少女の悲劇 2
その笑いが恐ろしくて、怖くて、気が付いたらその男から逃げていた。
そして―――――
男は最初の頃と同じ微笑みを顔に張り付け、手を伸ばしてくる。
少女は、為す術もなくその手を眺めるしか出来ない。
―――――風の音がした。
途端に、少女に伸ばしかけていた腕から、赤い血が噴水のように吹き出る。
音の正体は風ではなく、男の腕に突き刺さったナイフであった。
頭上から衣服が羽ばたく音がする。
上を見上げれば、人影が見えた。
その人物は、音を殺して地面に着地する。
「何者だッ!?」
男性は、腕に突き刺さったナイフを抜き取りながら乱入者を睨む。
乱入者は琥珀色の髪、フードのついた上着を羽織った少年だった。
少年は、無言のまま地を蹴る。
男は、とっさに距離を取ろうとするが、ナイフが刺さった腕が痛むのか、動きがどこかぎこちない。
いつの間にか、少年は男の後ろにいた。
再び、風を切る音が辺りを支配した。
男は、糸が切れた人形のように倒れる。
男の首は、鋭利な物で切られ、第2の口となり血を吐いていた。
そして、少年はダガーを持っていた。
刃の部分には、血がべっとりと付いている。
目の前には、つい先程死んだ死体。
酷く血の臭いが鼻に突き刺さる。
そんな場所に場違いな声が響く。
「お疲れさん。
ミッションコンプリートだな、ヒリュウ」
闇の中から姿を表したのは、20代半ばの男性だった。
「いや〜、若いって良いね。
すぐに動けるのは便利だと思うぞ?」
「うるせェぞ、グリッド。
連絡はしたのか…?」
ヒリュウと呼ばれた乱入者の少年は、感情を込めていない声音で、訪ねる。
「当たりめーだろうが」
男性―――グリッドは当然の事のように返答する。
「問題は、今回の被害者か――――」
そう呟きながら、フェンスの方に視線を向ける。
視線の先には、先程の少女が倒れていた。