表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/4

第二話「町に馴染む死神」

 翌朝、パンで朝食を取る二人。


「固いパンしか出せなくて悪いな」


「いや、おいしい。ありがとう」


「さて、仕事に行くか」


「仕事? 用心棒だけじゃないのか?」


「酒場は夜しか開かないからな。昼はパトロールをやってる」


「なら私も行こう」


「いいのか?」


「泊めてもらったんだ。せめてこれぐらいはしないとな」


「律儀なんだな。じゃあ付き合ってくれ」


 町を歩くライザスとジーナ。

 町民たちは大鎌を携えたジーナに当然驚く。


「ライザスさん……その人は?」


「旅の賞金稼ぎのジーナだ。昨日酒場で知り合ってな」


「よろしく」


 パトロールは続く。

 町の人々はライザスには挨拶するが、ジーナには……。


「ど、どうも」


「こんにちは……」


「……あ、どうも」


 どうしても怖がられてしまう。さほど広くない町である。彼女が“死神”と恐れられていることが広まってしまったらしい。


「悪いな、みんな気のいい奴らなんだが」


「かまわない。こんなものを持ってるのだ。怖がられて当然だ」


 ジーナは微笑むが、その笑みはどこか寂しげだ。

 昼頃になり、


「そろそろ昼飯にしないか?」


「ああ」


 レストランに入る。


「ここの豆のスープは絶品なんだ」


「いただこう」


 やがて、いい匂いがするスープが出てくる。ジーナはスプーンでそれを口にした。音を立てない上品な仕草だった。


「おいしい!」


「そうか、よかった」


 好評でライザスもほっとする。

 午後も町を歩き回り、その日のパトロールは終わった。

 ライザスは考える。


「何とかして町になじませてやりたいが……」



**********



「今日はどこに行くんだ?」


「町の子供らに剣を教えに行く」


「剣を?」


「といっても、チャンバラごっこみたいなもんだけどな」


 ここでライザスはふと思いつく。


「よかったら、ジーナ。お前も来ないか?」


「私が……? いや、教えられることなんてないし……」


「いいからいいから。子供と交流するのもいい気分転換になるぞ」


「お、おい……」


 半ば強引にジーナを町の広場に連れていく。

 そこには10人近い少年少女が待っていた。子供たちに木剣を持たせ、さっそくライザスは指導を始める。


「よーし、さっそく素振りから始めるぞ! しっかり握って、気合を入れて振るんだぞ!」


「はーい!」


 みんなで素振りをする。ライザスの指導は厳しさもあったが、剣を振るう楽しさを覚えてもらおうというニュアンスだった。

 ジーナはそれを微笑みながら眺める。

 すると――


「お姉さん!」


「ん?」


 一人の少女が話しかけてきた。


「あたしメグっていうの! あなたは?」


「私は……ジーナという」


「おっきな鎌だねー!」


「コ、コラ……危ないぞ」


 慌てて鎌をどかすジーナ。


「ねえねえ、見せて!」


「?」


「振り回すところ見せてー!」


 この様子を見て、他の子供たちも集まってきた。


「俺も見たいー!」


「鎌かっけえ!」


「いや、これは見せるための武器では……」


「いいじゃないか。見せてやれよ」


「ライザス……」


 頷くジーナ。大鎌をヒュルンと回し、構える


「みんな離れてろ。当たったら怪我では済まないからな」


 子供たちが離れる。

 ジーナはゆっくり息を吸うと――


「ふっ! せあっ! はあああああっ!!!」


 大鎌を縦横無尽に振り回す。

 振るごとにビュンビュンと鋭い音が周囲に響く。

 剣舞ならぬ“鎌舞”が終わると――


「すっげー!」


「かっけえ!」


 子供たちは大絶賛であった。

 赤面するジーナ。それを見てライザスも笑う。


「ふふっ、死神も顔を赤くするんだな」


「う、うるさい」


「冗談はさておき、こうやって子供らと交流するのもいいもんだろ」


「まあ……な」


 この一件は町中に知れ渡り、人々はジーナが子供にも優しく接するような女性だと認識した。

 死神が徐々に町に受け入れられるようになった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  死神が棲む町——なんて、サブタイトルが(笑)  自警団的な活動もしててよかったです(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