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第7章「 Y o u 」自分に言う。 【済】

「秋」


それは死にゆく「枯葉」の季節


しかしその様は「紅葉」と語り継がれた。


「漆」「丸葉」「楓」「橄欖」「団栗」


それは「針葉樹林」をも焼き尽くし


慈悲もなく「芋の木」を灰色に染める。


刻む「年輪」の数だけ、澄んだ「森林」は「燃え盛り」


世に「み」を墜とせば、「枯れ落ちて」ゆく。


あなたはこの「秋の葉」をなんて言いたい?


カレハ・A・セプテンバー「カレハの日記」より。

第7章「 Y o u 」自分に言う。  


概略・自問自答。


カレハ・ ・セプテンバー

「あなたは誰だ?」


???

「私は私。」


カレハ・ ・セプテンバー

「私は、人殺し?」


???

「そう捉えればそう。」


カレハ・ ・セプテンバー

「あなたは何人の人を殺したの?」


???

「分からない…」


カレハ・ ・セプテンバー

「あなたとわたしの違いは?」


???

「私はあなたの気持ちがわかる、逆にあなたは私の気持ちはわかる?」


カレハ・ ・セプテンバー

「私は分からない…」


???

「何故?」


カレハ・ ・セプテンバー

「私はあなたの事を覚えてない。」


???

「そう。」


カレハ・ ・セプテンバー

「うん。」


???

「あなたは私の事を思い出したい?」


カレハ・ ・セプテンバー

「………」


私は言葉に詰まる。


???

「ならば何故あなたはここに来たの?」


カレハ・ ・セプテンバー

「自分の為に、来たんだと思う。」


???

「そう。自分の為。ならばあなたに私の事を教えてあげる。」


彼女がそう言うと光が目の前を覆い尽くし眩しさのあまり私は目を閉じた。




ルーアイス

「弾着!今!」




掛け声と共に大地は揺れ、轟音を響かせる。


荒れ狂う海を背に満身を創痍した私達は砂浜と波に足を取られながら走る。


メープル

「足のあるものは対岸まで走れ!走れー!」


砂浜に埋もれる前に足を引き抜いて死に物狂いで対岸へと走る。


マニーホット

「傷口を止血した、大丈夫!大丈夫だ!今モルヒネを打つからな、我慢しろよ!」


と言うと負傷した兵士は痛みが治まったのか静かになる。


メープル

「対岸まで運ぶのを手伝ってくれエイコーン!」


エイコーン

「マニーホット!早く来い!マニーホット!そいつはもう無理だ置いていけ!」


マニーホット

「手伝ってくれよ!エイコーン!こいつはまだ助かる!」


エイコーン

「そいつの顔を見ろ!」


そこには下の歯茎だけが残った頭部しかなかった。


マニーホット

「くそっ!なんでお前らは!せっかく助けたのに!」


エイコーン

「行くぞ!ほら!」


降り注ぐ鉄の雨


メープル

「中隊長!オータム中隊長!対岸に付きました!指示を!指示をください!」


オータム

「通信兵!本部からの指示はまだか!」


通信兵「まだです!」


メープル

「中隊長このままじゃ、我々全員ハチの巣になるだけです!」


オータム

「わかってる!各員!手榴弾を用意させろ!メープル!」


メープル

「オータム中隊に告ぐ!手榴弾で敵の防護柵を狙え!」


オータム

「手榴弾用意!」


中隊員

「「「手榴弾用意!」」」


オータム

「ピン抜け!」


中隊員

「「「ピン抜け!」」」


オータム

「投げ!」


複数の手榴弾により敵の防護壁が一部決壊する。


オータム

「オータム上陸中隊に告ぐ!敵は眼前!」


中隊員

「「「敵は眼前!」」」


オータム

「弾丸は届く!」


中隊員

「「「弾丸は届く!」」


オータム

「目と鼻の先だ!」


中隊員

「「「はっ!」」」


オータム

「私が聖女化し中央を突破する!」


中隊員

「「「はっ!」」」


オータム

「貴様らに問う!その命に値する人間となる覚悟はあるか!」


中隊員

「「「はっ!」」」


オータム

「面を上げろ!頭を垂れるな!」


中隊員

「「「はっ!」」」


オータム

「そして叫べ!」


中隊員

「「「「Earn this! Earn it!」」」


オータム

「礼装武器を展開する!キルデアのヴリキッドよ!聴いているか!この言葉を持って私は私を解き放つ!今この瞬間息絶えようとも!その死に値する人間になると誓おう!」




オータム

無駄にするな!値する人間になれ!




