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目隠し皇女は、許嫁の愛が重すぎることにまだ気づいていない。アナスタシア皇女伝  作者: 佐藤みさき
第一部 第三章

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いい日和だな

 ユリウスが(こう)(きゆう)(たい)(ざい)しはじめてから、三週間ほど経過した。

 相変わらず(かれ)の不安は強いようで、(わらわ)(かれ)(ひざ)(うえ)で過ごす時間も(いま)だ長い。


 ユリウスの顔色が()(しよう)のせいで分かりにくい件については、医務官・検査官の(しん)(さつ)の際には()(がお)を見せているとのことであったので、良しとした。

 (わらわ)もユリウスの経過が気になりはするものの、中には、(かれ)(わらわ)に伝えたくない情報もあろう。専門家に任せるべきだな。


(わらわ)がおらぬとき、まだ、寒さを感じるか?」


 (わらわ)の居室でユリウスの(ひざ)(うえ)(すわ)り、(かれ)の顔を右手の(こう)()でながら(たず)ねた。

 ユリウスは、ふるふると(ゆる)やかに首を左右に()って応じる。


()(ほう)検査官どのの提案で、()(りよく)を常に()いておくようにしています。それからは、寒くなくなりました」

「それはよかった。…それにしても、早く言ってくれればよかったのに」

「すみません…」


 ユリウスの寒さと、生者ばなれした低体温の原因は、(わらわ)の見立て通り『固有()(ほう)暴走の可能性が高い』と報告された。

 (わらわ)が社会的に(てい)(そう)を捨てた甲斐(かい)もあったというものだ。


 ならば、どこの(おう)(こう)貴族の(しん)(しつ)にでもある(いつ)(ぱん)(てき)()(りよく)供出パネルを使って、自分の()(りよく)をすっかり()いてしまえば、(しよう)(じよう)(おさ)えられる。

 代わりに(いつ)(さい)()(ほう)を使えなくなる不便はあるが、日常生活は()(ほう)なしでも十分に送れるはずだ。

 そもそも、人類の(ほとん)どは、自前の()(りよく)だけで()(ほう)を使えない。人々は(みな)(おう)(こう)貴族が供出した()(りよく)や、()(りよく)(せん)から得られた()(りよく)()(どう)()に流し、生活に利用している。


 ユリウスのように落ち着いた人物が、固有()(ほう)(おさ)えを効かせられていない、という点が()(ねん)ではある。だがそれも、まだ(かれ)の心が()えていないためだろう。


 (てい)(こく)の貴族、および()(りよく)量が多いと認められた平民は、みな一様に“固有()(ほう)暴走防止教育”を(ほどこ)されている。その中で、()(りよく)の操作を学び、心を落ち着ける手法を知り、暴走を防ぐ術を学ぶのだ。

 それでも完全に()(ほう)暴走を防ぐことは難しく、例年、暴走()()は大小さまざまに起こり続けている。人の心とは、本人すらも自由にならぬものであり、乱れた心は()(りよく)を乱し、()(ほう)暴走につながってしまうためだ。


 ユリウスの寒さなど、(みよう)に自罰的な()(ほう)暴走をしていることも気になる。

 ユリウスが暴走を(おさ)えられるようにするためにも、(わらわ)はいっそう、(かれ)()やすことに力を入れた方が良いだろう。


(ちか)(ごろ)(ねむ)れているのか?」

「ええ」

「本当か?」

(ねむ)れています。医務官どのに(かく)(にん)いただければ、同じ回答があるはずです」

「ふむ…。それもそうだな。そなたからすれば、代わる代わる同じ質問に答えさせていることになるか。すまぬ」

「いいえ。アナスタシア様のお(こころ)(づか)いに感謝しております」

「そうか」


 そんな話をしていると、部屋に(じゆう)(ぼく)が訪ねてきた。(わらわ)(たの)んでおいた食材が(とう)(ちやく)したと、()(じよ)のレオノーラが教えてくれる。


「よし。移動するぞ、ユリウス。ついて参れ」

「はっ。どちらに?」


 ユリウスの(うで)(ゆる)み、立ち上がった(わらわ)を見上げてユリウスが問いかける。


(ちゆう)(ぼう)だ!」


***


 (わらわ)たちが向かった先の“(ちゆう)(ぼう)”とは、(こう)(きゆう)の料理人たちが働く(ちゆう)(ぼう)ではなく、(わらわ)専用に造られた(ちゆう)(ぼう)である。

