40話 準備
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帰ってくると、そこは前と同じ部屋だった。
俺の端末に表示されたスコアは、五万八千。
上位25%圏内と表示されているので、一旦安心である。
(第二次予選は一時間後……か)
周りを見渡すと、一人落ち込んでいる者や友達などに見せあって残念がっている人が多い。
すると態々ここで喜ぼうと思う人も少なくなるのか、通過者は周りを見ても全く分からなかった。
しばらくして、第一次予選が終わった。
スコア自体は第一次予選に落ちたとしても記録に残るので、最低限参加費が無駄にならないようにしているのは運営の配慮だ。
恐らく今回の足切りで、非正規ライセンス(四等級以下)の使役師や、記念参加的な使役師の多くが消えた。
ゾロゾロと帰っていく参加者達を横目に、俺は第二次予選を待つ。
第二次予選では対人戦の能力が問われる。
八人一組で戦いあって、勝ち抜けるのは二人。こちらも突破数は二十五%だ。
誰とどのグループに入るかは完全にランダムなので、ここは運に祈るしかない。
ちなみに第三次予選、もとい最終予選は、バトルロワイヤル形式となっている。四人の使役師が一箇所のフィールドに集められ、勝ち残った一人が次に進出する。
それから県別本戦だ。
本戦は別日に開催され、六十四人制のトーナメント式となる。負けたら即終わり。テレビクルーなどが注目するようになるのも、本戦からだ。
選定式、とは文字通りその県及び全国で一番優れた使役師を選定する場である。
様々な能力が問われるからこそ、与えられるその称号に重みが出るわけだ。
『藍玉の指揮者』か、『蒼玉の指揮者』か。
どちらも重要視されるが、その世代一番の称号である『蒼玉の指揮者』は別格だ。
対異空高校への入学しかり、組織への所属しかり、とにかく使役師社会は実績が重視される。第一次予選で落ちた、第二次予選で落ちた。
一つでも実績をよく見られる為には、勝ち続けるほかない。
俺の目的は本戦まで進み、優勝を勝ち取ることだが、上に上がれば上がるほど相手が強くなる。
自分の実力を過信している訳ではないが、周りのレベルを見る限り優勝確率が低いとも思わない。
そのくらいの努力は積み上げて来たと思うし、周りの実力と比べた時の自分の実力も知っているつもりだ。
今の所、しっかりと手札を温存しながら戦えているが、場面場面で隠しておきたかった手札を切ることになる事もあるだろう。
選抜式前に切り札として取っておく物の優先順位を付けたが、一番隠しておきたいのは初見殺しとして強い『感電』とフェリスの『認識不可』である。
……というか、『認識不可』は練度が足りなく、正直実戦で使えるレベルにない。味方との連携がまだまだだし、フェリス一人なら問題ないが、俺が上手く使い所を命じないと事故るだろう。
「切れる手札も少ないなぁ……」
持っている手札は多いし、使える手段は多いのだが、大技な為使い所が難しかったりとまだ完璧とは言えない。準備不足が顕著に出た形だ。
リリィの血を操るスキルなんかは特にそうで、一撃は強力だ。が、自身の体力を削る為、持久戦に持ち込まれると使いづらい。
あまり積極的には使いたくない。
「何より、情報がバレるのは避けるべき……か」
情報漏洩が基本的に禁止されているが、本戦に進めばその限りではない。
本戦では一般観客も来るため、情報は筒抜けだ。
予選の内になるべく隠しておくべき手札を調べておくべきだろう。
「次も気を引き締めないとな」
スマホを開き、通知を確認する。
美香と書かれたトーク画面に通知が来ているのを確認し、開いた。
『応援してるよ〜。頑張ってね!』
そんな健気なメッセージに、頬が緩んだ。
場内にアナウンスが流れる。
どうやら第二次予選の準備が終了したらしい。そろそろ行かなくては。
俺はスマホの電源を閉じてから列に並んだ。
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「はい、お父様」
少女がスマホを耳に当てながら、個室で相槌を打っていた。
彼女の電話先は自身の父親であり、基本放任主義の親であるとはいえ、この選抜式で力を示すことが重要であるこは理解しているらしく、調子の良さを問われた。
少女は内心面倒と思いつつも、初戦を勝ったことを報告し終えたところだ。
少女が電話を切り、スマホを下ろす。
「お父様は相変わらずね」
個室にある鏡を覗き込み、彼女は自身の身なりを確認した。
もうそろそろ第二次予選に呼ばれそうなタイミングである為、次の試合の準備に向けてだろう。
鏡には綺麗な黒髪がよく似合っている可憐な少女がいた。綺麗に整えられた髪は、ちょうどオシャレを本格的に学び始めるような彼女の年齢にあっていた。
十五歳の彼女の容姿はあどけなさが残っていながらも、強気で自信を持った表情が彼女の育ちを示している。
しかし、彼女は美しく生まれた自分の容姿を好みながらも、自身の親に似てしまったことについては不安を持っていた。
……有名人の親を持つと言うのは、酷なものなのである。
「そろそろかしら……」
彼女はそう呟くと、個室から去っていった。
彼女のスマホに表示されていたスコアは七万六千。
二位が五万九千ほどであったことから、その異質さが分かるだろう。
小鳥遊 結奈。
かつて日本中を熱狂させた天才であり『英雄』の称号をも手にした小鳥遊 翔の娘。そして同時に小鳥遊 優彩の妹でもある彼女は、静かに待機室を後にしたのだった。
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