表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

転生先が農村でしたが、何だかんだで幸せです

転生先が農村でしたが、何だかんだで幸せです〜温泉が沸いた!?編〜

作者: OniOni

「リュートさーん、畑の奥から、なんか湧いてきてます!」


 早朝、畑でトマトに追肥していると、ミーナが息を切らして駆けてきた。


「湧いてきたって、何が?」


「……お湯、です!」


「お湯?」


 急いで畑の端に行くと、小さな水たまりができていた。そこから、ぽこぽこと湯気が立っている。


「……まさか、温泉?」


『あちぃよ! 地中熱で根っこが茹でられる〜!』


 近くのニンジンが苦情を叫んでいた。どうやら、畑の下に温泉が湧いたらしい。



 村の長老に相談すると、彼は目を輝かせた。


「昔、このあたりに“熱水の神”がいたという伝説がある。温泉が本当に湧いたのなら、村の運命が変わるぞ!」


「農業じゃなくて、観光ですか?」


「両立すればよいではないか。おぬし、植物と話せるのだろう。ならば温泉の“害”が作物に及ばぬよう調整できるはずじゃ」


「……なるほど」


 畑と温泉。まさか交わる日が来るとは。



 俺はスキルを使って地下の植物たちの声を拾い、温泉のルートを探った。地中に広がる岩盤の隙間、その熱の流れ。


『あー、ここらは熱が強すぎて根が焼けるよ』


『ちょっと南にずらしてくれたら快適!』


 そんな声をもとに、温泉の湧出口を数メートルずらし、畑への影響を最小限にした。


 さらに、余ったお湯をためる湯船を作り、周囲を石で囲った。


「見てくださいリュートさん! 湯気がふわふわしてて……気持ちよさそう!」


「実際、源泉かけ流し。ミネラルも豊富。葉っぱが言ってた」


『この湯、マジでいい成分入ってる。人間も入れ』


 お前らほんと多才だな。



 数日後、村の子どもからお年寄りまでが、俺の作った“露天風呂”に入っていた。皆、顔をほころばせている。


「リュートくん、腰が軽くなったわ!」


「孫の肌がつるつるに!」


 なんか知らんが、すごい評判になった。


 そしてその日。ミーナがぽつりと声をかけてきた。


「リュートさんって、ほんと、すごい人ですね」


「いやいや、俺は植物と喋ってるだけで……」


「それが、すごいんですよ。自然の声を聞けるなんて、神様みたいです」


「俺はただの農夫だよ。お湯掘っただけだし」


「……じゃあ、その“お湯農夫”さん、今度一緒に温泉入りませんか?」


 顔が真っ赤になるミーナ。

 俺の顔も、多分、トマトより赤かったと思う。



 夜。月明かりの下、俺とミーナは温泉に浸かっていた。ちゃんと男女別。……のはずだった。


「リュートさーん、こっちのお湯、ぬるいですよー!」


「そっちは調整失敗してるから……って、ミーナ!? そっち女子側だろ!」


「いま、誰もいないですし!」


 お湯の湯気で顔は見えない。だが、声だけはよく聞こえる。


「こうしてると、思うんです。リュートさんが来てくれて、本当に良かったなって」


「俺もだよ。ミーナが、ここにいてくれてよかったって」


 しばらく、言葉もなく、ただ湯の音だけが響いた。


 植物たちも、この時間だけは静かにしてくれていた。



 それからというもの、村には他の村からも人が訪れるようになった。


 「野菜がおいしい!」

 「温泉が最高!」

 「野菜入りの湯がすごく効く!」(※俺は止めたが、ハーブ湯が定着してしまった)


 結果的に、村は温泉+農業の癒やしの村として知られるようになった。


『温泉で育った俺たち、まじで最強な気がする』


『つるつるトマト! 皮までうまい!』


 うちの野菜たちも、なんだか誇らしげだ。


 そして今日も、俺は畑を耕し、湯を調整し、植物たちとしゃべりながら、生きている。


 異世界だろうがなんだろうが――


 ここが、俺の居場所だ。


次回予告

遂に畑から魔物か?

次回は今日収穫予定!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