ある一人の世話係りにおくる聖女からの命令文
笑いなさい。
これは命令です。
あなたはいつもよく笑っていた。
感情を出すことが出来なかった無愛想な私とは違って、笑っていた。
だからって怒らないわけじゃなくて、よく私を叱っていた。
怪我をして帰れば治療しながらお小言、脱走すれば怒りながら追いかけてきて。
私が誰かのために怪我をすると怒るくせに、自分は誰かのために平気で怪我をする。
不公平です。
いつかは、泣きながら怒ってたときもありましたね。
随分と器用な人だと、その時だけは尊敬したんですよ。
あなたは知らないでしょうけど。
しつこいとは思ったけど、嫌だとは思ったことは無いんですよ。
悲しいとか、嬉しいとか、顔に出ないののにわかる。
のに、何かして欲しいときに限ってわからない。
正直、何度かわざとじゃないかと疑いました。
特に、食べたい献立だけはいつもはずれ。
あの日はグラタンが食べたかったのに、焼き茄子はありえない。
本当、わかってない。
わかってない。
ばかなんですか。
そうなんですか。
本当、どうしようもないじゃないですか。
もう、どうしようも、
、
あなたは、ばかです。
どうしようもないばかです。
だから、きっと忘れないでしょう。
後にも先にも無いどうしようもないばかなのですから、しかたありません。
本来なら、忘れないとか、ありえないことです。
聖女ですから。
忙しいんですよ、本当。
だけど、こればっかりはしかたないですね。
ばかなのですから。
ですから、光栄に思ってください。
私が覚えておくことということを。
よろこんでください。
だから、わらってください。
それでは今からこの文書をおくります。
多少の時差があるかもしれませんが、届き次第、実行しなさい。
これは、命令です。
P.S
髪をみだすほど頭をなでてくれるのが、結構好き
でした