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町長に会いに行く。

これで当分屋根のあるところで安らかに眠れるメドが立った。

「よし、俺この小屋で寝るから、シェルミは帰って自分の家で寝てくれ」

「おー…なんだかホッとしたと同時に、なんだか激しくここに泊まってみたい気がしてます!」

止めてくれ。

意外とエロいから一緒の空間で寝泊まりしたくない。

「俺1人じゃないと眠れなくて…昼に起きればいいんだよな?」

「そんな繊細な⁈はい、陽が南中したら起こしにきますね、では、おやすみなさい。」

シェルミは意外と物分かりよく山道を降りて戻っていく、自分の家に。

ふと振り返り、

「居なくなっちゃダメですよ?なんだか、まだ色々話したりないことあるんですから。」

そんな事言われていなくなれないだろう。そもそも、

「町長に会わせてくれないと困るんだよなあ」

「そうでした。じゃあまた!」

そう言ってシェルミは自分の家に戻っていった。


うむ。

冬でもなし、便利袋から適当な布団を取り出して、脱衣所の床に敷いて寝る。

あと枕ね。枕すごく大事。

違う世界に来て気が張ってたのか、正午まで爆睡だった。



まあ正午に起きようと思ったら起きられる、デジタル目覚まし時計がなくても。

脱衣小屋から外に出ると、すっかり快晴。

シェルミの家まで50メル山道を下っていく。ドアをノックすると、

「はいー、開いてますよー」

ゴブリンだったらどうするんだ…と思いながら、不自然に風が髪を揺らすのを感じる。勿論シルフが見張ってるのだ、脱衣小屋を出た瞬間から。

「お邪魔します、おはようございます」

ドアを開けると、既に身支度を済ませたらしいシェルミが簡単に朝食を用意してくれていた、2人分。

「おはようございます〜、パンしかないですけど、お腹減ったから、簡単に食べて、お昼を町の食堂で食べましょうか」

シェルミの話によると、町には2階に宿屋を兼ねた食堂が一軒だけあるとのこと。

まあ、旅人も来ないのに、宿屋とか食堂何軒もないのは当然なのかな。


2人で5キロほど、晴天の下、軽い登り道をプラプラと歩いていく。左手に100メルほど畑が続いて、その向こうに母屋が見える。

「あれはデルフィルさん、農家ですね。右手の広い麦畑もデルフィルさんちのです」

左手は手狭だが、右手はなだらかな斜面が見渡す限り続いている。遠くの方にも家が見える。

「あの辺は酪農してますね、酪農わかります?牛とか、鶏とかを飼って、草原に放してるんです」

しばらく農家や酪農家が続くと、左手にボロい建物が見えてくるが、これは…

「教会…?」

「そうですね、教会なんですけど、長らく司祭さんいないんですよー、あはは。なので、みんな困ってるんですよねー」

「その隣のボロいのは?」

「あそこは孤児の子達が住み着いてるんです。あの子達のために私があそこで頑張ってるというのもあります」

まあ、ゴブリンとか来たら即全員攫われそうだもんな…


そして店などが並び始めた。だいたい2階に住んでるんだろうけど。

「あ、そこが宿屋兼食堂です、入りましょう」

既に13時を過ぎ、混雑時を超えたのか、元々すいているのか、木のドアを開けて入ると、中には客は数人しかいなかった。

「らっしゃい!…おお、シェルミ、久しぶりだなあ、うち来るの。元気そうで何よりだ!」

カウンターの向こうで40才くらいの親父が眉を下げる。

「…んん…その男は?」

そして、眉をしかめる。分かりやすい。こんな田舎で知らない男とか怪しい以外の何者でもないよね。

「あ、こちらはシン。昨日、薬草を採りに行ってゾンビに襲われてたのを助けてもらったんですよー」

笑顔で紹介してくれるシェルミ。この子本当心臓強いよなあ。

「ゾンビに⁈だから夕方行くなってあれほど…兄さん、ありがとな。でも、こんな北の果ての屍人の平原で何してたんだ?」

当然の疑問を聞いてくれる。

「…王都から流れてきたんだが、ちょっと静かに暮らしたくなって。この町で何か、雑用でもいいかやりながら置いてもらえるといいなと思って旅して来たんだが…」

と、下手に出て自己紹介。

「ほう…アレステに移民希望とか久しぶりだわなあ。ちょうど町長そっちにいるから、話聞いてもらったらいいんじゃないか?」

という親父の声に店の奥の席を見ると、

町長…なのか?

60代くらいの男性が座ってはいるが…

「あ、町長さん、おはようございます!ちょうどお昼ご飯終えたらお邪魔しようと思ってたんですよ!」

と、相変わらずマイペースであらゆる事態に対応するシェルミ。

僕は対応できてないけど。


そして町長であろう男性はこちらを向いてーたぶん僕たちが店に入る前から気づいていたんだろうけどー手招きしながら言った。

「こんにちは、シェルミさん。お話お聞きしましょう。よければこちらのテーブルでお昼をご一緒にいかがですか?」

ということになった。

「こんにちは、初めまして、シンだ。」

言いながら町長を観察しているのだが、なんだこの爺さん…身長190くらいあるぞ…短く刈り込んだ銀髪から察するに年は60超えてるのかもしれんが、僕より筋肉量多いだろこの人。なんか闘気みたいなのが身体を覆ってるような印象さえある。

「初めまして、シンさん。町長のエルヴィスといいます。いうて特に何もしとらんのですが…シェルミさんを助けてくれたとのこと、町を代表して礼を申し上げます。彼女の薬草は町の人々の健康のための必需品ですからな」

言いながら町長は食堂の親父に向かって

「お2人にも昼食を」

とオーダーしてくれたのだった。


「…というわけで、俺は基本、日が沈んでから夜が明けるまでの間、町に魔物が入ってこないように監視する。

当面の住居として、使われていない温泉の脱衣小屋に住むことを許可される。

町の防衛のために柵などの施設を建造する自由を与えられる。

日当たり1万ギルの手当てを、毎月末に成果報酬として町長から現金で受け取る。

ということでいいんだな?」

正直、貴重袋の中には金とか銀とか宝石とか山のように詰まってるので報酬とかいらんのだけれど、そういうといかにも怪しいので、いかにも交渉してもぎ取ったみたいな雰囲気を出すことに成功した。

「それで頼みますわ、シンさん。うちの町には自警団もあるんだが、正直昼は本業もあるし、夜の警邏とか手が回らん。ゾンビやゴブリンを追い返してくれるなら安いもんだし、入って来れないような対策をしてくれるなら、なおありがたい。」

右手を差し出してくる町長と握手…このジジイ、握力300キロくらいあるんじゃないか…

「よかったですね、シン!」

とりあえずシェルミがいい子だというのは確かだ。満面の笑顔を見てるだけで癒される。


そんなわけで、僕は今日から…今夜から、アレステの町を魔物から守るという仕事を任されることになった。

僕の戦闘能力と建造物召喚チートの無双が始まる!

…予定

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