 (おう)(こう)貴族が(しゆ)()で使う想定のもので、実務(ちゆう)(ぼう)よりも内装が(ごう)(しや)で美しく、乳白色を基調とした、(みが)()げられた石材と整った(しつ)(くい)・高級木材の家具類から成る。


 使用人が使う実務(ちゆう)(ぼう)には、高貴な身分の者が立ち入ってはならない。品格を(そこ)ねるという理由だけでなく、使用人に(めい)(わく)がかかるからだ。

 ならば、と、(わらわ)(ため)の別(ちゆう)(ぼう)を造らせ、ここで料理の実験をすることにしたのである。


 使用(ひん)()が少ないため、日持ちしない調味料や食材はここに置かず、料理する際に都度仕入れさせたり、(こう)(きゆう)食料庫から(ゆう)(ずう)してもらったりしている。

 (わらわ)たちが(とう)(ちやく)する(ころ)には、(たの)んでおいた食材が作業台テーブルに並べられていた。


 料理とは、身分によらず身近な存在でありながら、科学実験のごとく(おく)(ぶか)い。同じ料理でも、調味料や素材、工程ひとつで(せん)()(ばん)(べつ)な変化を見せる。

 (わらわ)(しゆ)()のうち、(こう)(きゆう)(みな)も『色々な意味で()(かく)(てき)安全』だと()(のが)してくれる、貴重なものでもあった。


 (わらわ)が、近くの小型クローゼットからエプロンを取り出し、さっと身に(まと)う姿を見て、ユリウスは目を丸くした。


「アナスタシア様(おん)(みずか)ら、料理をなさるのですか?」

「うむ! まあ、見ておれ。(わらわ)の手さばきは、料理長のお(すみ)()きだ」


 まずは、(そで)をまくり、流しで両手をよく洗う。石けんをよく(あわ)()て、指の(すき)()までしっかりと。

 次に、イングリーズ王国風の(やわ)らか角パンの(かたまり)をまな板に()せ、(なみ)()のパン切り包丁で(うす)()りにしていく。グランツェルリヒ伝統の(かた)いパンは今回のレシピに向かないので、異国風パンを(あつか)う店から仕入れさせたものだ。


 パンに()()を入れるため、オーブンに火を入れて余熱する。

 オーブンを温めながら、次の食材を準備。レタスを1枚1枚に分けて水洗いし、トマトはヘタをとってよく洗う。


「そういえばユリウス、そなた、苦手な食べ物はあるか?」


 流しに目を向けたまま、ユリウスに話しかける。


「…キノコの食感が、少々苦手です」

(りよう)(かい)した」


 生食可能なツクリタケも、刻んで入れれば良いアクセントになるが、今回は除外しよう。


 ちらりと目を向けると、ユリウスは、()(じよ)マルグリットに(すす)められた丸()()に姿勢良く(こし)()け、調理に(はげ)(わらわ)をしげしげと見守っていた。


 洗ったレタスを(ほど)よい大きさに千切り、トマトは輪切りにする。タマネギは半月切りにして、水にさらしておく。

 野菜を切ったら、次は肉類だ。皮付きの(とり)(むね)(にく)(うす)く切り分けたら、フライパンで焼く。異国の調味料2つ、料理酒と砂糖をさっと混ぜ合わせて特製ソースを作り、肉の上に垂らしていく。

 ジュワワ、と音が鳴り、()()しそうな(にお)いが立ちこめた。


 このあたりでオーブンの余熱が終わり、()(どう)()のブザー音が(ひび)く。ミトンを装着して、オーブンの(とびら)を開き、中のトレイを取り出したら、先ほど(うす)()りしたパンを並べる。

