表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/21

第12章「重い」引き金【済】

「秋」


それは死にゆく「枯葉」の季節


しかしその様は「紅葉」と語り継がれた。


「漆」「丸葉」「楓」「橄欖」「団栗」


それは「針葉樹林」をも焼き尽くし


慈悲もなく「芋の木」を灰色に染める。


刻む「年輪」の数だけ、澄んだ「森林」は「燃え盛り」


世に「み」を墜とせば、「枯れ落ちて」ゆく。


あなたはこの「秋の葉」をなんて言いたい?


カレハ・A・セプテンバー「カレハの日記」より。

第12章「重い」引き金


聖女オータム

「先ほどはすまなかったなヴァルトヴァーデン大佐、うちの奴らも悪気がある訳じゃ無いんだ。」サイドカーに揺られながら私は先ほどの件に関して謝罪をする。


ヴァルトヴァーデン大佐

「私の方こそムキになって申し訳ない。しかし貴方がバックアイの態度に寛大な処置をして下さった理由がなんとなくわかった様な気がします」


確かにバックアイとルーアイスは似ていると私も思う。


聖女オータム

「まぁあれだ、お互い苦労するな」


ヴァルトヴァーデン大佐

「ですね」


ヴァルトヴァーデンは私の顔を見て軽くはにかむと私もつられて笑ってしまう。


聖女オータム

「なぁヴァルトヴァーデン大佐。私は思うんだ国は違えど私達は同じ人間だ。」


ヴァルトヴァーデン大佐

「その通りですね。」


聖女オータム

「私達はなぜ争っているのだろうな…」


ヴァルトヴァーデン大佐

「……えぇ…全く持って…同感です。」


大佐と聖女。人の上に立つ人間同士各々が痛感している疑問に共感する。


そんな事を二人で話していると、丘の上に軍勢が見えてくる。


メープル

「オータム!見えて来たわ!」


聖女オータム

「あれが例のディフォリエイトの部隊か」


私達がディフォリエイトの部隊に捕虜の安否を確認する為に近づくと


二人の女性兵士が私達の前に立ち塞がる。


聖女オータム

「オータム傭兵中隊のオータムだ。先ほど捕らえたゲルマン兵で確認したい人物がいるので通してもらっても良いか?」


ディフォリエイト部隊の兵士

「ディフォリエイト様から作戦の関係上誰も通すなと言われております故お通し出来ません。」


私が無理やり進もうとすると兵士は私達を通すまいと槍を突きつける。


聖女オータム

「なんのつもりだ?貴様ら…」


ディフォリエイト部隊の兵士

「任務内容の外部への漏洩に関しましては、軍機に触れる為お答え出来ません。」


ルーアイス

「あぁ?さっさとどけっつってんだよ!」

痺れを切らしたルーアイスが立ち塞がる兵士の胸ぐらを掴むと、


ディフォリエイトの軍隊の後方から耳を擘く様な叫び声が響く。


?????????

「ahhhhhhhhhh!!!!!タスケテ!タスケテ!AAAAA!!!」


ヴァルトヴァーデン大佐

「あれは仲間達の声だ!」



慌てたヴァルトヴァーデンと共に半ば強引に奥へと進んでいくと、


そこには見るも無残な光景が広がっていた。


裸体になった死体の山…それはヴァルトヴァーデンの部下「G」ルマン兵の物だった。


それを見た彼女は悲しみのあまり、地面に膝をつけると。


ヴァルトヴァーデン大佐

「な…なんて事を…。」


あられもない姿で亡くなっているその身体は抓り千切って流血し、


無数の青痣で埋め尽くされていて、更に光を失ったその瞳からは顎先まで涙の跡が残っていた。


「陵辱」「虐待」「虐殺」、これらは平和条約によって禁止されている事。


更に言えばこれらの行為は戦場において女性に対する最も冒涜的行為である。


ヴァルトヴァーデンは転がった遺体に近づき抱きしめると開きっぱなしになった仲間達の瞳を


一つずつ丁寧に閉じる。


ヴァルトヴァーデン大佐

「これが人のする事なのか…?貴様らは!人の命をなんだと思っているのだ!」


彼女の肩は震えていた…。


ディフォリエイト部隊の兵士

「「G」ルマン兵を殺す事がこの戦争での私達の責務であります、苦しんで死ぬのも頭を撃ち抜かれて即死するのも結果は一緒です。どちらも人殺しですし人間です。」


ヴァルトヴァーデン大佐

「この戦争?何を言っている?そもそも貴様らは条約を無為にし、我ら祖国の地を無断で踏み荒らし虐殺した。もう限界だ私はこの任務はいずれ何十万という人間を救うと言われ我慢し続けたが貴様らの存在は万死に値すると判断させてもらう。」


