猫14
ここに来てから数日がたった。
ここにいると時間の感覚が鈍くなる。
それなのに俺の生活リズムは、一定で。
居心地は、まぁまぁ良かった。猫も気持ち良さそうに昼寝をしている。
俺
「……………」
わざと畳を叩き、音を出す。バン!
猫
「………?」
一度、面倒臭そうに顔を上げたがまたすぐに寝る。
………つまらん。
俺は、外に出た。この宿の主人は、本当に良い人で何かと俺たちの世話をしてくれた。まぁ俺から言わせれば、甘い人間。足に罠がかかっていても気づかないタイプだ。
宿の主人
「いってらっしゃい!暗くなる前に帰ってきてくださいね」
………俺は何歳だ?
しばらく歩くと、海の香りを感じなくなった。商店街をブラブラ歩く。………歩く。
そうしていたら、あの不思議な少年を見つけた。どうやら、友達と一緒のようだ。………?様子が少しおかしい。
少年A
「…これでいい…ですか?あの…今はこれしかないんだ…」
不思議な少年
「……………約束したのより少ない。お前、ダメ」
受け取った金を捨て、足で踏みつけた。
少年B
「ぼ…僕は、きちんと持ってきたよ!ほら」
汗ばんだ手には、何枚ものお札が握られている。
不思議な少年
「……………」
お金を何も言わずに受け取る。
へぇ…こんな田舎町でもカツアゲあるのか。
俺は、また歩き出す。少年たちを素通りする。
………ドサッ!
少年B
「ひぃい!!」
短い悲鳴を上げた。
不思議な少年
「……………」
間もなく、少年Aも同じように倒れた。
不思議な少年は、何事もなかったかのようにその場を去った。お金は、そこに捨てて。
俺
「……………」
振り返って見ていた俺と目が合う。
不思議な少年
「…………」
相手の目からは、何も伺うことは出来ない。ただ、ほんの少しだけ俺の姿を瞳に宿す。
その目は、何百年もこの世界を見てきたように果てなく底が深い。
…この少年とはまた会う気がした。