ちょう大人気
1週間後の昼休み、ぼくたちは再び中庭に集合した。
アゲハくんは黄町、赤立羽、紋白の3人をじーっと見る。
「紋白さんは合格。1匹差し上げましょう」
「やった!」
紋白くんは椅子から飛び上がって喜ぶ。中庭をぴょんぴょん跳ねてウサギのようだ。
「まじかよ。オレは?」
「あとちょっとですね」
「私も?」
「黄町さんもあとちょっとですね。やや赤立羽くんのほうが上です」
「おっ、副会長に勝ってる!」
「屈辱だわ」
黄町くんは顔をしかめる。
「何色がよろしいですか?」
「やっぱり白かなぁ。あたしモンシロだし」
紋白くんはモンシロチョウを受け取る。
「魂が穢れると離れて行きますわよ。ご注意あそばせ」
「わかった!維持する!」
紋白くんの肩に止まったモンシロチョウを赤立羽くんと黄町くんはうらやましそうに眺めてる。
「来週には必ずゲットするぜ!」
「私が先よ!」
2人はにらみ合い火花をバチバチ飛ばしてる。
「紋白さん、今週何をしたのか教えなさい」
「頼みかた下手か。モンちゃん、学食でホットケーキおごるからおせーて!」
「私はうにパスタをごちそうするわ!」
「わ〜い!えっと、今週したいいことは・・・」
3人は善行の話題で盛り上がっている。
「一文字くんもあとちょっとですよ?」
「あえてだよ。ちょうを受け取るときみに洗脳されそうだ」
「そんな超能力持ってませんわ」
アゲハくんはくすくすと笑う。
「きみはどうやってちょうを操っている?きみには魂のレベルが見えているのか?」
「魂のレベルは見えてます。修行して霊格を高めたのです。ちょうがわたくしに懐く原因は乙女の秘密ですわ」
アゲハくんは唇に人差し指をあてた。
「あなたの魂のレベルが100になれば教えて差し上げます。100点を取るのは得意でしょ?」
「朝飯前だ。しかし、それはちょうを与えられたものが今後、どうなるか見極めてからにしよう」
ぼくはちょうを頭に乗せたり指に乗せて楽しんでいる紋白くんをみやる。
黄町くんと赤立羽くんはハンカチを噛んで悔しがっている。
推測だが、ちょうは餌付けしてちょうが好む花の香水を体にふりかけて操作している。善行しろという命令を出してそれに従い、ちょうを与えてもらう一連の行為がアゲハくんに絶対服従する催眠術の儀式になっている可能性もある。それは避けたい。ぼくは他人に支配されるのが1番嫌いなのだ。なぜなら世界の王になる男だからな。
紋白くんがアゲハくんからちょうを受け取ったという話はあっという間に学校全体に広がった。アゲハくんがたくさんのちょうに懐かれていることは話題になっていたが、ちょうをもらえるという話はまだ広まっていなかった。クラスメイトも大騒ぎだ。
「アゲハちゃんが飼っているちょうをくれるんだって!」
「へーっ、俺も欲しいなぁ」
「わたしも欲しい!青いちょうがいいな!」
「きみどりのちょうもいたよ。あれほし〜い」
みんなちょうを欲しがる。くっついて離れず指や肩や頭に乗ってくれるちょうが欲しいのは当たり前だった。天然のアクセサリーだ。
「めちゃくちゃいい子にならないともらえないらしいぞ?」
「魂の輝きを高めろだってさ?」
「なんかめんどくさいな。オレはあきらめよ」
「とか言いながらなに捨て犬保護のNPOに寄付しようとしてんのよ!」
男子生徒はスマホのネット銀行から多額の寄付を行おうとしていたようだ。
「抜けがけはあかん!」
「なあ。週末、みんなで海にゴミ拾いに行かないか?」
「人海戦術か。いいね」
「海をきれいにしよ〜!」
クラウメイトたちはボランティアを計画して大はしゃぎだ。ぼくも生徒会長として監視のために参加しないといけないだろうな。あまりゴミは拾わないでおこう。魂のレベルが100に到達するとまずい。やれやれ。窓の外を見るとアゲハ蝶が飛んでいた。




