表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/12

飛んでったナカガワ

「火事だ」人々が凍りついた。しかしナカガワはさすが元エリート特務員、ぱっと出口に駆け出した。上背のある男だが、かなり身が軽い。

「彼、どこに?」カンナに聞く。

「部長? 非常時にはフロアに戻って部内確認、それから担当部署チェックじゃない?」

 非常ベルは鳴ったのと同じくらい突然に止んだ。耳鳴りがするほどの静寂。

 すぐに、ざわめきが戻る。

「何だったんだ?」館内放送が入る。

「全館連絡。非常ベルの誤作動と思われます。担当部署チェックお願いします」

 カンナの通信機が鳴った。

「作戦課第三班カンナ。コード一〇六七。十二階大会議室にいます、異状なし」

 抜き打ち訓練じゃないの? としごくあっさり言っている。

 シヴァが近づいてきた。

「ねえ、ハルさんは?」そう言えば、ここに来てから春日をずっと見ていない。

 何となくこの場では黙っていた方がいいような気がして、シヴァの方を見ずに

「カスガが来たことは、ちょっと黙ってろ」そう小声で伝えた。シヴァは少しだけ眉を上げただけで、また展示物を見に戻っていった。


 それからしばらくしてから、コーヒーを飲みに行くふりをして会議室入り口の受付をのぞいた。誰もいない。名簿だけが置きっぱなしになっているのを、知らん顔しながらめくって確認。

 やはり春日の名は入っていなかった。


 アイツ、最初からここが目的ではなかったんだ。


 それでも一通り中を見学してから、まだ後ろ髪をひかれたようなシヴァを引きずるように、彼は支部へ帰っていった。



「なあなあ、あれ見たか?」

 ローズマリーがやってきた。本部に出張してから数日後の朝。

 顔が笑っている。「あの写真」

「何の写真?」

 彼は胸のポケットから、上質紙にプリントアウトしたL判くらいの写真を引っぱり出した。

「削除される前に急いで印刷したんだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