猫10
人間が死を予見する時、恐れたり、抵抗したりするらしい。でも俺は………………。死を受け入れている。この世に未練はないから。
俺
「…………」
男の一人が銃を取り出し、俺を撃った。 バン!………いや、ズドン!だったかな。頭がボヤけて良く分からねぇ。
俺
「ぐぁ………はぁ…」男たちに背を向け、俺は歩く。なんだ………生きたいんじゃん俺。なんか格好悪ぃな。死ぬの嫌なんだ。へぇ………。
血がとめどなく、口から溢れる。
止まる気配はない。内臓から血がもれる度、目眩が激しくなる。もう、どこをどう歩いているのかも分からない。男たちの笑い声が聞こえる。
男1
「くだらねぇ男だな。なんの価値もねぇ」
………………………………死。
俺は過去に一度だけ、死体を見たことがある。殺された奴の顔はぼやけているが、殺した人間の顔ははっきりと覚えている。
俺
「はぁ……あ…は」
地面に倒れる。
とても静かだ。
なんか、…なんでかな。涙が止まらない。
地獄って、どんな場所だろう。
………………………………………………
どこかで子守歌が聞こえる。
とても安心する。
声が聞こえた。
【タケルちゃん、起きて】
それが誰の声か、すぐに分かった。
ゆっくりと…目を開ける。
俺
「ジゴクか?」
猫
「……………」
猫がいた。黒い猫。気品がある毛並みをゆらしながら近づいてくる。
ここは俺の部屋。
…………????
俺
「どうなってる?」
ワケが分からない。アイツは、まるで猫のようにミャ〜ミャ〜鳴いている。