震えていた彼女はそう答えると静かに口にし始める。


ヴァルトヴァーデン大佐

【オーデルヴィルのヴァナディースよ応答せよ私はこの決断と判断を後悔はしない…】


これは!?聖女から女神への礼装詠唱!?私がこの文言を聞いて驚くよりもディフォリエイト部隊の


幹部が先に声を上げる。


ディフォリエイト部隊の兵士

「オーデルヴィルのヴァナディース?何故「G」ルマンの左腕がこんなところに!?」


彼女達は直ぐにヴァルトヴァーデンに銃口と刃を向ける、いきなりの展開に眺める事しか


出来ない私に対しメープルは急いでバイクに乗るとキーを回しエンジンを掛け始めた。


メープル

「なにしてんのオータム!当たり一面が火の海になるわ!撤退の準備をしなさい!」


メープルに怒鳴られた隊員達は直ぐに撤退するもオリヴィアが私達の前に走ってくる。


オリヴィア

「隊長!ルーアイスがいません!」


メープル

「あのバカこんな時に何をしてるんだ!」


メープルがこめかみに青筋を浮かべると遠くから声が聞こえてくる。


ルーアイス

「おー…邪魔だ!どけ!おーいみんなどこにいんだ!」


ヴァルトヴァーデンを囲む人間の奥から誰かの声が聞こえてくる。


「ルーアイスの声だ!」とオリヴィアが声を上げる。


おそらくこの様子だとヴァルトヴァーデンを囲む兵士達のせいで私達の隊から孤立したのだろう。


メープル

「あいつは本当にバカなのか!?」


私とメープルを先頭に手前の兵士をどかしてヴァルトヴァーデンの元へ行くと


既にルーアイスはそこにいたのだが、その両手には一人の少女を抱えていた。


ルーアイスと謎の少女

「おい!なにぶつぶつ言ってんだよ、これを見ろ!まだ息がある!」


ヴァルトヴァーデン大佐

【隔壁を解放しろ…】


ルーアイスと謎の少女

「こっちを見ろって言ってんだよゲルマン野郎!」



ルーアイスは彼女の尻を思いっきり蹴り上げる。


ヴァルトヴァーデン大佐

「貴様!何をする!」


そして手に抱えている一人の少女を見せつける。



詠唱中の突然の暴行に腹を立てたヴァルトヴァーデンがルーアイスを見ると


抱えられていた少女は声を絞り出す。


謎の少女

「オー…ヴァースト…」


その少女はルーアイスが馬鹿にしていたバックアイバール・クーヘンの妹バウムであった。


ヴァルトヴァーデン大佐

「バウム…お前…生きていたのか。」



声を聞いたヴァルトヴァーデンは少女の顔に手を当てがい奇跡と言わんばかりのその顔からは


怒りの感情がなくなっていた。


バウム

「イスィ…ヒィ…ストゥ…ンドゥフォウ…アレン。」


ヴァルトヴァーデン大佐

「あぁ、お前のおかげで無事だとも。」


少女もボロボロだが息は安定している。


ルーアイス

「ったく、訳わからん能力でここを火の海にしたらそいつも死ぬだろうが。」


ルーアイスはため息混じりに言うもそれ以上二人の再開に水を刺しはしなかった。


聖女オータム

「12聖女第9席の権限を持って、「 G 」マニー兵ヴァルトヴァーデン・ジャーニー大佐とバウム・クーヘン陸曹2名を12聖女統括会議【コンクラーヴェ】に重要参考人として召喚する事を宣言する!それに当たり会議開催までの期間の間2名を「 I 」ルランド王国の元で捕虜扱いとし、それまでの間の保護を宣言する!もし両名に危害を加える様であれば、私に頭を射られる覚悟をする事だ。」


私がそう宣言するとディフォリエイトの兵士は向けていた武器を下ろし始める。


ヴァルトヴァーデン大佐

「感謝いたします。聖女オータム。」


ヴァルトヴァーデンは膝を付き深々と頭を下げているがこれくらいはして当然だ。


今回の一件は完全に12聖女連合帝国が定めた平和条約による戦時陸戦協定に反した戦争犯罪だ。


帝国の非道徳的不正行為もまだ確定している訳では無いが、どのみち真実を暴く為にも


彼女達を保護するのは現状における最重要案件だろう。


私が今後の事に頭を使っているとヴァルトヴァーデンに抱えられている


少女バウムがしくしくと泣き始める。


バウム

「バック…ン…」


ヴァルトヴァーデン大佐

「どうしたバウム?怖かったんだな、だがもう大丈夫だ私がついてる。」

ヴァルトヴァーデンは少女バウムの背中を優しく摩って気持ちを落ち着かせようとするも逆効果だったのか少女はもっと泣き出してしまった。


バウム

「ネェ…サン、バックアイ……ン…」


ヴァルトヴァーデン大佐

「あぁ!バックアイヴァールなら今首都にいるラーファイアの元に伝令を言い渡しに向かっている。直ぐに会えるさ」


ヴァルトヴァーデンは早く姉に会いたいという彼女を優しく励ます。


私達がそんなハートフルな光景に心を癒されるのも束の間の休息だった。


?????????

