警戒対象、山中斑 (紅刃side)
……迂闊であった。
幾らお役目から除外された者とはいえ、あの方の弟……『山中』の姓を持つ者に不用意に接触をしてしまったのは完全に私の落ち度。
『服部』の姓を継ぐ者として恥じ入るばかりだ。
今も確実に彼の視線は私を追っている事に表情には出さないが、心の内で動揺する事は止めようがない。
視認されているのだ……服部のお役目を担う中でも取り分け“隠形”の忍術に優れたこの私が、教室の中とはいえ完全に認識されている。
『あのお方』の弟であるにも関わらずお役目とは関係の無い一般人であると聞いた時には興味も無かったのだが、一度任務をご一緒した時に小耳にはさんだ頼りにする人物として挙げたのが、彼の『山中斑』……。
興味の理由はくだらない嫉妬心、お役目と無縁の者が最も頼られているなど不満を持ち、図書委員に立候補してしまった事で接触するという失態を演じてしまった。
「く……またか、また私がいなくなった事実に気が付かれた!」
今までなら印象に残らずに煙のようにその場からいなくなる事が出来たと言うのに……一度顔を覚えられてしまってから、彼は明らかに私の事を警戒した目で見るようになった。
身体技能が高いワケでは決してないハズなのに……私の忍術をいともたやすく看破して常に私と言う不穏分子への警戒をする。
「お役目を除外されてもやはり甲賀……一筋縄では行かないようね」
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書籍化作品
『疎遠な幼馴染と異世界で結婚した夢を見たが、それから幼馴染の様子がおかしいんだが?』
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