表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

第2話:動き出す噂

お久しぶりです。龍河です。

第2話となります。ちゃんと水曜日に更新できてよかったです。


今回からこの物語の主人公が登場します。

いつもは3000文字と決めているのですが、少しオーバーしてしまいました・・・。

よろしくです。

 ――「ねぇ聞いた? 山田先輩、亡くなったらしいよ?」


 都内のとある大学。日の光が差し込むにぎやかな学生食堂。定食をつつきながら、女子大学生が二人、噂話に興じていた。


 ――仮に「A」と「B」としておこう。だって名前知らないし。

 二人の声が大きかったのか、それとも私が無意識に耳を傾けてしまったのか。理由は分からないが、その会話は妙に気になった。


 女子大生B「聞いた聞いた! グチャグチャの状態で見つかったって」


 女子大生A「そうそう。うちの大学の近くに警察署あるでしょ? あそこの横断歩道で見つかったらしいよ」


 女子大生B「え、マジで? 横断歩道ってことは……車に轢かれたとか?」


 女子大生A「いや、それがね……別の先輩に聞いたんだけど、山田先輩、ここ最近変なことしてたらしいの」


 女子大生B「変なこと?」

 

 ――そこで、私は耳を傾けるのをやめた。


 女子大生AとBの隣テーブルで、昨日買ったバイク雑誌を読むふりをしながら盗み聞きしていた私。

 犬飼詩音いぬかい しおんは、小さく息をつく。


 ――案外、どうでもいい話だったな。


 そう思いながら視線を雑誌へ戻し、プラチナブロンドのショートヘアをかき上げる。

 その拍子に、親友からもらった小さな青い宝石のピアスが、窓から差し込む日差しを受けてきらりと光った。


 その時、ポケットのスマートフォンが震える。画面を確認すると、「3限」というカレンダーアプリの通知。

 

 ――そういえば、取っていた気がする。


 必修でもないし。このままサボってもいいか――そんな考えが一瞬よぎる。だが、単位は取っておいて損はない。結局、予定通り出席することにした。

 私は雑誌を黒のリュックにしまい、肩に掛ける。昼食に食べ終えた焼き魚定食のトレイを持って、返却口へ向かった。


「ごちそうさまでした」


 食堂で働くパートのおば様に声をかけると、明るい返事が返ってくる。


「はーい、ありがとねぇ~」


「おいしかったです」


 軽く会釈して、私は食堂を後にした。


 ――――――――――――――――


「あら、凄いわね」


 詩音の皿を受け取ったパートのおば様は、思わず感心の声を漏らした。


 焼き魚は、骨だけが綺麗に残されている。身はほとんど残っていない。


「人は見た目によらないわね……」


 ぽつりと呟きながら、おば様は皿を流しへと運ぶ。


「今どきの若い子にしては、食事のマナーもしっかりしてるし……英才教育でも受けてたのかしら?」


 小さく首をかしげつつ、彼女はまた仕事へ戻っていった。

 

 

 ――――――――――――――――


 

「――であるして、この理論は……」


 大学の講義室。大きな黒板の前で、教授がマイク越しに、どこか独り言のような調子で聞き慣れない理論を語っている。


 周囲を見渡せば、堂々と眠っている者。教授の話など意にも介さず、スマホでショート動画をスワイプしている者。数人で固まって雑談に興じる者――挙げればきりがないほど、さまざまな人間がこの場に集まっていた。


 その中で私は、いつも講義室の中ほど、窓際の席に一人で座っている。なぜ1人なのか?