「あらあら?オータム?「G」ルマン兵を匿うなんて帝国への反逆は許されませんよ」


私達が抜けて来た森の方から聞こえて来たその声の主はディフォリエイトだった。


ルーアイス

「嘘…だろ?」

振り返った先にある光景を見た私含めオータム傭兵中隊全員の空いた口が塞がらなかった、


間違いないこいつが今回の黒幕だ。この光景は…この二人に見せてはならない。


バウム

「バックアイネエ…サン…っ…」


ヴァルトヴァーデン大佐

「どうしたんだバウム!だからバックアイには直ぐ会えるといっているだろう?」


何故?主犯がディフォリエイトだと悟ったのかだって?そんなの決まってる。


バウム

「アァ…バックアイ…ゴッティン…ザァクミィア…ダズエス…スェ…ルゥザアス…」


バウムはヴァルトヴァーデンの背中の方に手を伸ばす。


ヴァルトヴァーデン大佐

「なんだバウム?私の後ろに幽霊でも見えているのか?」


聖女オータム

「見るな!ヴァルトヴァーデン!」


時は既に遅かった…。


聖女ディフォリエイト

「あらあら?なんで「G」ルマンの核兵器がこんな最前線にまで来ているのかしら?」


ディフォリエイトは左手に…ある少女の頭部を抱えていた。


ヴァルトヴァーデン大佐

「貴様…貴様のその手に持っているのはなんだ?」


聖女ディフォリエイト

「これ?私達が準備をしていたら森の中から数人の「G」ルマン兵が走ってきたから捕まえたの、そしたら引きこもりの第一席の所に伝令に行くんだとか言って煩くて、もしかしてあなたの部下だったの?じゃあ返すわね。」


ディフォリエイトは持っていた頭部をまるで使い終わって飽きたおもちゃの様に


ヴァルトヴァーデンの前に放り投げる。


ヴァルトヴァーデン大佐

「バックアイ…なんて事だ…そんな嘘だと言ってくれ。」


聖女ディフォリエイト

「でもその子達何故か作戦の事を知ってたのよ、だから口を封じたのだけれど」


ヴァルトヴァーデン大佐

「口封じ?これはどう考えても拷問しているだろ!」


ヴァルトヴァーデンのあまりの痛々しさに同情せざる負えない私が口を挟む。


聖女ディフォリエイト

「口封じよ?作戦に支障を出すわけにはいかないのよ」


ヴァルトヴァーデン大佐

「じゃあ!なんでバックアイはこんな顔をしているんだ!」


ヴァルトヴァーデンは歯軋りのあまり口の端からは血を流し恨む様に睨み付ける。


聖女ディフォリエイト

「その子も含めて自白させる為に全員頭を快楽漬けにしたから別に苦しんで死んだわけでは無いわ、ただその子が気に入っちゃってね。脳みそを溶かして神経が焼き切れる絶頂を与えて目がぐりんってなってもバウムーバウムーって独り言を言っててね、あまりにもその様子がおかしかったからオータムに見せる為に首を跳ねて持ってきたのよ、その子のアヘ顔可愛いでしょ?」


こいつは何を言っているんだ?本当に理解できない…。


黙るヴァルトヴァーデンに追い討ちを描ける様にディフォリエイトは話を続ける。


聖女ディフォリエイト

「あら?怒っちゃった?でも御生憎様あなたの核兵器を使っても意味は無いわ。それにもう作戦は成功したの。ちょっと強引なやり方であなたの仲間と国に迷惑を掛けちゃったのは謝るけれど、あなたもこれから私と同じオータムを崇める民になるのだから恨み合いっこはよしましょ?」


私?なんで私の名前がここで出るんだ?挑発する為に私を巻き込むのか?


ヴァルトヴァーデン大佐

【オーデルヴィルのヴァナディースよ応答せよ…賽は投げられた…私はこの決断と判断を後悔はしない…隔壁を解放せよ…】



私は口にする。


聖女オータム

【キルデアのヴリキッドよ、聴いているか】


「隊長…?」ルーアイスとオリヴィアは私を見て目を丸くする。


聖女オータム

【この言葉を持って私は私を解き放つ】


メープル

「オータムあなた何をしているの?」


メープルは私の疑問を投げかける。


任務は…作戦は…完了した。そう…彼女はそう言ったのだ。


聖女オータム

【今この瞬間息絶えようとも、その死に値する人間になると誓おう。】


私は仲間に懇願する。


聖女オータム

「みんな私を許してくれ…。」





聖女オータム

【アーンディス…アーンイット…。】









私は引き金を引き切った。





 


つづく…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