世界の中心
1ヶ月後。
中庭に生徒たちが整列している。アゲハくんは彼らの前に立っていた。
「あなたとあなたは合格ですわ。ほかのかたはまだまだですわ」
ちょうをプレゼントされた女子はピースを天に掲げる。その指にオレンジのちょうは止まった。
「もらえた〜♩」
「く〜っ、ダメだったぜ・・・」
「ゲット♩」
「がんばったのに・・・」
アゲハくんはちょうが入手できなかった生徒たちに助言する。
「現世は魂の修行の場です。もっと魂を磨きましょう」
「は〜い」
生徒たちは解散していく。木陰から観察していたぼくはアゲハくんに声をかけた。
「きみの狙いがわかった。教祖になって世界を支配するつもりだな?宗教は莫大な富を生む集金システムだ。信者からのお布施できみは一生遊んで暮らせる」
「そんなことしませんわ。わたくしは人類を救済したいのです。世界は憎しみに満ちています。貧困、格差、戦争、自然破壊、さまざまな問題を解決するには人類の魂を次のステージに進ませないといけないのです」
「うさんくさいなぁ。きみはそんな善人じゃないはずだ」
「もはやあなたの知るわたくしではありません。悟りを開きました。お金に執着しないのです」
「なんの報酬もなしできみが動くとは思えない。しかし、世界の支配者になることが目的でないなら、もっと大きな報酬を手に入れようとしているのか?まさかぼくかい?」
「妄想は自由ですよ。わたくしは校長先生に呼ばれているので失礼します」
アゲハくんはきびすを返して去っていく。いまや学校はアゲハくんの支配下に落ちてしまった。校長もちょうを欲しがり善行にはげみ先日の朝礼では紫のちょうを肩に止めていた。教師たちも校長からの評価を得るためにちょうをゲットしようと競うように町中のゴミ拾いとドブさらいをしていた。
校長に呼ばれたのはテレビ出演の打診が来たからだろう。テレビ局のクルーが先ほど廊下をうろついていた。
黄町くんも赤立羽くんも紋白くんもすっかりアゲハくんの信者となり、いまもまだちょうをゲットできていない生徒や教師を体育館で指導している。やれやれだ。
少し前までのアゲハくんは「格差なんてあって当たり前だろ!世の中、弱肉強食なんだよ!弱者は淘汰される運命さ!野生の世界を見習って人間はもっと本能的に生きるべきだぜ!」という主張だった。それがいまや完全な博愛主義者だ。この変貌ぶりはどう考えてもおかしい。
彼女のことを1番よく知るぼくだけが彼女の演技に気づいていた。この後、アゲハくんはテレビ出演を果たし世界は彼女中心に回り始める。




