第3章「Who」あんたの顔って…。【挿絵済】
「秋」
それは死にゆく「枯葉」の季節
しかしその様は「紅葉」と語り継がれた。
「漆」「丸葉」「楓」「橄欖」「団栗」
それは「針葉樹林」をも焼き尽くし
慈悲もなく「芋の木」を灰色に染める。
刻む「年輪」の数だけ、澄んだ「森林」は「燃え盛り」
世に「み」を墜とせば、「枯れ落ちて」ゆく。
あなたはこの「秋の葉」をなんて言いたい?
カレハ・A・セプテンバー「カレハの日記」より。
第3章「Who」あんたの顔って…。
現実に回帰すると私はカップを反射的に倒してしまったようだ。
零れたお湯が窓から差し込む光で鏡面になり、慌てて溢したお湯をハンカチで拭くも、
この「水」は拭いても、拭いても、拭いても、拭いてもどこからか溢れてくる、
なんでよ、なんでよ、なんでよ、なんでよ、なんでよ!
カレハ
「このっ!このっ!このっ!」
私は摩擦で擦り切れた手首なんて気にも留めない。
カレハ
「なんなんだよ!これ!」
視界は速度を増して霞んで行き、ぐちゃぐちゃに潰れる。
カレハ
「見えないよ!カエデさん!見えないんだ!なんなのこれ!目の前が…目の前が!」
カエデさん
「カレハちゃん…やめて…」
カエデさんのその声は微かに震えいた。
カレハ
「目がどんどん見えなくなる!このっ!くそっ!」
カエデさん
「カレハちゃん…もうやめて…」
今まで聞いた事もない悲しげな声でカエデさんは私の腕を優しく抑えるが、
私はその腕を力尽くで振り払う。
そしてもう一度テーブルを拭こうとすると
カエデさん
「カレハちゃん!もうやめなさい!」
耳鳴りがするくらい大きな声で怒鳴られ驚いた私が彼女の方に顔を向けると、
輪郭でしか判別出来ないカエデさんと思われる人物が私に言った。
カエデさん
「あなたの…あなたの視界がぼやけているのは…」
カエデさん
「あなたが泣いているからよ。」
「I」945年 9月15日 「零した涙」 –【カレハの日記】– より
あたしは泣いても泣いても泣き足りない
ふと、机の上に零す涙の数を数えたんだ。
けれど、涙の数は何度数えても合わない、
なぜなら涙は、どんなに零したとしても、
やがて、大きな一になってしまう。
「だから、あたしは泣き足りない。」
その場所には人間の音が鳴り響いていた。
鬱陶しいほどセリフに名前が付いている理由…?楽しんで欲しいからです。