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第16章「愛」思う故に「哀」がある。【済】

「秋」


それは死にゆく「枯葉」の季節


しかしその様は「紅葉」と語り継がれた。


「漆」「丸葉」「楓」「橄欖」「団栗」


それは「針葉樹林」をも焼き尽くし


慈悲もなく「芋の木」を灰色に染める。


刻む「年輪」の数だけ、澄んだ「森林」は「燃え盛り」


世に「み」を墜とせば、「枯れ落ちて」ゆく。


あなたはこの「秋の葉」をなんて言いたい?


カレハ・A・セプテンバー「カレハの日記」より。

第16章「愛」思う故に「哀」がある。


オータムが女神になってから数時間。未だ聖女マルバと女神オータムの戦いは続いている。


綺麗な薄緑色だったこのノルトホルツの丘も福音書を謳い続けている私の部隊と


それを阻止しようとする聖女マルバ側の空挺師団との攻防により真っ赤に染まっていた。


私は女神となったオータムに串刺しにされボロボロになったマルバに質問する。


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

「なぜ貴方は笑ってますの?」


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「君ならわかるだろう?」


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

「分からないから聞いているのだけれど?」


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「魅了の能力だけで無くブリタニアの福音書にまで手を出した君ならわかる筈だ。」


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

「それがなんだと言うの?私はオータムの一部になりたいだけ!」


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「君はカレハが好きなのだろう?」


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

「私はオータムを心から愛している!今の私ならあの日言われたあの方から受けた質問にだって答えられますわ!」


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「愛している…か。第4席。君は私の能力について知っているな?」


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

「もちろんですわ。同じ十二聖女の能力を把握するのは常識」


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「不老不死である私がいくらカレハに刺されようとその死を私が受け入れなければ死ぬ事なはない。しかしブリタニアの福音書によって女神になったカレハが私の死を願えば私は死ぬ。」


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

「なら尚の事、何故貴方は笑ってられますの?」


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「私は、帝国がこの戦で福音書の起動をするのを事前に知っていたんだ。」


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

「何ですって…?」


聖女マルバは空を見上げると儚げに呟く。


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「私は…試したかったんだ。」


話している間にも聖女マルバの傷口は時が巻き戻る様に閉じていく。


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「カレハが聖女になってしまったあの日からカレハは私の事を恨んでいるのだろうと思った。それこそ私を殺したい程に。だからこそ貴様と帝国の福音書の起動を許し。カレハが女神の願いを使って私を殺すのかどうか試した。そして私自身、カレハから与えられる死であれば受け入れる覚悟も出来ていた。しかし違った。カレハは今も苦しみながら自力で私を殺そうとしている。だからこそ私はこの様に未だ生きているのだろう…。そこに私は希望が見えてしまったんだよ第4席。」


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

「希望の光?オータムが女神の願いを使おうと使うまいと貴方を殺そうしている事実は変わらないのでは無くて?」


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「あぁそうさ。しかし自分でも驚いたが私はカレハから与えられる死を受けいる事が出来なかったんだ。アレだけの事をカレハにしたにも関わらず、私は生きていたいんだ」


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

聖女マルバが再び立ち上がると空に浮かぶオータムは翼を広げる。


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「死ねない私だからこそ。カレハに罪を償うチャンスを貰ったんだ。それを希望と言わずして何と言う!私はあの日に誓ったんだ!あいつよりも我儘に生きてみせると!」


女神オータム

【・マ…真…ママ?マルヴァァァァァアァアアア嗚アアアアアアア呼!】


自我を失った私が愛した少女は四つん這いになって聖女マルバの腹に噛みつき、


臓物を引きずり出す。変わり果てた彼女のその姿を私は直視する事ができなかった。


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「第…4席…ごはっ…君もまだ間に合う…。私同様君にもまだ方法はある…。」


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

「嫌よ!私はあの日あの方に問われた質問に答える為にこの福音書を起動したの!この身を犠牲にしてでも!オータムの一部になりたいの!」


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「17万2800人を犠牲にした上に自分まで犠牲にするのだから君は確かにカレハを愛しているのだろう。」