傭兵中隊・全兵

「Earn this! Earn it!」






オータム

「中隊!突撃!」 






オータム

「狙い撃て!ベイオネット!」


聖女の加護を纏う右面で照準を合わせ引き金を引くと敵の軍勢を果て無き一筋の光が貫く。


光が貫いた場所に敵の兵士は跡形も無く壊れかけの防護壁は完全に決壊した。


メープル

「中隊長が中央に道を開いたぞ!中隊長に続けー!」


戦場は悲惨だ、しかし残酷かと言われたら案外そうでも無い。


人間が頭を撃ち抜かれた時どんな風になるか知ってる?


まるで絶頂したかの様なアヘ顔になってたった一言「a 」って母音を呟いてお陀仏。


笑っちゃうよね?時世の句も読めやしない。


「事実は小説より奇なり」なんてのは戦場では当てはまらない。


事実人が死ぬ時なんてこの通り驚くほどつまらない。


簡単な話戦場と言う場所は引き金を引いた奴が生きて、引かなかった奴が死んでいく。


こう言う話をすると決まって騒ぐ争いも暴力も認めない人間に私は問う。


他人が人に銃を向けて殺そうとしてきた時にお前も銃を持っていたとする。


そんな時にお前は両手を上げて喜んで死ねるか?仮に両手を上げて撃たれたとして撃った相手に


1ミリの憎しみも嫌悪も持たず死を受け入れられる?そんな奴はいなかった。


いや、厳密に言うと【亡くなった。】


だからこそは私は戦場に立つ誰よりも「自分が殺す」事に執着している。


それはもう執着を超えた「依存」とも言える程に。


私が一人でも多く殺せば仲間は一人を殺さずに済むし、仲間が殺されるリスクが減る。


それこそが私の考える最大のメリットを含んだ絶対的な民主主義。


常識で考えればこんなスプリーキラーな思想は許容されない。


しかし【戦場】という社会は敵を殺す事で「信用」され、やがて「勲章」になるのだ。


その結果、傭兵崩れの人殺しがこの上陸作戦の部隊で国に、軍に、仲間に、信頼され「中隊長」を


任せられている。これが戦争だ。


例え傭兵崩れのイかれちまった殺人鬼でも、


「殺人」が正当化されているこのモラルのひっくり返った世の中では人を率いる「長」となれるのだ。


中々に良い世の中だろ?私は大好きだ。


第三小隊伝令「オータム中隊長!第三小隊のオリヴィア軍曹から伝令です!概略!敵勢力!中央沿岸防衛線崩壊!フラック8・8ミリ高射砲も破壊したとの事!現在中央から南西へ調査を試みるとの事です!」


