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ハレンチだよハルさん

 白いタイルの床らしい、そこに大の字になって仰向けに寝ているのは……

「ナカガワ、部長?」

「もう社内ネットからは削除されたよ、欲しけりゃこれやるよ、もうコピーしてあるし」

 ナカガワは、エジプトの人物像みたいに片手を上に、片手を下に折り曲げて脚もガニマタに開き、眼鏡は外されて目の上に偽物の目を描かれていた。

 頭の上には、トイレの詰まりとりが帽子のように配置されている。

 ネクタイまでも、踊りだしたように直角に曲げられていた。

 一応着衣のままだったが、ズボンの上から白いレースのミニスカートのようなもの穿かされていた。

 よく宴会グッズを売っている店で見かけるような、あれだった。

 サイズにかなりの無理があったのか、手前に突き出した妙にデカい白鳥の首が、どこか明後日の方を向いていた。

「オマエあの日、本部へ出張しただろう? 何の騒ぎも聞いてないのかよ」

「別に……」


 非常ベルだ。すぐにピンときた。


 春日が本部に忍び込んで、非常ベルに細工したのだろう。技術部長がいったんフロアに戻ってから担当部署をチェックに行くことまで知ってやがったんだ。

 たぶん、チェック場所の一つがトイレだったんだろう。そこで待ち伏せして襲った。

 サンライズはすぐに立ちあがって総務に向かった。


 春日はいつものように、デスクで電卓片手に何か計算していた。彼の姿を目にとめると

「早いな、こないだの出張旅費精算?」電卓を脇に置く。

「オマエ」周りに少し人がいるので躊躇していると、春日が合図したのでまた喫煙所へ。

「ちょっと屋上に来い」

 今度はサンライズが言ってやった。

「怖いなあ、サンちゃん」それでも春日はにこにこしている。

「あのなあ」

 二人きりになった青空の下、ようやく普通の声を出す。

「オレまでハメやがって……汚いぞ」

「ああ、めんごめんご」笑っている。

「オマエ、証拠があってやったのか?あんな……」何と言うコトバがいいのか少し考えて

「あんな……ハレンチな」

「おお、懐かしい言葉だねえ。ハレンチ学園」

「いいかげんにしろよ」ゲラゲラ笑っている春日をあきれたように見た。

 急に春日が真顔に戻った。

「聞きたいか?」

「聞きたいね」

 春日は煙をまっすぐに空に向かって吹き上げた。

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