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

「選ばれた貴方に選ばれなかった私の気持ちなんて分かる筈ないわ!」


女神オータム

【・ママォマ流バヲ具cha愚チャに私手食べ血ャウ?たタっ田あ太たた食ベちゃウ乃】


オータムは聖女マルバの首元を噛みちぎる動脈からマルバの血液を吸いだす。


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「っぐ…はぁ…ぁっ。選ばれてなんか…無いさ…。彼女はカレハを選んだのだから…。だからわたしは…せかいにいるだれよりも…いまのきみのきもちがわかる…。」


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

「私はオータムの一部になると決めたのよ!後悔なんてないわ!」


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「自身の能力でカレハを手にする事を拒み、福音書の人柱となってまでカレハの一部になる事を選んだ君がその事実を容認できる筈がない。」


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

「わかったような事を言わないで!私は後悔なんてしてないわ!」


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「カレハを愛する君がカレハと生きる事の出来無い未来を受け入れる?馬鹿を言うな」


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

「それはっ!そんなの我儘だわ!何かを得る為には何かを失わなければならないの!」


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「あの日の私はまさに今の君と同じ顔をしていたのだろうな。そしてそんな時に限ってあいつは決まってこう言うんだ。」聖女マルバは不適な笑みを浮かべる。


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「【我儘な自分を許して頂戴。】ってな。」


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

「やめて…。」


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「そしてあいつは君みたいな奴にこう言うんだ。」


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「【あなたにはまだ大切な物が見えてる】と。」


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

「何も見えてなんて無いわ!私には見えていなかったからこんな物に頼ったの!」





私はその場に崩れる様に膝をつく。






「私」思う故に「私」がある、私はそう言い聞かせて生きるのが精一杯だった。







生まれも育ちも悪い私は生まれながらにして慰み者だった…。







幼少期から繰り返されるその行為には次第に慣れてゆき…。







それが私の役目なのだと割り切った時、私は世界が見なくなってしまった…。








だから私は一回だけ愛のある行為を愛を司る女神に望んでしまった…。







十二聖女 第4席 ディフォリエイト

「私は…愛が…愛が…欲しい…の…」





【・その願いキュプロスの女神…ヴィーナスが叶えてみせましょう。】




そうして私は魅了の能力を手に入れた。


次の日から私の日常は根底から覆された。私を虐待した母は私に愛情を抱いた。


私を慰み者の娼館に売付けそこから逃げ出して来た私を汚らわしいと言って


何度も殴りつけた父は私を抱擁した。誰もが私を一目見れば惚れて愛してくれた。


やがては王までもが私を養子に迎え入れ、私は大衆から愛される人間になった。


そして私は王から勅命を受け親衛隊と軍を持つ事になった。


軍の加入条件は特段何も付けなかったが、親衛隊の加入条件は【汚れなき少女のみ】と限定し、


私だけの私の為の花園を手に入れた。少女達は私を愛し、私は少女達を愛するこの夢の様な時間に…


私の心が満たされる事は一度も無かった…。


十二聖女 第10席 ルーシー・M・オクトーヴァー

「アヴリール。世界に愛された貴方は誰を愛するの?」


彼女のその問いに私は知っていたからこそ、答えられなかった。


十二聖女 第10席 ルーシー・M・オクトーヴァー

「「私」想う故に「私」がある。では貴方は一体誰を想うの?」


私だけがその愛が偽りだと知っているのだ。


魅了されている側は私しか見えず、それとは対極的に私は世界が見えている。


十二聖女 第10席 ルーシー・M・オクトーヴァー

「貴方は目に見えない物が見えているのね。であれば貴方にこそこの本は相応しいわ。きっとこの本を使えば貴方は私の問いにも答えられる様になれる。」


彼女はそういって一冊の本を差し出す。


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

「これはっブリタニアの!でもこの本を使う事は!」


彼女ははにかみ満面の笑みで答える。


十二聖女 第10席 ルーシー・M・オクトーヴァー

「愛しているのなら悪魔になったっていいじゃない。」


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

「しかしそれは真実の愛にはほど遠いのでは?」


十二聖女 第10席 ルーシー・M・オクトーヴァー

「真実の愛を知りたいのなら使いなさい。私はこれ以上言わないわ。」


そして私は真実の愛の答えを知る為に彼女に与えられた福音書を起動した。


しかしどうだ?今天に浮かぶオータムは私の愛したオータムなのだろうか…?


