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82話 休日

「颯真、少し出かけるわ」

「良いけど……どこへ行くつもりだ?」

「あら、少し買い物に行くだけよ」


 九等級のライセンスを受け取った後日、俺は放課後に家に帰ってくつろいでいるとアンナにそう告げられた。


 アンナが単独で外へ出るのは、これが初めてではない。

 

 俺が財布とスマホを買い与えて以来、すっかり地上での生活が身についたのか様々な場所へ向かっていた。


 それから美香とも色々と仲良くやっているらしく、俺は最近アンナの成長を複雑な心境で見ていた。


 部屋を出たアンナを見送り、一人になった俺は気にせずベッドに寝転がろうとしてーー気づく。


 あ、そういや今一人じゃん。


「最近は家に帰るとアンナが聖遺書から出たがってずっと一緒にいたもんな……」


 せっかくだから一人の時間を満喫しよう。

 そう考えて、俺はダラーっとベッドに寝転がる。


 ……あれ、する事ないな。


 俺はスマホを手に取り、口座を確認する。


 並ぶのは六桁の数字。


 使役師としての稼ぎは調子が良く、あの選定式で一応賞金も入ったし、最近では天義組に所属したことで給料も貰えている。


 そんな訳で最近リリィ達を昇華させたにも関わらず、良い具合に懐が暖かかった。


「はあ……」


 何をするか。

 一先ず、出かけるのは無しである。


 今週末には再び天義組で異空に向かうし、体力を考えるとゆっくり家で休みたい。


 となると……。


||


『珍しいね、颯真の方からかけてくるの』

「そういえばそうだね」


 家の中、椅子に座って美香と通話を始める。

 彼女に連絡を入れると、通話をしようと言ってくれたので始めたのである。

 

『ていうか、颯真ってゲームとかあんまりしないと思ってた』

「あー、まあ。普段はしないんだけど。……今日は美香と遊びたいから」

『……うん。嬉しい』


 アンナとの相談の末、俺は何を改善するかと考えて美香との時間を増やそうと決めた。

 思えば、使役師の活動ばかりで学校以外では全く話していなかった。


 とにかく、色々とコミュニケーションを取る必要がある。


 そういうわけで、ゲームをしながら会話を取ろうと考えた訳だ。


『あ、颯真そこ。アイテムあるよ』

「あ、本当だ。ありがとう」


 ゲーム機を触るのはかなり久しぶりである。

 マルチプレイをしながら、俺たちはゲームを進めていた。


『この後ジム戦あるからそこ倒したら一回戦わない?』

「うん、いいよ」


 全然触ってなかったから楽しめるか不安だったが、普通に楽しい。


 俺は美香と会話を交わしながら、時に信じられないミスに笑い、時に一撃必殺を当てられて絶叫をあげたりと満喫する。


「あのさ、美香」

『何?』

「ごめん俺、多分まだ美香のことがあんまり分かってないんだと思う。けど、好きなのは本当なんだ。すれ違ってばかりだけど、信じて欲しい」

『うん……分かった』

 

 少ししんみりした空気になる。

 それでもゲームの手は止めずに、沈黙を抑える。


『ねえ颯真』

「うん」

『そろそろクリスマスでしょ? 一緒に遊びにいこうよ』

「あ……勿論! 予定、開けとくよ」

『……良かった』


 それからお互いの声に楽しさが戻る。

 ゲームにも再び集中し、どんどん進めていった。


||


「スピネル様、そろそろお客が来るんでしょう? いつまで遊んでるんですか」

「待ってヨミ、もう少しだけ頼むよー。今いいとこなんだ、うわクソこいつ交代読みしやがって……!!」


 ヨミはそんな主人の様子に呆れながら、ゲームを取り上げようと手を伸ばす。

 どうやらオンライン対戦をやっているようだった。


「あー!! ちょっ、今ランクマッチ中で……」

 

 ゲーム機を奪われたスピネルは立ち上がって抗議する。

 しかしヨミは意に介さず答えた。


「でも、たった今決着がついたみたいですよ。負けですね」

「ノーー!!!! 同速勝負だろおお!! 何やってんだお前ええええぇぇ!!」


 大袈裟にも膝から崩れ落ちるスピネルに、ヨミは再度呆れる。

 しかしその二人の部屋に迫る足音を聞き、スピネルは素早く立ち上がった。


「スピネル様。来客ですわ」

「そうかい。ご苦労。私が対応するよ」


 教祖の娘である詩花が部屋に駆け込み、素早く要件を伝える。

 その詩花の後ろにいる少女は静かに佇んでいた。


「君も来るといい、死癡。来客は君も知っている彼女だよ」

「……はい」


 スピネル、死癡、ヨミは揃って歩き出す。

 屋敷の門の前に向い、通された来客を出迎えた。


「ようこそ、アンナ。招待状を受けてくれたみたいで、嬉しいよ」

「……会えて光栄ね、スピネル様」


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