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第11章「マーダー」まだ間に合う?【済】

「秋」


それは死にゆく「枯葉」の季節


しかしその様は「紅葉」と語り継がれた。


「漆」「丸葉」「楓」「橄欖」「団栗」


それは「針葉樹林」をも焼き尽くし


慈悲もなく「芋の木」を灰色に染める。


刻む「年輪」の数だけ、澄んだ「森林」は「燃え盛り」


世に「み」を墜とせば、「枯れ落ちて」ゆく。


あなたはこの「秋の葉」をなんて言いたい?


カレハ・A・セプテンバー「カレハの日記」より。

第11章「マーダー」まだ間に合う?


オータム

「ふぅ、結構歩いたな。半分くらいか?」


私はメープルに中隊を預け一足先に目的地へと出発していた。


今頃はあいつらももディフォリエイトの部隊と合流した頃合いだろう。


オータム

「この辺で一休みするか。」


私は半日歩いた足を癒す為に川で足を洗うと大きめの石に腰掛け周辺の地図を広げる。


オータム

「おそらく現在地はこの辺りか、これは歩きっぱなしでも後2日はかかりそうだな」

十二聖女第一席ラーファイア・ジャーニーがいるとされている場所は「G」ルマンの首都フューラヴンカーという所だ。


オータム

「それはそれとして…」

私は河原に転がっていた石を集め小さな釜戸を作り火を起こすと、川の水を飯盒に入れて火にかける。


朝から川沿いを歩いてきた私は違和感を感じていた、何故ならここに来るまで一度も


「G」ルマン兵に遭遇していないからである。


ここは敵地、歩いていれば遭遇するのなんて森に入って木を見つけるよりも簡単だ。


オータム

「これは聖女化を使うまでも無いな。」


私は沸かしたお湯にインスタントコーヒーの粉を入れる。


川のせせらぎと小鳥のさえずりを聞き澄んだ空気の中でブラックコーヒーを口に含む。


オータム

「ルーアイスの奴がいないと随分静かだ」


そういえばルーアイスが出がけに変な事を言っていたな、


「確認したい事がある」とか「気を付けてくれ」とか。


珍しく真面目な顔つきかと思ったら、訳のわからん事を言っていきたが、


きっと一人で向かう私を心配してくれていたのだろう。


ディフォリエイトの部隊と問題を起こさなければ良いのだが…。


メープルとオリヴィアがいるなら問題はないだろう。


オータム

「んっく。」


私はコーヒーを一気飲みすると火に水をかけて出発しようと思ったのだが。


オータム

「いい加減出てきたらどうだ?」


森に複数人の人影がチラつく。


数は…、10人といった所だろう、「G」ルマンの特殊暗殺部隊か?


???

