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第14章「福音書」磔の詩【済】

「秋」


それは死にゆく「枯葉」の季節


しかしその様は「紅葉」と語り継がれた。


「漆」「丸葉」「楓」「橄欖」「団栗」


それは「針葉樹林」をも焼き尽くし


慈悲もなく「芋の木」を灰色に染める。


刻む「年輪」の数だけ、澄んだ「森林」は「燃え盛り」


世に「み」を墜とせば、「枯れ落ちて」ゆく。


あなたはこの「秋の葉」をなんて言いたい?


カレハ・A・セプテンバー「カレハの日記」より。

第14章「福音書」磔の詩


耳鳴りが酷い…なんだ目がチカチカする。


ルーアイス

「オリヴィア!オリヴィア!しっかりしろ!オリヴィア!」


ルーアイスの声?私が起き上がりあたりを見渡すと、オリヴィアが横たわっている。


オリヴィアだけじゃない中隊員やヴァルトヴァーデン大佐はバウム陸曹を守る様に抱えて倒れている。


何が起こったんだ?確かディフォリエイトの行為にヴァルトヴァーデン大佐が怒りそれでオータムが私達に…


ルーアイス

「オリヴィア!オリヴィア!しっかりしろ!メディック!メデイーック!早くオリヴィアを治療してくれ!」


未だ衝撃の所為で視界がはっきりとせず、手探りで自分の銃を掴む。


しかしなんだこの柔らかい食感にほんわかと生暖かい、まるで人の手みたいな。


メープル

「これは…。」


それはオリヴィアの左手だった。


ルーアイス

「早く!オリヴィアの左手が!誰か治療してくれ!血が!血が止まらないんだ!」


そんな風に喚くルーアイスの顔はどんどん青ざめて行き、やがてそんなルーアイスを複数の中隊員が押さえつける。


オータム傭兵中隊・衛生兵

「今治療しますから!落ち着いてくださいルーアイス分隊長!」


ルーアイス

「オリヴィアが!オリヴィアが死んじゃう!」


メディックはモルヒネを取り出すとオリヴィアにだけでなくルーアイスにも打ち込む。


ルーアイス

「おい!なんで私なんかにそんなものを打つんだ!早くオリヴィアを!早く!」


ルーアイスはオリヴィアのそばから離れようとしない。


オータム傭兵中隊・衛生兵

「ルーアイス分隊長わかっています!オリヴィア伍長の止血も必ず致しますから!それよりもまずは!まずはあなたの止血を優先させてください!」


そうルーアイスの左足もそこには無かった…


???オータム

「D -- s- -- u -- s -- 2 -- F -- d -- i --m 」


聖女ディフォリエイト

「オータム貴方は生まれ変わるの!この裏切り者達の事を抹殺し!あなたは新たに女神へと消化される!」


ディフォリエイトが天を見上げ恍惚の表情を浮かべ光に向かって話しかけている。


女神オータム

「AHHHHHHHHH!!AHHHH!!」


あの奇声はオータムなのか?


