90話 冬休み
毎日投稿も残り二日になりました。
残念ながら目標としていた日間ランキング入りは出来ませんでしたが、作品を進めることが出来て良かったです。当作品に関しては少なくとも100話に行くまでは再び月一投稿のペースでゆったりと進めていくつもりですので、エタる事のないよう頑張ります。
今日は冬休み前の最終日である。
沢山の課題が提出されるものの、授業内容は軽く先生も冬休み前だからと早めに授業を切り上げて自由時間にしたりする。
学校が終わる時間、今か今かと終了を待つ生徒達の視線に耐えかねたのか、先生がチラリと時計を見る。
生徒達に緊張が走ったその時。
「じゃあ、今日はここまで」
「「っしゃああああ!!!」」
陽気な男子連中がガッツポーズを振り上げ、生徒全員が即座に張り詰めた空気を解く。
先生はささっと教室を出て、残った生徒の俺たちはこの後どこ行くとか冬休みどうするとかそんなことを話し始めた。
しかし俺はというと、ポツンと一人である。
なんせ最近はクラスでも扱いにくい存在になっていた。
まず一つとしてクラスに敵対グループがいる、という所。言わずもがな軽井達である。
しかし俺自身普通に過ごしている、というのとクラスに美香がいるお陰で孤立していない。なのでハブられるような空気感ではない。
のだが……。
「おーっし、みんなでどこか行こうぜー!」
多分、誘われないんだろうなぁ……。
今の男子の中心人物である尾野はスポーツマン系で軽井達と仲が良い。
それと女子の中心人物である佐川と付き合っているので、大体二人でクラスの方針を決めることが多く、まあ俺が誘われる道理はなかった。
……帰ろ。
美香は女子の友達らに付き合うだろうし、これは帰る一択だ。
俺は教室を出て外履きを取る。
それからそのまま帰ろうとした時、背後から自分を呼ぶ声に気づいた。
「おい、相沢。お前帰るとこかぁ?」
「そうだけど……何かようか? 武藤」
相変わらずガラの悪いやつだ。
制服は着崩してるし髪は金髪に染めていて派手で、耳にピアスも開けている。
その癖ガタイが良くて背も高く、顔も良いもんだから似合っていた。
「帰るとこならよォ、異空探索いこうぜ」
「は? なんで」
「小鳥遊のやつがうるせぇんだわ。だから、オレが直々に実力を確かめてやろうと思ってよ。暇ぁ、してんだろ?」
拒否権はない。
そう言わんばかりの武藤の態度に、俺は呆れて深くため息をついた。
「……分かった。行くよ」
「何だかんだ付いてきやがるよなァ、お前」
「うるせぇ」
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「あいつ人のことコキ使いやがって……」
ヘロヘロになって家に帰ってきた俺は、すぐに風呂場に駆け込んでシャワーを浴びてから、ベッドにダイブする。
まさか三十五層を探索させられるとは……。
こっちは普段三十層とかだぞ。
まあしかし、意外と悪いやつではないのかもしれない、と最近思い始めている。
ちょっかいを掛けられるのはウザいが、結局は俺の面倒を見てくれているし、聞くところによると俺と小鳥遊との仲介に入ってくれてたりもしているそうだ。
というか、まだアンナのこと諦めてなかったのか、小鳥遊さん……。
「ご飯、作るか……」
時間をチラ見して、俺はアンナを部屋で待機させつつリビングに向かった。
食材を取り出して手早く料理する。
もちろん三人分だ。今日は……トンカツにでもするか。
そう考えつつご飯が炊き上がる時間を姉さんの帰宅時間に合わせながら、トンカツを揚げていく。
十数分後。
「ただいまー」
「あ、おかえり姉さん」
「うん」
俺と姉さんの会話は、ここ最近そっけない。
気まずさからもあるが、俺が意図的に避けているというのもあった。
姉さんが帰る時間にはもうご飯だけ置いて部屋に戻っている、ということが多かったからだろうか。アンナと俺と共に、食卓を囲む姉さんの顔を見ながら、俺は安心を覚える。
「あら、颯真。嬉しそうね」
「冬休みだもんねー」
そんな様子に気づかれ、アンナと姉さんに茶化される。
「まあそれもあるけど……」
そういえば、今日は十二月二十三日である。
明日がクリスマスイブ、明後日がクリスマスな訳だが、俺は美香との予定を入れている。
「そういえば、明日は出かけるよ」
「うん。颯真、使役師の方はどう?」
「上手くやってるよ。リーダーがすごく良い人でさ。あ、こないだ給料が入ったからさ、いくらか渡すよ」
「だめ。颯真の好きに使いなさい」
「姉さんを楽にさせるのが、俺のやりたいことなんだけど」
「……姉孝行な弟を持つと大変だなぁ」
どうやら本当に受け取るつもりがないらしい。
まあ最近はあまり無理もしていないようだし、こうして早めの時間にも帰ってきてくれてるので良いか。
「でもやっぱり、姉さんには受け取って欲しいな。せめて迷惑をかけた分だけでも。ほら、ゾンビの使徒とか持ち出しちゃったじゃん? あれ、実はもう手元になくて。弁償しなきゃだし」
「ゾンビの使徒……? 回復薬とかは分かるけど、そんなの置いてたっけ」
「覚えてない? 片腕がないやつなんだけど」
「んー、なかったと思うんだけどね。でもどれが処分出来てどれが処分できなかったかあんまり覚えてないし。それに、勝手に持ち出したのはダメだけど返す必要は全然ないから」
「でも……」
頑固な人だと呆れつつも、本当に受け取る気がなさそうなので俺も一旦引く。
まあ渡す方法なんていくらでもあるんだし、こっそり少しずつ渡していくとしよう。
「……やっぱり姉弟ね貴方達」
黙々と食べていたアンナがそう呟いたのを、俺は聞かなかったことにした。
【ご報告】
正直、まだ次作の予定は全然出来てません。
書籍化への進展がないまま一年、また一年と過ぎました。年齢的にも学生時代の終わりが近づき、筆を取り続けられるタイムリミットが迫っています。勿論大人になっても夢は諦めせんが、時間をなかなか作れなくなると思います。
こんな未熟な作家ですが、応援してくれるよと言う方はこちらの投稿に合わせて告知しますので、是非私の次作も読んでいただけると誠に助かります。
以上です。毎日投稿残り2話。良いところで区切れたらな、と思っています。




