猫

「タケルの家?」

少し聞きづらそうに聞いてくる。


「違うよ。俺の家は、もうない。今は更地になってるし。この家は…俺の…」


少年

「血の匂いがする」

鋭いな。やっぱり、特別なガキに違いない。そう、この家には血が染み込んでる。

「…タケル?もう行こうよ」

俺の顔を見上げている猫。猫と目が合う。俺は、自然と狂気を帯びていたらしい。…ふぅ。参ったね〜。

「そうだな」

空を見上げる。雲行きが怪しい。


【これでいいの】


「いいわけないよ、春菜。俺は、あの時から前が見えなくなった」


轟く雷鳴。

停電。

それでも俺には、はっきりと相手が見えた。心配なんかして戻らなければ良かったんだ。今でも、後悔してる。

なんで、俺は………。

メガネをかけた男

「キミは、どうしたいの?」

「助けたい。ただ、それだけだよ!」

メガネをかけた男

「うん。キミはそれでいい」

去り際に見えた男は、嬉しそうに笑っていた。

「行かなくちゃ!」

僕は、走った。運動会でもこんなに真剣に走ったことはなかった。途中、雨が降ってきた。

体から白いモヤが出ている。

「はぁはぁはぁ…」

家の中は、真っ暗だった。

ドアを開け、中に入る。暗かったけれど、だんだんと目が慣れてきた。

扉が半分だけ開いている。その部屋から微かに人の気配がした。

ゆっくりとその部屋に入る。

そこには、春菜ちゃんがいた。もう一人は、床を舐めるように倒れていた。

「春菜ちゃん?あの…えっ?…なんで…」

春菜

「…………」

泣きながら、春菜ちゃんが

【ゴメンナサイ】

なんて言うから、僕まで涙が出たんだよ?

金属音がした。春菜ちゃんが持っていたものが手から落ちたんだ。

…………………。

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