よく目を凝らすとオータムはもがき苦しんでいる様な挙動を示している。


女神オータム

「 F ♯ -- 7 -- s- -- u -- s -- 4 -- C ♯ -- m♭ -- 13 」


なんなんだアレは。気になるのはディフォリエイトのレギオンが歌っている歌に反応して


オータムがもがき苦しんでいる事だ。


ヴァルトヴァーデン大佐

「あの詩は恐らく、福音だ…。」


気を失っていたヴァルトヴァーデン大佐が体を起こす。


メープル

「無事だったのですか!」


ヴァルトヴァーデン大佐

「肋骨が2本やられたくらいだむしろお前の隊の被害の方が深刻だろう」


メープル

「いえ、聖女の貴方が守ってくれなかったら私達の隊は全滅していたと思います。」


怪我人はいるが死人が出ていないのはヴァルトヴァーデン大佐がその身を挺して


私達の前に立ちはだかり守ってくれたからだ。


ヴァルトヴァーデン大佐

「そう言って貰えるならこちらとしても守った甲斐があったよメープル小隊長。それにしても代理とは言え流石十二聖女と言った所かセントセカンドの私でさえこの有様だ」


ヴァルトヴァーデン大佐は身体を起こすと先ほど口にした【福音書】について語る。


ヴァルトヴァーデン大佐

「私はあの詩を聞いた事は無いが、詩が記された書物を「G」ルマンの国立図書館で見せられた事がある。人工的に聖女を女神へと昇華する福音その楽譜が【福音書】だ。」


メープル

「聖女を女神に昇華する!?そんな事が」


ヴァルトヴァーデン大佐

「あぁ、しかし福音書は12冊しか存在せず限られた者にしか読むことは出来ない。現に私は一度読んだがその意味を理解する事は出来なかった」


12冊の福音書に、限られた十二人…それってどこかで聞いた事がある様な。


メープル

「その選ばれし人物ってもしかして。」


聖女ディフォリエイト

「十二聖女。全くセントセカンドの死に損ないがぺらぺらと。お喋りが過ぎるのでは無くて?「G」ルマンの左腕。」


ディフォリエイトが私たちの会話を遮る。


ヴァルトヴァーデン大佐

「メープル小隊長!今すぐ無事な者を連れてここから撤退しろ。そしてバウムを頼む」


メープル

「でも貴方やオータムを置いていくには!」


ヴァルトヴァーデン大佐

「今の彼女は完全に人間では無くなっている。セントセカンドの私なら後一撃は耐えられるその間に!」


聖女ディフォリエイト

「福音書の事実を知られて逃すと思っているの?女神オータム!穢れ!異端者と成り果てた彼女達を断罪して下さい!」


女神オータム

「AHHHHHHHHH!!AHHHH!!」


オータムは銃を天に掲げると銃の先についていたオータムの銃剣はやがて


一本の槍となりヴァルトヴァーデンを突き刺す。


ヴァルトヴァーデン大佐

「ぐはぁぁああ!」


串刺したヴァルトヴァーデンは大量に吐血しオータムは剣についた血を払う様に


ヴァルトヴァーデンを投げ捨てると今度は私にその槍を向ける。


メープル

「オータム!もうやめて!目を覚ましてよ!私よメープルよ!覚えてないの!?」


女神オータム

「メウウう…メメメmmメウMel女ー売?」


私はオータムの表情を見て驚愕する。


彼女の目の焦点はあっておらず目ん玉がぐりんと上を向いた右目からは


血の涙を流し首を左右にかくかくと揺らしカタカタと歯音を立てる


彼女の口からはヨダレが漏れていた。会話が出来ないなんて者では無い。


それはもう人と呼べる姿ですらない無惨な姿だった。


聖女ディフォリエイト

「無駄よ?オータムの人格は私に魅了されている。後48時間もすれば女神ブリタニアの福音書に記された磔刑の詩で完全に破壊される!いずれ貴方達の事を覚えていたオータムは死に!彼女は私達に無償の愛を与えてくれる女神へと昇華される!」


ヴァルトヴァーデン大佐

「ブリタニアの福音書、磔刑の詩だと!?あれは16年前に失われた筈では…」


聖女ディフォリエイト

「あらあら、まだ生きていたの?出来損ないとはいえその生命力は流石セントセカンドと言うべきかしら。」この発言にヴァルトヴァーデンは思いついた様な表情をする。


ヴァルトヴァーデン大佐

「そうか…そう言う事か!貴様は自分の望みの為ならば17万2800人の敬虔なる信徒を!自らのレギオンを犠牲にかけるというのか!?」


ディフォリエイトは大佐の言葉に不適な笑みを浮かべる。


ヴァルトヴァーデン大佐

「待てよ…?あの詩を行使すると言う事は貴様は自分さえも犠牲にすると?」


聖女ディフォリエイト

「愛を手に入れるのであればそれくらいの犠牲は安い物でしょう?」


この二人はなんの事を言っているのだ?わからないぞ?


メープル

「ヴァルトヴァーデン大佐?なんの事を言っているんですか?」


ヴァルトヴァーデン大佐

「こいつは…い…イカれている…。」


聖女ディフォリエイト

「あらあら随分な言われようね…けれどそれは褒め言葉と受け取っておくわ、さぁ答え合わせも済んだのだから安らかに死になさい!「G」ルマンの左腕ヴァルトヴァーデン・ジャーニー!女神オータムよお聞きください!彼女に裁きの槍と断罪を。」


メープル

「やめてオータム!」


私がヴァルトヴァーデン大佐の前に立ち塞がるもそんな私の声は彼女に届かない。


オータムはもう一度銃を天に掲げる。


女神オータム

「ダダだだ駄DANAN弾ダン坐井死math」


メープル

「もうやめて…オータム…」


刹那、光に一か所の黒点が発生しとある文言が響き渡る。


???

【北の地に勝利を齎したアルスターのモリガンよ…。聴こえているな?私は勝利を要求する…。来れ…。破壊と破滅の怪物!】


???

『超重戦車!ラントクロイツァァアアアアアア!!』


その猛る叫びと共に私達の目前にはこの戦場の光をも凌駕する紅いが現れた。


その赤を纏う世界最大の防御礼装を纏いこの凄惨な戦場に参上したのは…。


十二聖女が一人。「 I 」ルランド王国代表聖女第9席。真の主人。


私の義理の姉…。赤毛のマルバ・A・セプテンバーだ。


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「久し振りだな…ブリタニアの悪魔…」


女神オータム

「マルヴァアアアアアアアア!!!!」


オータムの一撃を義姉さんは受け止め私達に命令する。


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「ヴァルトヴァーデン生きているな?じきに空挺師団が降下する!その隙にクレハ達を連れて森に待機させてある護送車でこの場から離脱しろ。」


ヴァルトヴァーデン大佐

「わかりました。」


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「それではこれより状況を開始する!」


メープル

「義姉さん!私も!」


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「私はお前の義姉さんじゃ無い、今すぐに離脱しろこれは私とこの子の問題だ。」


女神オータム

「マアアルバアアアアー何ゼsisterォ裏ギっ田阿亜ア!」


十二聖女 第4席 ディフォリエイト

「いいわそれでいいのよオータム!貴方は貴方を愛する愚か者共を全て断罪するの!」襲いかかるオータムを義姉さんは弾き返すと私たちに指示する。


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「空挺師団が投下された!早くいけ!ヴァルトヴァーデン!」


メープル

「やだよ義姉さん!私も戦う!」


私は我慢ならず義姉さんの元へと近寄ると。


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「かはっ!」


腹部に息が詰まるほどの鈍痛が走る。


メープル

「なんでよ…義姉さん…。」


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「クレハ…私はお前の義姉さんじゃないと何度も言っているだろう。」


私はその場に脱力する様に倒れた。


十二聖女 第9席 マルバ・A・セプテンバー

「ヴァルトヴァーデン、クレハを頼む、ブリタニアの福音書は起動された…停止するまでは空挺師団がこの地域一帯を封鎖する。」


ヴァルトヴァーデン大佐

「かしこまりました…」


大佐に抱えられ、遠のく意識の中私は義姉さんとオータムの二人が剣を交えるのを最後に意識を失った。

つづく…。

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