表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/95

77話 交渉

毎日投稿を復帰後、何か目標を立てようと思い立ちました。

なので日間ランキング一位。大きな夢ですが、これを目標に立てようと思います。


応援して頂いている皆様、これから応援してくださる皆様、何卒本作をよろしくお願いします。



「茉白ー!」

「ああ、園子。用意出来てるかしら」


 友人である清賀園子の声を聞き、花咲 茉白は振り返る。

 それは放課後を告げるチャイムが鳴ったすぐ後のことだった。


 園子の側には見知った他の顔触れの面々が並んでいる。

 三人は茉白と園子の取り巻きだった。


「今日どこ行くんだっけ」


 園子の問いかけに、茉白が答える。


「ス○バよ」

「えー、良いけどあんまりお金なーい」

「使いすぎ。貴方だけ特別に飲み物は買ってあげるから感謝して頂戴」


 園子はありがとー、喜んだ。

 茉白は呆れながらも、特に気にしない。


「あ、あの……花咲さん私たちも最近あんまりお金なくて……」

「そう。なら来ないで良いわよ?」

「い、いえ……行きます」


 取り巻きの声は茉白にとって雑音に近い。多くはつまらない話ばかりで、覚える価値のないものだ。


 事実、先ほどした会話を茉白は既に記憶から消している。


 故に彼女に罪悪感というものはない。


 花咲茉白は無知である。彼女は自身の取り巻き達が茉白のグループを抜けた場合、孤立してしまうことを知らない。


「なら良いわね」


 そう言って歩き始めようとする彼女に、取り巻きの一人が声をあげる。


「あ、あの! 美乃がまだ来てなくて……」

「ああ。あの子ならもう来ないわよ」

「……え」

「私の陰口を言ってたわ。で、望み通り友達の縁を切ってあげた。不満ならさっさと消えれば良いのに、あの子も馬鹿ね」


 さらっと告げる茉白に、声をあげた取り巻きの一人が声を詰まらせる。


 彼女にとって、 美乃は取り巻きの中で一番仲の良い子だった。そして、一緒に花咲の陰口を言い合って乗り切ってきた仲だった。


「貴方達も私のお友達でいたいなら、敬意と忠誠を持つことね。話は以上かしら」

「……あ………っ……はい」


 絞り出した声が、震えてないか。

 最早その取り巻きは、親友だった美乃の事など悲しむ余裕すらなかった。


||



 天義組の初出動も終え数日が経過した頃。

 俺は武藤との約束で使役師組合に呼ばれていた。


「久しぶりですね」 


 先に会話を始められ、椅子に座る俺は少し身を固める。

 対面の小鳥遊結奈は悠然と微笑んでいた。


「はい、お久しぶりです」

「今日は敬語なんですね。大会みたいに普段の口調でも構いませんよ?」

「……今日は畏まった話だそうですので」

「そうですか。で、貴方は天義組に入ったのでしたか」


 少し会話をしてから、彼女は本題に入ってくる。

 俺は答えに悩むこともなく、正直に答える。 


「ええ、入りました」

「ウチに移るつもりは?」

「お話は嬉しいのですが。契約させて頂いたばかりですし、不義理な真似は出来ません」

「……そうですか」


 どうやら、本当に俺を夜廻組に入れたいらしい。

 少し残念そうな顔をする彼女に俺は申し訳なくなった。


「なら、あの水光姫を買い取らせてくれませんか」

「っ……」


 単刀直入に告げられた言葉に、俺は息を呑む。

 予想はしていた。それでも、彼女に目を付けられるとは思っていなかった。


「私はあの使徒が欲しいと思いました」

「何故……彼女を」

「特別なものを感じました。そして私は自分の勘を信頼しています」


 俺はぎゅっと拳を握る。

 きっと王印がバレている訳ではないのだろう。

 沈黙の後、決意を新たにした。


「……売るつもりはありませんよ」

「一千万でもですか?」

「いっせ……値段の問題ではなく」


 金額に思わず動揺が漏れる。

 しかし平静を装って俺は揺れ動かない。

 

 そんな俺の様子を見てか、小鳥遊は手口を変える。


「そうですか……なら、やはり夜廻組に入りませんか?」

「それもちょっと。そもそお欲しいのは俺の使徒であって、俺はいりませんよね?」

「いえいえ。私は貴方の事を気に入っていますから」

「……はあ」


 俺は少し疑いの目を持って彼女を見る。何か目に留まるような才能でも見せていただろうか。

 しかしやはり夜廻組に入るのは状況的に不義理だろう。

 

「考えは変わりませんか」

「はい」


 交渉は決裂する。

 そもそも受ける気のなかった提案だ。

 

「……残念です。では、せっかくご足労頂いたのですからご飯でも奢りましょう」

「え? いえ、それは……」

「私が殿方と二人きりで話す事はそうそうないのです。勇気を出したのですが……」


 少し悲しそうに俯く小鳥遊。

 一見、コロッと騙されてしまいそうになる。

 けれど……嘘くさい。


「そんなにアンナが欲しいんですか?」

「水光姫の事ですか? いえいえ、その話は先ほど決裂しましたから……」

「誤魔化さなくとも。流石に分かりますよ」


 俺の言葉に、小鳥遊は苦笑した。

 それから俺へと向き直って。


「バレてましたか。……ええ、そうです。私はあの子が欲しい。あれはーー大器ですよ」

「自覚しています」


 アンナの才能はずっと感じていた。

 それこそきっと、初めて出会った時から。

 この子が欲しいと切望してしまっていたから。

 

「どうでしょう。もう少し、お話いたしませんか? ご飯代に加えて有益な情報がセットで付いてきますよ」

「……良い交渉材料ですね」

 

 俺は美香に許可を貰っておこうと考えながら。

 静かに頷いた。



ブクマ高評価よろしくお願いします。m(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