 熱が()げてしまう前にパンを中に入れ、オーブンの(ふた)を閉めた。焼くのはほんの数分で、()()が少しつく程度にする。


 パンが焼けたら、取り出してよける。肉が焼けたら、それも取り出してよける。

 パンの第二(じん)、肉の第二(じん)も、それぞれ続けて焼いていく。


 すべて出そろったら、パンの上にバターと特製ソースを()りつけ、野菜と肉とを並べ置く。その上に、おなじくバターとソースを()った、別のパンを()せて(はさ)む。

 それを、対角線部分を空け、(みつ)(ろう)布で包む。()かした(みつ)(ろう)で全体を(ひた)した(みつ)(ろう)布は、(ひと)(はだ)の熱で変形可能な(こう)()物質となり、食器のように(あつか)えるのだ。


 対角線に沿って、生肉を切ったものとは別の包丁で、具材を(はさ)んだパン――ベレークテス・ブロートを切る。イングリーズ王国風に言うと、サンドイッチと呼ばれることもある料理だ。

 切り口は()(れい)に決まり、中の野菜と肉が()()しそうに(のぞ)いた。


 それを見て、(わらわ)は満足して(うなず)き、次のパンに取りかかる。練習の甲斐(かい)あって、(とり)(にく)野菜サンドはどれも()()しそうに仕上がった。

 次に、(たまご)フィリングや半熟(たまご)をメインに入れたサンドも作る。こちらも出来は上々で、特に半熟(たまご)のサンドは、ほどよく固まった(たまご)の黄身が断面に(のぞ)く、食欲をそそる一品に仕上がった。


「よし! できたぞ」


 できあがったベレークテス・ブロートを、ずらりと並べて作業台テーブルの大皿の上に置く。どれも具だくさんで、数も多く、なかなか(そう)(かん)である。


 昼を過ぎているので、腹がすいてきた。

 ユリウスや()(じよ)たちも同じであるようで、(かれ)らは、今にも(よだれ)を垂らしそうな顔をしている。


 (わらわ)は、エプロンを外しながら(かれ)らに告げた。


「今日は天気が良いし、外で食べよう。多めに作ったから、レオノーラ(たち)も後で食べて良い」

「やった! (ひめ)(さま)のベレークテス・ブロート、()()しいから大好きです」


 ()(じよ)ユリエッタが(うれ)しそうな声をあげる。

 そう言って(もら)えると、こちらも研究した甲斐(かい)があるというものだ。


「ええ、とても()()しそうです。…しかし何故(なぜ)、アナスタシア様(おん)(みずか)ら、ベレークテス・ブロートを?」


 ユリウスが近づいてきて、(わらわ)にそう(たず)ねる。


「昔、そなたに好きな食べ物を聞いたとき、『カトラリーを使わずに食べられるものが好き』だと言っていたのでな。

 ならばベレークテス・ブロートが良いだろうと思い、()()いレシピを追求した結果、(わらわ)(てい)()一番の作り手となっていたのだよ」


 初めのうちは、()()いレシピを探し当てるだけで、調理自体は料理人に任せるつもりであった。

 だが、(てい)()中のカッフェーやパン屋のレシピをかき集め、それぞれ一長一短のある()()を組み合わせて()(こう)(さく)()するために、(わらわ)専用の(ちゆう)(ぼう)が出来上がり、さらには(わらわ)自身が(こう)(きゆう)料理長よりも()()く作れるようになってしまったのである。


「わ、私の、ために……?」


 ユリウスの()(はく)(いろ)の目が(うる)んで波立つ。(わらわ)(うなず)いた。


「そうだとも」


 ユリウスは、(かん)(きわ)まった様子で顔を手で(おお)った。(のぞ)いた目から、ぽろりと(なみだ)が一筋おちる。


「…うれしい、です。ありがとうございます、アナスタシア様」

「ふふ。まだ礼を言うのは早いぞ。食べて()()かったら、そのときに礼を言ってくれ」

「いいえ、()()しいに決まっておりますっ…!」


 数々の試作を()(じゆう)らに食べさせ、「()()しい」と(そん)(たく)無しの評価を得たものなので、自信はある。

 なので、ユリウスの言葉に(うなず)いて応じた。


***


 作りたてのベレークテス・ブロートを(たく)(さん)と、紅茶を()めた保温(すい)(とう)とをバスケットに()め、(わらわ)たちは(こう)(きゆう)の庭に出た。

 目的地は建物のすぐ近く、(わらわ)のお気に入りの、草原に立つ木の下である。


 そこで、()(じよ)たちにレジャーシートを()いてもらい、ユリウスと二人で(とな)()って(こし)()ける。

 バスケットの(ふた)をあけると、ユリウスは、待ちきれないとばかりにベレークテス・ブロートをひとつ取り上げた。(みつ)(ろう)布で包んであるので、手を(よご)さずに持てる。


