少女の悲劇 1
どうも、カルラです。
暖かい眼差しで見守ってもらえるとありがたいです。
満点の星だけが照らす夜。
ある一角の路地裏に靴の音が響き渡る。
そしてその音から逃げるように子供が走っていた。
何度も何度も角を曲がり追跡者から逃げるが、前方に立ち塞がったのは一枚のフェンス。
子供――栗色の髪を左側に結った少女は、越えられないと判断し来た道を振り返る。
そこには少女を追跡していた男性が立っていた。
一歩、また一歩と男性が近づくにつれて、少女も後退する。
だが少女の後ろにはフェンス、すぐに少女の逃げ場は失われた。
男性はその事を知っているのか、ゆっくりと少女に近づく。
距離が縮まるにつれて、少女の顔は絶望に包まれてゆく。
――どうしてこんなことになったのだろう――
少女の脳裏に先程の事が走馬灯のように甦る。
自分はただ、薬を買いに行っただけだ。
なのに、戻ってみると家の近くには人だかりが出来ていた。
そして、そこから見えたのは見慣れた家ではなくて、真っ赤な炎。
今日は母の体調が悪く、父が付き添いで看病していた。
弟は遊び疲れて寝ている筈。
燃えているのが我が家ではないことを確認したいのに、人が多すぎて中々進むことが出来ない。
弟は、父は、母は?
空高く燃え上がる炎が大きく傾いた。
――あぁ、崩れた
――放火されたらしいわよ?
――最近、物騒ね?
周りの声が、分厚い壁の様なものに阻まれてうまく聞こえない。
この瞳が映している光景はきっと夢だ。
父も母も、人に恨まれるようなことはしない。
早く夢から覚めなければ――
弟はきっと目を覚まして、母の看病している父を困らせている。
弟の遊び相手をしなくては――
なのに、、、
この瞳は覚めている――
頬に暖かい何かが伝った。
この瞳に映るのは、赤黒い炎。
家を、家族の命を体を、奪った炎。
いつの間にか人々は散っていて、この場に居るのは自分独り――
涙が溢れ、止まらない。
あぁ――、私は…
ヒトリボッチ―――――
ふいに、肩に男性独特の手が置かれた。
父かと思い、振り返るが後ろに居たのは、見知らぬ男性。
黒一色で身を包んだ男性はゆっくりと口を開いた。
「こんな場所に一人でいるのかい?
もしや、帰る家でも無くしたのかな?」
そういった男の顔は、造ったような微笑みがあった。