どこいったハルさん
装備展示説明会の会場、本部十二階の大会議室。
メッセの展示会のようにパーテーションでいくつかに区切られた中に、最新の機器が並べられており、MIROCの各種関係者とブース担当者とがあちこちで話し込んでいるのがみえた。
連れてきたシヴァは、中に入るやいなや早速目についた『車に続くハイブリッド技術』という、小さなバッテリー関連の展示に吸い寄せられてしまった。呼んでも動かないので放っておくことにした。
春日は、本部の入り口近くに来てから「先行ってて」とどこかに姿を消したきり、まだ現れない。
仕方ないので、一人でうろうろする。
カスガのやつ、特務のリーダーがよく見に来る、なんて言ってたが誰も特務らしいヤツ、いないじゃないか。嘘つきめ。分かるのは、部長や課長級、作戦課の連中くらい。
後ろから急に「久しぶり」と声をかけられた。
振り向くと、前に一緒に仕事したカンナが立っていた。
相変わらずうれしいのかうれしくないのか分からないような表情。
それでも口の端に浮かんでいるのは、笑みだろうと判断してサンライズも
「よお」と挨拶を返す。「どう? 本部は」
「どこも同じ」カンナは去年から本部の作戦課にいる。
「メイさんみたいな上司がいなくて、ちょっとつまんないけどね」
東支部技術部作戦課副主任の八木塚、通称メイさんが遠く離れたブースで、通信機のスペックについて本部の担当を問い詰めているのが二人からも見えた。担当は冷や汗をかいている。いじめにしか見えない。
「今日は珍しいじゃん?」
「シヴァがどうしても、ってさ」普通なら一人で寄こすんだけど、オレにも見た方がいいって言うから……とシヴァのせいにする。
「何見に来たの? 今日は」まさかオトナのケンカを見物に、とも言えず「ええとね」
あちこち見まわしてみる。
「とりあえずそうだな……小さめで軽いヤツ」
何のことだか言っている自分にも分かっていない。
奥のブースから、ちょうど話しながら出てきた人影をみて、つい足を止める。
ナカガワだ。向こうはちら、とこちらに目をくれた。
支部でも何度かすれ違っているので、顔は覚えていたらしい。何でこんな所にオマエが? みたいな目をしている。
彼は黙って頭を下げ、脇を通り抜けようとした。
と、その時非常ベルが一斉に鳴った。




