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猫の手紙  作者: サシミ
13/28

猫13

駅から降りる。深呼吸。なんか、体が軽い。息をし易い。

「どっちに行く?右か左か…」

どうせなら、運命と言うものに任せてみたくなった。

「左」

………右に行くことにする。

「左!ひ・だ・り」右に行くと、一人の子供に会った。まだ小学校低学年といった感じの背丈と顔立ち。

「…………」

子供は、下を向いたまま、棒きれで蟻を潰していた。無表情に。

「………」

まぁ…子供のすることだ。

「止めな!そんなこと」

猫は、怒鳴った。初めて、本気で怒っているアイツを見た。

「………」

理解できるはずもない猫の言葉。少年の耳には、ただの雑音でしかないだろう。

「生きようとしてるんだよ?必死に」

猫は、潰れた蟻たちを見ていた。一匹の蟻は、まだピクピク動いている。

少年

「なんで分かるの?そんなこと」

………今、コイツ。

「分かるのか?この猫の言葉が」

俺以外にもいたのか…そう感じた瞬間に、少年の影が濃くなった。

少年

「どうせみんな死ぬんだから。僕が今殺してもいいでしょ?」

猫が何か言おうとした瞬間に、俺が少年に話しかけた。

「じゃあ、俺がお前を今殺してもいいんだな?」

少年

「………」

光を宿さない目が俺を見る。どこか、俺の心を見透かしている。

「…なんてな」

俺は、猫と一緒に先へ進む。少年とは別れた。

少年は、ずっと俺と怒り狂った猫を目で追っていた。

………不思議なガキだ。

海沿いに歩く。夕方になると、海が淡く燃え、俺の目を紅く染めた。

あまり金はなかったが、野宿は嫌だった。

俺は、宿を探す。

偶然、一軒だけ俺たちを受け入れてくれる宿があった。

部屋に入り、電気をつけた。

これからどうしよう。……さっき見た蟻の屍と俺の姿がダブル。今夜は、とても冷える。

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