「撃て!」


合図と共に私に向かって数えきれない銃弾が飛んでくる。


良い作戦だ。この時点で奇襲は成功している。


相手が油断しているタイミングでほぼ気づかれずに包囲して銃撃、


おそらく相当に腕が立つ暗殺部隊かリーダーの頭が良いのだろう。


しかし相手が悪い「聖女」それも代理とはいえ十二聖女相手に鉛玉は


あまりにも武が悪すぎるがこれに関して相手に非はないだろう。


それも踏まえて相手には降伏してくれる事を願いたいが。


聖女オータム

「貴様らが何時間やろうと私の身にはかすり傷の一つも付きはしないぞ!」


「G」ルマン兵は草陰から姿を表すと私に「フィフイットヴァー!」と叫ぶ。


「フィフイットヴァー!」これは「G」ルマン語で意味は「糞ったれ!」。


「G」ルマン兵が戦場でよく使う言葉で私達には馴染み深い言葉だ。


ちなみに「フィーヴァー」はこの言葉をエイコーンが短縮したもので、


私たちが糞食らえと思った時によく使っているのだ。


オータム「私は十二聖女第九席代理オータムだ。第一席に座る貴様ら「G」ルマンのラーファイア・ジャーニーに話があって来た帝国の使者だ!」


「G」ルマン兵

「コロシタ!ワタシノコロシタ!シネ!シネ!クタバレ!ヒトゴロシ!」


随分な言われ様だな…。


今貴様らのやっている行為も人殺しではないのか?と問いただしたい。


聖女オータム

「銃を向けるのであればよかろう、その気持ちに答えてやる。」


私は右目に手をかざし詠唱を開始する。


聖女オータム

「今ここで…」


軍服の「G」ルマン兵

「待ってくれ!「愛」国の聖女よ!」


一人の女性が「G」ルマン兵と私の間に割り込んでくる。


「G」ルマン兵

「ヴァルトヴァーデン!?トゥーテディズンキル!ホーンイヒト…!」


軍服の「G」ルマン兵

「イスイストオンヌークリィ!」


間に入った女性と兵士が言い争いを始めたと思って見ていたら


「G」ルマン兵士達は次々と銃を下ろし始めたのでおそらくこいつがこの兵隊の親玉なのだろう。


そういえばこいつ、さっき私と普通に会話が…。


聖女オータム

「なんだ貴様は?」


軍服の「G」ルマン兵

「愛国の聖女よ、私は「G」マニー国家陸軍直下聖女親衛隊のリーダー、ヴァルトヴァーデン・ジャーニーであります!階級は大佐の位置に付いております。」


大佐…、結構な身分だが何故こんな場所に大佐がいるんだ?


いくらなんでも普通の人間でしかも階級の高い人間がこんな最前線で戦うはずがないと思うが、


まさかこいつ聖女なのか?


聖女オータム

「大佐の身分の貴様が何故?こんな所にいる。」


私が質問すると、先ほど怒鳴っていた兵士がまた怒鳴り始める。


「G」ルマン兵

「オマエ!ワタシノナカマ!コロシタ!」


何を言ってるんだこいつは、なんかどっかで見た事ある様な気もするんだが。


聖女オータム

「それを言うのであればお互い様だ。貴様らに私の同胞も殺された。」


「G」ルマン兵

「チガウ!ワタシノ!イモウト!オマエラニツレテカレタ!」


連れて行かれた?なんの事を言っているんだ全くわけがわからんな。


軍服の「G」ルマン兵

「私達は先日の海岸での防衛戦で生きながらえた残党兵なのです。現在そちらに捉えられている捕虜は皆私を生かす為に残って戦ってくれていたのです。そして彼女の妹があなたとあなたの仲間に捕縛されたのを見たと彼女は言っています。」


あぁ、あの時ルーアイスにいびられていた兵士か…


軍服の「G」ルマン兵

「先ほど聖女様は私の妹に話があると聞いたので無礼ではありますが割り込ませていただきました。大佐である私の首を献上いたしますのでどうか穏便にお話とやらをお聞かせ願います。」


このヴァルトヴァーデン?とやらは何を言ってるのだ?私はこいつを知らない。


聖女オータム

「妹?私は貴様の妹の話なぞしていないが」


ヴァルトヴァーデン大佐

「私は十二聖女第一席ラーファイア・ジャーニーの姉であります。」


そう言うことか、これは私としても好都合だ。


敵の幹部しかもラーファイア・ジャーニー直属の部下にして親族であるこの人間に話を通せば、


円滑にラーファイアに会う事ができるかもしれない。


私は能力の解放を抑え、彼女に今回の任務でもある


十二聖女第一席ラーファイア・ジャーニーへの降伏宣告の話をする事にした。


ヴァルトヴァーデン大佐

「降伏勧告?それを伝える為に来たと?」


聖女オータム

「あぁ、そうだ、私とて無益な殺生はしたくないのでな、このまま聖女ラーファイア・ジャーニーの元まで案内していただけるのであればこの度の無礼は水に流そう。」


ヴァルトヴァーデン大佐

「それは流石におかしな話ですよ。」


聖女オータム

「おかしな話?」


降伏勧告を受け付けないつもりか?