「いただきます」


 ユリウスが大きく口を開け、ベレークテス・ブロートにかぶりつく。もぐもぐと(ほお)()るうちに、(かれ)(うれ)しそうに目を細めた。


「とても()()しいです」

「そうか、そうか」


 料理というのは、中々いいものだ。存外に難しいところや(めん)(どう)もあるが、こうして喜んで食べてくれる相手を見ると、また(がん)()って作ろうと思える。

 (こう)(きゆう)の料理人たちも、こうした部分でやり()()を得ているのだろう。


 (わらわ)もサンドをひとつ取り出し、ぱくりと口にする。

 うむ、いつも通り()()い。今回も上出来である。


 ベレークテス・ブロートは、基本的にはパンで具材を(はさ)めば出来る料理だ。うんと()(まつ)で味気なく作ることもできるし、上級貴族をも(うな)らせる高級品に仕上げることもできる。

 “最高”を追求してみると、たかがベレークテス・ブロート、されどベレークテス・ブロート。中々に(おく)(ぶか)い料理であった。


「本当にありがとうございます、アナスタシア様」

「ふふ、よいよい。そなたの()(がお)が見られただけで、(わらわ)も手間をかけた甲斐(かい)がある」

「うれしいです、本当に…本当に」


 そのように何度も頭を下げつつも、ユリウスは夢中で食べ続けた。

 ひとつめがあっという間に(かれ)()(ぶくろ)に消え、もうひとつ、またひとつと次々に消え――――


 ――気付けば、バスケットは空になっていた。余らせるつもりで、ざっと十人前作って()()んだのだが。

 ()(じゆう)に差し入れる分が無くなってしまった。男子の()(ぶくろ)、おそるべし。


 背後でユリエッタが悲しんでいる気配を感じる。

 次回は、あらかじめ()けておくことにしよう。


 空のバスケットを見て、はた、と、ユリウスも気付いたようだった。


「す、すみません。食べ過ぎてしまいました…」

「い、いや。よいよ。(わらわ)も、若き男子の()(ぶくろ)の容量を見誤った」

「すみません……」

「なに、次はもっと多く作るさ」

「ふふっ…ええ、()()。また食べさせてくださいますか?」

(もち)(ろん)だとも」


 (わらわ)たちは、(たが)いに(ほほ)()みを()わし合った。

 (ちか)(ごろ)いつも(かれ)(ひざ)(うえ)(すわ)っているので、(となり)(すわ)っている今は、(かれ)の顔全体がよく見える。


 今の(かれ)()(がお)は、以前とどこか(ちが)う。(かげ)を感じるが、自然だ。どちらが心からの()みかといえば、今の()(がお)がそうと感じる。

 以前も別に、無理して笑っていたわけではないと思う。が、どことなくぎこちない印象であった。

 多分ユリウスも、()が友人ドラッヘンフェルト(こう)(しやく)(れい)(じよう)レオネッタのように、鏡の前で()()えのいい()(がお)を練習したのだろう。ちょうど、レオネッタの夜会用と身内用との()(がお)(ちが)いに近いものを感じる。