女神オータム

【・幸せ!し死しあわせ?私は獅子sh嫉視し菱h私hsh私シシh私h私h私日shいししvhしhぢひ】


目の前に映る、カクカクとそして赫赫と映るオータム…。


違う…。


私はこんなオータムが欲しかったのでは無い…。


絶対に違う!だからこそ口にする…。


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

【キュプロスの女神アフロディーテよご拝聴下さい。私は恋も戦争も手段を選ばない】


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

【ヴァージン・オヴ・カテドラール】


私の詠唱と共に耳と世界に広がっていた怪怪な音が止む。


これで私に魅了されていたオータムの催眠も解除され福音書の起動も抑えられる筈。


女神オータム

【・AHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!】


私が能力を解き譜が止まった途端にオータムが苦しみ出してしまった。


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

「何故!?福音書はもう止まった筈!?」


洗脳を説いたのにも関わらずオータムの女神化は止まらない。


女神オータム

【・D s-u s 2 F d i m F ♯7 s- u s 4 C ♯m♭ 13】


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

「オータムが…。歌を謳ってる?」


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「当然だろう。」


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

「何故!?」


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「あの本は誰に貰ったんだ?そしてブリタニアは第何席の物だ?」


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

「だってあの福音書は十二聖女にしか読めない!そもそもオータムは第9席代理のはず!」


ここでようやくディフォリエイトはオータムの正体に気が付く。


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

「第9席が二人…。」


【十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー】


【十二聖女 第9席 【代理】聖女オータム】


そしてあの本、ブリタニアの福音書の主


【十二聖女 第10席 ルーシー・M・オクトーヴァー】




十二聖女 第4席 ディフォリエイト

「そんな…。私は大変な事をしてしまった。」


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「確かに福音書の起動は君の願いによって発動した、そして今停止した筈の福音書が起動しているのは十二聖女であるあの子が福音書の力を願っているんだ。」


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

「あなたこうなる事がわかっていると先ほど言っていたけれど、何故起動を?」


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「あの子が右手に持つ槍は聖女を穿つロンジェネス…。カレハはおそらく女神の願いを使ったのだろう…。」


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

「そんな…」


間に合わなかった…。私の能力解除が間に合わなかったからオータムは…。


私が絶望に打ち拉がれていると聖女マルバは立ち上がり己の心臓に手を当てる。


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

「何をしているの…?」


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「まだカレハを救う方法は有る…。」


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

「今更何を…。」


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「カレハの願いは私の死…。」



「貴方まさか!?それを試したかったという事なの!?」


彼女は自分を殺すことで暴走状態に陥ったオータムを救おうとしている。


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

【キュプロスの女神アフロディーテよご拝聴下さい。私は恋も戦争も手段を選ばない】


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

【ヴァージン・オヴ・カテドラール!】


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「無駄だよアヴリール…十二聖女の私に君の力は通用しない。」


聖女マルバはディフォリエイトの顔を見つめ優しい笑みを浮かべる。


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「あの子を含め君を巻き込んでわるかった…」


そして彼女はゆっくりと口にする。


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

【北の地に勝利を齎した、アルスターのモリガンよ聴こえているな?潮時だ。】


オータムは天に槍を掲げると朝焼けよりも神々しい光を放つ。


女神オータム

【・D s-u s 2 F d i m F ♯7 s- u s 4 C ♯m♭ 13 ロンジェヌス】


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー


                  ドレッドノード

【その血潮を焚きて矛を貫く盾となれ! 超弩級戦艦 エリンレオル・カッヴァーラ!】


女神オータムの矛と聖女マルバの盾が衝突する瞬間。


太陽を背にたった一人の少女が丸腰でやって来た。


???・?・????????

「カレハ・A・セプテンバー!」


全ての矛と盾は彼女に砕かれる。

つづく…。

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