 ――理由は、この見た目だ。


 大学入学時、両親への反抗心もあって、黒髪を思い切ってプラチナブロンドに染め、髪も短く切った。もともと目つきも良いほうではないため、昔から同級生とは距離があった。

 でも、 ”あの子” は別だったな……。


 大学生活が始まって、数か月あまり。周囲ではそれぞれのグループができあがり、関係も固定化しつつある。


 ――出遅れたな、詩音。


 私は心の中で密かにつぶやいた。


 そんなことを思いながら、教授の独り言を聞いていると、ふと、数席後ろの会話が耳に引っかかる。仮に「C」と「D」とでもしておこう。――だって知らないし。


 女子大生C「ねえ、“山田”って先輩が亡くなったの知ってる?」


 女子大生D「ああ、あの人? ……ひどい状態で見つかったってやつでしょ」


 女子大生C「事故とかかな? 車に轢かれたとか」


 女子大生D「いや、それがさ……普通の事故じゃないっぽいんだよね」


 ――またその話か。昼にも食堂で聞いたな。だが聞く気はなかったのに、意識だけが勝手に後ろへ向く。


 女子大生D「……C、“名無し”って聞いたことない?」


 女子大生C「なにそれ?」


 女子大生D「SNSのDMにさ、いきなり来るらしいの。“調査してほしい”って」


 女子大生C「調査?」


 女子大生D「都市伝説とか、事件の真相とかの。解決したら――『願いが1つ叶うんだって』 」


 女子大生C「え、なにそれ……怪しすぎ」


 女子大生D「でしょ。でも受けた人、結構いるらしいの」


 一瞬、間が空いた。


 女子大生C「……じゃあ、受けなかったら?」


 女子大生D「別に何も起きない」


 女子大生C「え?」


 女子大生D「でも途中で投げた人とか、真相に辿り着けなかった人……、“変な死に方”してるらしいよ?」


 女子大生C「なにそれ? そんなの来ても無視すればいいじゃん」


 ――それは私も聞いていて思った。そもそも人間はリスクを嫌う生き物だ。いくら報酬が良くても、そんな死と隣合わせのギャンブル……。


 女子大生D「……来る人、選ばれてるらしいよ」


 女子大生C「選ばれる?」


 女子大生D「追い詰められてる人。逃げ場がない人、なにか強い願望がある人」


 少しだけ声が落ちる。


 女子大生D「山田先輩、借金やばかったらしいし。友達だけじゃなくて、危ないところからも借りて……もうどうにもならなかったって」


 女子大生C「……藁にも縋る思いでとか?」


 女子大生D「かもね、山田先輩さ、ここ数日ずっと何か調べてたらしいよ。探偵ごっこみたいなことしてたって」


 女子大生C「じゃあ、依頼を受けて……失敗した?」


 女子大生D「“ゲームオーバー”だったのかもね」


 ふと二人の会話に耳を傾けていると、いつの間にか講義は終わっていた。教授や周囲の学生たちは、次々と筆記用具やノートを片付け、教室を後にしていく。私も私物をリュックにしまい、退室する途中で考えていた。


 ――『名無し』の噂か……。


 話が人づてに広がるうち、内容はずいぶん奇想天外なものへと変わっている。もはや都市伝説に近い。私も以前はよく、“あの子”から聞かされたっけ……。

 少し興味が湧いた私は、先ほど話していた二人組を勇気を出して呼び止め、もう少し詳しく話を聞いてみることにした。


 ――――――――――――――――


「びっくりしたね、まさか犬飼さんに声かけられるなんてね!」


 講義室で雑談していた「C」が「D」にこやかに語り掛ける。


「本当、私も驚いちゃった、それにしても……」


 ――『犬飼さんって、王子様みたいだよね~♡♡』


 犬飼詩音――身長170cm、プラチナブロンドのショートヘア、細身、女性でありながら中性顔と立ち振る舞いで大学内では「王子様」と言われている。

 詩音に誰も声を掛けないのは、 ”怖いから” ではなく ”尊い” が強くて声を掛けることすら恐れ多いとのこと。


 ――だが、犬飼詩音はこのことを知る由はなかった……。



 ――――――――――――――――



 講義を終え、私は愛車のバイクで自宅へ帰ってきた。

 大学進学を機に、大嫌いだった田舎の実家を飛び出し、大学からバイクで通える場所に部屋を借りて暮らしている。


 アパートの階段を上り、部屋の鍵を開け、鞄を適当に放り投げ、そのままベッドに倒れ込んだ。飾り気のない静かな部屋。天井を見上げながら、大学で耳にした噂のことを思い返す。


「どんな願いでも叶う、か――もしそれが本当なら……」


 私なら――目を閉じ、”あの子”のことを思い浮かべる。


 ――「寂しいよ、”ゆう”」


 ぽつりと呟いたその言葉を最後に、私は夢の底へと沈んでいった。



 ――ピコン。


 

 私はスマホの通知音で、夢の世界から覚醒した。外はすでに暗く見慣れた道路には街灯の明かりが灯っていた。


「ふわぁ……。 寝ちゃったか……。なんの通知だ?」


 私は眠い目を擦りながら、スマホで通知を確認しようとした時――心臓がドクッと波打った。



 ――――「名無し」さんからDMが届きました。


いかがでしたでしょうか?

この物語の主人公「犬飼詩音」に届く『名無し』からのDM

果たして、詩音はどうするのか? お楽しみに。


次回はGW真っ盛りですね、5月6日(水)20時に公開予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