オータム

「ご苦労こちらは南東を調査する!ルーアイス分隊長を呼んでこい!」


第三小隊伝令「はっ!」


第二小隊伝令「中隊長!エイコーン第二小隊より伝令!南南東より敵伏兵多数!至急援軍を求む!」


オータム

「わかった、メープル!こっちの指揮を頼む!エイコーンの方へ行ってくる!」


メープル

「はい!こちらは任せてください!中隊長もお気を付けて!」


私は右目に展開した能力を使い範囲索敵を開始する。


オータム

「あっちか。」


メープル

「中隊長が通るぞ!道を開けろ!」


風を斬るがごとく戦場を駆け抜けエイコーンの元へと向かう。


中隊員

「こりゃすげぇ、陸の戦闘機とはよく言った物だな。」


目的地へと辿り着くと塹壕からわらわらと敵兵が出てくる。


エイコーン

「マニーホット!てめぇこの野郎!メディックを撃ちやがったな!ぶっ殺してやる!」


私は数百メートル先にエイコーンの姿を見つけすぐに向かおうとするも、


次の瞬間エイコーンが乱暴に扱われる操り人形の様にびくびくと痙攣しその場に倒れる。


オータム

「エイコーン!(間に合え!)」


私は照準を敵の兵士に合わせると一気にその脳天を打ち抜く。


敵兵士は力なくその場に倒れ、私はすぐ様エイコーンの元へと駆けつける。


オータム

「大丈夫か!エイコーン!」


私は倒れているエイコーンの傷口を圧迫する。


エイコーン

「悪いおーだむ、じくじっだ。」


オータム

「今治療してやるからちょっと待ってろ!」


エイコーン

「だいじょゔぶ、だいじょゔぶ」


オータム

「メディック!メディーック!」


私は肺の酸素を使い切るほどの大声で叫ぶ。


メープル

「どうしたオータム!」


後から敵兵から奪ったバイクで駆けつけたメープルが既に亡くなっていた


マニーホットのサイドバックから救護キットを取り出す。


オータム

「エイコーンにモルヒネを!」


メープル

「えぇ!」


メープルは救護キットから3センチ程の注射器を取り出しエイコーンの足に突き刺す。


エイコーン

「オーダム、メーブル、これを、これをもっででぐれ」


瀕死のエイコーンは震える手で胸元から血だらけになった紙切れを取り出した。


オータム

「エイコーン大丈夫だ!お前は助かる!」


エイコーンは私の胸に手紙を強く押し付ける。


エイコーン

「ごれを、ごれを、もっででぐれ」


オータム

「やめろよ!お前こんなところで死ぬタマじゃないだろ!生きて自分で!」


エイコーンは両眼で私の目を捉え口を動かす。


エイコーン

「た の む」


声は聞こえなかったが彼女の口元は間違い無く言っていた。


直後エイコーンが激しく痙攣を始める。


オータム

「メープル!モルヒネを!」


メープル

「もう!うっているわ!」


オータム

「もう一本打ててって!痙攣が酷くなってるぞ!」


メープルは躊躇う…。


オータム

「なにしてんだ!早く!」


メープル

「これ以上打っても意味が無いわ!出血が多すぎる!エイコーンはもう!」


オータム

「打てよ!」


メープル

「わかったわよ!」


メープルは上官である私の命令に従いエイコーンに追加のモルヒネを打つ。


するとエイコーンの痙攣は遅まりエイコーンが口を開く。


エイコーン

「おーだむ、めー…ぶる、ごれ…ごれをかならず…だして…ぜっだいだじでぐれ…。」


オータム

「くそ!なんでお前まで!」


私は赤く染まり続ける自分の手を見て涙を流す。


エイコーン

「ぜんぜんいだぐないがら、ごわくないざ。でんごくにあいづがまっでるじ。」


オータム

「なにアホなこと言ってんだ!」


私の涙がいくら垂れても私の手は赤く染まり続ける。


エイコーン

「ざいごにまにーぼっどのどころにづれでっでぐれ」


オータム

「冗談はよせよ!エイコーン!嘘だろ!」


エイコーンは首を横に振り私の体を跳ね除けると、ある場所へと匍匐前進をする。


オータム

「なにやってんだよ…エイコーン…。」


腹から吹き出す血液を地面に擦りつける様に、一歩…一歩…進む。


目も当てられない姿を見てられない私が向かおうとするとメープルが私を引き留める。


彼女に離せと言おうとしたが彼女も私と同じかそれ以上の涙を両眼から流していた。


エイコーンはマニーホットの元に辿り付くとマニーホットの遺体を抱きしめる。


それから数分後、南西方面の調査に出ていたルーアイス達が少し遅れて到着した。


ルーアイス

「隊長方!遅れてすんません!とりあえず南西含めてここら一体は完全制圧完了です!それよりもエイコーンとマニーホットが撃たれたって聞いたぞ!」


ルーアイスのその発言に私とメープルは全く反応しない。


ルーアイス

「なにしけたツラしてんだよ隊長方!上陸作戦の成功だぜ?ちったぁ嬉しい顔して下さいよ!今夜は敵からかっぱらった酒で宴なんだし!」


一緒に着いてきたオリヴィアは両眼を見開き口に手を当てる。


おそらく私達の態度と現状から最悪の可能性にたどり着いたのだろう。


ルーアイス

「んで二人は?あいつらほっとくと戦場でもイチャつきますよ」


私達はルーアイスを無視し続ける。


ルーアイス

「無視しなくたっていいじゃないっすか!」


オリヴィア

「ルーアイス黙って」


無視され続けて怒鳴るルーアイスの声よりも大きな声でオリヴィアが怒鳴る。


ルーアイス

「なに切れてんだよオリヴィア。あ?つーか目の前にいるじゃねーか!おい!いつまで抱き合ってんだよお二人さん!ここは戦場のど真ん中だぞ!」


ルーアイスがエイコーンを強くこずく。すると。












エイコーンは受け身を取ることも無くそのまま地面に倒れた。


つづく…。

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