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52話 宮下

昨日投稿するのを忘れてました。

ごめんなさい!




 ……とうとうここまで辿り着いたか、と思う。


 次でベスト八だ。

 

 目標としている京都対異空学校への特待生を勝ち取るには優勝は必須となるし、優勝の後の本選選定式でも良い結果を残さないといけないだろう。


 だから優勝は通過点にしなくてはならない。


 

 通過点にしなければ。


 京都対異空学校に入れなければ。



 俺はきっと、自分を殺すだろう。

 だから、絶対に。


 勝たないと……。



||



『さあ、いよいよやって参りました。第三十二回使役師選定式二日目、準々決勝の開幕です!』


 待機室に控えていた俺は、画面に表示されたスケジュール表と対戦相手を見て小さく肩を下ろした。


 行われる四戦の内、最後の試合なので少々時間がある。

 適当に自販機で飲み物でも買っておこう。


 そう思い、俺は待機室から出て自販機で飲料水を買った。


 腹に溜まらない程度に冷たい水をちびちびと飲む。

 それから腹は冷えてないな、と確認してから俺は水を鞄の中に入れた。


 待機室にでも戻るか、と考える。

 足を進めようとして、しかし足は止まった。


「あぁ……控え室か」


 目の前の大部屋と待機室の何が違うのか、という話だが控え室には擬似異空室シミュレーションルームが展開されている。


 使徒との作戦打合せ場所として作られているのだが、かなり混み合うので俺みたいな人は事前に打ち合わせを済ませてしまっている人も多く、寄り付かない。



 しかし今の時間なら空いているだろう。



 俺はやれることは全部やるべきだと考えながら控室へと入った。



 ドアを開いた瞬間に分かるほど、そこは広い部屋だった。


「ーー」


 瞬間、話し声が聞こえた。

 思わず、俺は硬直する。


 相手の選択肢がいくつか浮かぶ。

 その中で最も会いたくないのは……間違いなく、小鳥遊 結奈だった。


 向こうの話し声は途切れていた。

 恐らく向こうも入って来たこちらを見ているのだろう。



 素直に関わりたくない、と思う。


 作戦会議を聞いていたのか、という疑いを掛けられそうだし、何よりもし相手が小鳥遊 結奈であるなら、緊張しない自信がない。



 俺は気づいていないふりをしながら、俺の使徒達を呼び出した。

 

 リリィ、アンナ、メイ、フェリス、シャナがそれぞれ出てくる。


 このまま距離を取ろう、と思って離れ始める。


 途端、呼び止められた。


「待って。なんだ、あんた小鳥遊じゃないんだ」


 女の声だった。

 その言葉に俺たちは振り返る。


 相手は確か、次の対戦相手である宮下とかいう女子だ。



 一先ず小鳥遊ではないようだ。



 少しばかり緊張の糸が切れたように思う。



「小鳥遊だと問題でもあったのか?」


 あえて少し挑発するように投げかける。


「ええ、まあね。あの子とはアカデミー時代からそこそこ因縁もあるし」

「アカデミー時代?」

「私も中学二年で脱落したけど、元アカデミー生なの。だから驚いたわ。あの天才がアカデミーを辞めるって聞いた時は」


 それはそうだ。

 俺もそのニュースを聞いた時は、相当な衝撃だった。


 何かしらの理由が背景にあるのだろうが、小鳥遊 結奈がその口を開くことはないだろう。


「まあ小鳥遊の顔を見なくてよかったわ。みんな、行きましょう」


 そう言って彼女は自身の使徒達を引き連れて離れていく。


 その際、チラリと相手の使徒達を盗み見ておいた。特徴としては悪魔系の使徒が多いのと、全員男の使徒だという事くらいだろうか。


 少し意図的なものを感じる。


 まあうちも意図してないとはいえ、全員女の子の使徒だから人のことをいう筋合いはないのだが。


「……俺たちも作戦会議を始めるか」

「そうですね……」


 一悶着あったが、俺たちは改めて気を取り直し、作戦を練り始めたのだった。


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