 (かれ)が作り笑いをしないで良いと思ってくれるようになったのは、いいことだ。

 (わらわ)たちは(ふう)()になるのだから、(たが)いに気を許せる方がよい。


「…紅茶のおかわりを飲むだろう? 紅茶(いつ)(ぱい)でこんなに(たく)(さん)、よく(のど)()まらせず()()めたものだ」

「はい、いただきます。…あ、私がお注ぎいたします」

「む。…わかった、(たの)む」


 (わらわ)が手にとりかけた(すい)(とう)を、ユリウスの手が取り上げる。

 (かれ)の手が(てい)(ねい)(すい)(とう)(かたむ)け、(わらわ)のティーカップ、ユリウスのティーカップと順に中身を注いだ。


 注がれたカップのソーサーを取り上げ、取っ手をつまんで、中身を飲む。

 ()(どう)()の保温(すい)(とう)に入っていた紅茶は、()()ての温度のまま熱い。


 (ここ)()の良い風が()いた。

 サアア、と小気味のよい音を立てて()(ばふ)を鳴らし、頭上の木の枝を(こす)れさせ、通り過ぎる。


「いい()(より)だな」

「ええ。そうでございますね」


 (わらわ)たちが(たが)いに見つめ合う。

 なんだか、むずがゆい空気になった。


「アナスタシア様……」


 ユリウスが目を細め、(わらわ)を見つめる。

 (かれ)()(ぼう)は相変わらずで、初めて出会った(ころ)から(かげ)るどころか(ます)(ます)(かがや)いて見えた。


「皇女殿(でん)()


 そのとき、聞き慣れた低い声が(ひび)いた。声の主を見れば、建物の側から、黒いシルエットが3つやってきている。

 中でも(ひと)(きわ)背が高く、病的に細いもの――(てい)(こく)(さい)(しよう)アーベントロート(きよう)がその中心にいて、他二人の(さい)(しよう)補佐官を率いていた。


「――アーベントロート、(さき)()れも無しに何用だ。よほど急ぎの用件らしいな」


 数秒前までここにあった(あま)い空気を(こわ)され、少し(とが)った声で(わらわ)(たず)ねた。

 後ろに(ひか)えていた()(じよ)たちに至っては、あからさまに(めい)(わく)そうに表情を(ゆが)め、(さい)(しよう)府の行政官らを見つめ返している。


「ええ、まあ。多少」


 (かれ)らがレジャーシートの近くまで辿(たど)()き、アーベントロートが(わらわ)を見下ろす。(かれ)が日光を(さえぎ)り、(わらわ)とユリウスの上に(かげ)を落とした。

 ()(つう)の臣下であれば、(すわ)っている(わらわ)を見て、(ひざ)を折るくらいはするものだが、そういう行動を()()と断じてやらないのが、()(やつ)のこまったところである。


 というか、この(じよう)(きよう)によく()()んで来られるな。(わらわ)なら、目下の相手でも(ため)()うぞ。

 まあ、()(やつ)相手に言っても仕方あるまい。


「多少、ね。手短に申せ」

「承知しました。では、手短に」


 (かれ)(あご)で補佐官たちに合図を送る。それを受けた補佐官たちは、それぞれ、なにか一枚の書類を(はさ)んだクリップボードと、インクと羽根ペンを()せた(ぼん)とを差し出してきた。

 なにやら、署名が必要な文書であるらしい。


「こちらに、皇女殿(でん)()とアーデルシュタイン(こう)との、おふたりの署名を頂きたく」

「うん? (わらわ)たち二人の、だと?」

「はい」


 (たん)(たん)と話すアーベントロートの声を受け、頭に()(もん)()()かべながらも、(わらわ)は書類をボードごと手に取った。


 (けつ)(こん)(けい)(やく)(しよ)

 (こう)(おつ)(はい)(ぐう)(しや)と認め、かくかくしかじか。(おつ)(こう)(はい)(ぐう)(しや)と認め、皇室の新たな一員としての義務を果たしつつ、かくかくしかじか。

 最下部には、二人分の(しよ)(めい)(らん)


「署名を頂けましたら、あとはこちらで(もろ)(もろ)の準備と手続きを済ませておきます」


「ふむ。なるほど……」


 (わらわ)は、書面から目を上げ、立ったままのアーベントロートを見つめ返した。


「やっぱり、イチから(てい)(ねい)に説明してもらえるか?」


 (わらわ)がそう言うと、アーベントロートは、さも(めん)(どう)なことを言われたかのように(まゆ)を寄せ、「はあ……」と首をかしげながら答えた。

☆ツッコミ不在――――!


特製ソースの組成は しょうゆ+みりん+酒+砂糖、つまり照り焼きのタレです。

ドイツパンはフランスパンよりも硬いそうで、塊で釘を打つショート動画まであります(?)

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