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気になる女性は服部さん

新連載始めました。宜しければご一読願います!!<(_ _)>

 入学してから今まで気が付かなかった……。

 失礼な話だけど、俺“山中斑やまなかまだら”にとって彼女はそんな存在だった。

 長い髪を三つ編みにして、分厚い丸眼鏡を掛けたいつも教室の隅で座って本を読んでいる……何というか典型的な文学少女に見える女子。

 服部紅刃……そんな教室でも目立たない彼女に注目する事になった出来事は、割とよくあるシュチュエーション、たまたま委員会が一緒だった事に起因する。


『よろしくお願いします』


 学級委員の押し付け合いを避ける目的で、たまたま同じ図書委員会になった同級生だと言うのに敬語を使われた時、俺は思わずドキッとしてしまった。

 何というか声が……あの目立たない少女から発せられた声を聴いただけで一瞬で魂を持って行かれた気分に陥ったのだ。

 美声……それしか形容する言葉が見つからない。

 俺自身声フェチだったとは思わないが、そんな一つの発見をした事で俺はその日から服部紅刃という少女の事が気になってしょうがなくなった。

 そして注目するたびに彼女の新たなる側面を見つけてしまう。

 例えば彼女は野暮ったく髪をまとめていて目立たないけど……顔立ちは中々整っている。

 分厚い眼鏡をかけているから分かりずらいけど、その目は涼やかで綺麗な瞳が隠されている。

 そして一見体が弱そうで大人しそうなのに、何故か彼女の立ち振る舞いは立っている時も移動するときもブレが無く綺麗だ。

 いつしか俺は教室にいる時は自然と彼女の同行を目で追うのが習慣になっていた。


「……おい、どうした斑? さっきかどこ見てんだよお前?」

「……へ?」


 そんな風に今日も自分の席から何となく後方の服部さんを眺めていた俺は、いつもバカ話をしていた友人に声を掛けられ間抜けな返事をする。


「ボーっと上の空で人の話を聞いてないから可愛い子でもいるのかと期待して見てみれば“誰もいない所”を見てやがって……」

「可愛い子って……え? 何だって?」


 揶揄う様子もない“怪訝な顔”の友人の言葉に俺は再び後ろを振り返ったが……確かに今まで服部さんがいたはずの席には誰もいなかった。

 ほんの数秒前までは確かにそこにいたはずなのに?


「え……あ、あれ??」

「つーか、そもそもあそこって誰かいたっけか? あんまり印象が無いけど、お前なんか見えちゃいけないモノが見えてんじゃないだろうな?」

「失礼な……」


 友人の物言いがまるで服部さんを幽霊扱いしているようで少しムカッとするが……つい先日まで俺も彼女の事を認識していなかったのだからあまり強くは言えない。

 それに……。


「でもやっぱりクラスで一番なのは藤林さんじゃね? いつもクラスの中心にいるし同性の受けも良いのはポイント高いだろ?」

「まあ否定はしないな。確かにカワイイし……」


 教室の仲間内でいつも中心にいる藤林さんは顔良し、スタイル良し、成績良し、おまけに同性異性問わず仲良く出来る性格も悪くないクラス内どころか学年で最も『彼女にしたい女子No1』と噂されている。

 そんなに揃っていると嫉妬の対象になるだろうに、彼女についてはその手の噂を聞く事がまずない…………不思議なほどに。


「まあお前は健康スポーツ女子がタイプだから、あの手のタイプは違うかもな。大きいのが好みではないと……」

「何を言うか、その良さを否定する事はこの世の美学を否定すると同義……小さくとも大きくとも、そこには男の夢が詰まっている事を努々忘れてはイカン」

「だよな! やっぱり男たるものそこにロマンを感じるのは正常……いや使命みたいなもんだよな!!」

「かと言って……スポーツ少女の良さが変わるワケでも無い。女性ならではの健康的な肉体の織りなす美……お前だって分かるだろう!?」

「分かる! 分かるぜ!! 水泳部や新体操を邪な目で見てしまうのは男として仕方が無い事……何らおかしい事では無いよな!!」


 唐突に始まった男同士のバカ話……だけどそんな勝手に女子を評価する中で友人の口から服部さんの名前が出てこない事に軽く優越感を感じる自分がいた。

 あの目立たない娘の輝きを自分だけが知っていると思うと……薄暗い気色の悪い笑いがこみあげて来る。

 男の思考なんてそんな単純なモノ……切っ掛けさえあれば勝手に始まってしまう。

 もう何度目になったかは分からない恋情…………そう言えば少し重く高尚にも聞こえるが、特別なイベントも無く今までもも男がいたとか、相手にもされなかったからと早々に消えては始まる……そんな思春期男子によくある思考でしか無かった。


 だから……俺は見落とすべきでは無い事を見落としていた。

 彼女の苗字は俺のような微オタクにとって、ひいては日本人にとって最も有名なフラグであるという事を……。


面白い、もっと読みたいと思って頂けたら、感想評価何卒宜しくお願い致します。

創作の励みになります。


宜しければ他作品もよろしくお願いします。

書籍化作品

『疎遠な幼馴染と異世界で結婚した夢を見たが、それから幼馴染の様子がおかしいんだが?』

https://ncode.syosetu.com/n2677fj/208/

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