猫21
黒猫と病院服の男とガキ。変な取り合わせだ。人々の視線を何度も感じた。…まぁ仕方ないか。
俺
「なんでさ、お前らはそんな力があるんだ?」
素直な感想だ。
猫
「私にもはっきりとは分からないけど…この力は…大事なものと引き換えにもらったんだと思う」
良く分からない答えだ。
俺
「お前は?」
少年
「僕は、時間と引き換えにこの力を得た」
(昔のことは覚えてない)そう、最後に付け加えた。………やはり、今の俺には良く分からなかった。ただ一つ分かったことは、コイツらは特別な力を得る代わりに何かを失ったということ。きっと、それは…。
俺
「予定狂っちまったなぁ。これからどうすっか」
もう今日のバスはないだろう。
……………………………………………………。
宿の主人
「いらっしゃい!あれ?…どうされたんです?」
当たり前の反応だ。朝、出ていったばかりの客がもう戻ってきたのだから。少し…いや、かなり恥ずかしい。
俺
「また、頼むよ」
それだけ言うと、逃げるように部屋に滑りこんだ。
少年も連れてきた。コイツが、普通の子供じゃないことは分かってる。それに、ついてきたのはコイツだ。嫌なら、帰るだろう。まぁ…帰る場所があればの話だが。
窓を開け、夜風に当たる。それだけで精神が安定する。その時に初めて、俺が今の今まで何かに怯えていたことを知った。
死とは何だ?
死神。
悪魔。
神…どれもすっきり当てはまらない。
死が見える気がする。触れられる気がする。曖昧なものじゃなく、はっきりとそれは存在する。
………なんか、宗教じみてきたな。考え方が。
俺
「………寝る」
猫は、リモコンをいじっていた。ただ、上手くチャンネルを変えられないらしく、イライラしていた。少年は、部屋の隅でじっっと何かを見ていた。そこには、壁しかない。
俺
「………」
体が震える。…。
これからどうなるんだ。どこに行けばいい……。
俺
「…」
その時、懐かしい顔が頭に浮かんだ。俺の中は、闇がほとんどのスペースを占めている。これが俺が犯してきた罪だ。ただ、唯一の光だけが今も俺を支えている。その光をもう一度だけ…