確かこいつのところの聖女の能力は「恐怖」。


それによって降伏という概念が存在しないという事なのか?


ヴァルトヴァーデン大佐

「そもそも私達は宣戦布告すらしていません、受けてません。」


聖女オータム

「宣戦布告をしていない…?どういう意味だ?」


ヴァルトヴァーデン大佐

「そもそも私達は戦争をしていません。」


聖女オータム

「昨日上陸作戦の際派手にどんぱちしてたではないか!」


私は言葉にできない焦燥感に襲われ、身体中から冷や汗を垂らす。


ヴァルトヴァーデン大佐

「いきなり銃や大砲を撃ちながら海から敵兵が来れば、私達国防軍は国を守る為に戦いますよ。」


こいつらは国を守る為に戦っているだけ…?


いや戦争から国を守るのは当然だがしかし宣戦布告をしていない?


私達は宣戦布告を受けてこの上陸作戦を敢行していたはずだ。


聖女オータム

「し…しかし、私達は貴様ら「G」ルマン国家の代表聖女ラーファイアが帝国が提案した十二聖女による国家同盟を拒み、この戦争が勃発したと聞いているんだが」


ヴァルトヴァーデン大佐

「確かに戦争をしたく無い妹は十二聖女国家同盟を拒んでいます。」


聖女オータム

「戦争をしたくない?ではなぜこの戦争を許しているんだ?」


ヴァルトヴァーデン大佐

「妹が臆病だからでしょう、だからこそ私達は妹と国を守る為に勇敢に戦うのです。」


聖女オータム

「皆聖女ラーファイアの「恐怖政治」で無理やり戦っているのではないのか?」


「G」ルマン兵

「セイジョサマハ、セオッテル」


聖女オータム

「背負う?」


ヴァルトヴァーデン大佐

「はい、私の妹の能力は「恐怖」を背負う事で国民に勇気を与え、国民は妹を勇敢に守るのです。私達はどんな負け戦であっても他国に抗い、他国からの圧力にも屈しない。それ故によく「分からず屋」や「馬鹿」と揶揄される事も多いですが。」


つまり恐怖を与えて従えているのでは無く。


恐怖がない事によって強大な敵に立ち向かう事が出来るのか!


そして勇気の恩恵を与えてくれた聖女を国民は全身全霊で守るという仕組み…。


これは恐怖政治と根本的な仕組みは似ているが本質が真逆だ。


私はヴァルトヴァーデン大佐にこの戦争に至るまでの経緯と今回の作戦について詳しく話し


大佐に私の軍まで敵国の使者とし来る様に伝えた。


ヴァルトヴァーデン大佐

「かしこまりました。そういう事情であれば私が直接向かった方が早いでしょう。バックアイ達にはこのまま首都フューラヴンカーに向かわせラーファイアにこの件を伝えさせます。」


ヴァルトヴァーデン大佐は兵士達に母国語で説明し今後の予定について話すのだが…。


「G」ルマン兵

「コイツハ!ナカマ!ナンニンモコロシタ!コイツノクビ!コロス!」


流石にそんなうまくは行かないか…、


彼女だけで無く「G」ルマンの兵士全員納得がいっていない様子だ。


当たり前だ。勝手に攻め込んで来て人を殺しておいて、


上層部との行き違いの事情を理解しろなんて言われても飲み込める筈がない。


ヴァルトヴァーデン大佐

「私達も、敵兵を撃ち殺しただろう!ならばお互い様だ!」


大佐の言葉に文句を言っていた「G」ルマン兵が黙る…。


ヴァルトヴァーデン大佐

「この戦争に私は何か他の計画的な意図を感じます。一度はっきりと確かめた方がよいかと思いますし、聖女様は発砲した私達を一度見逃していますし。」


バックアイ

「デモ!ナカマヲコロシタ!イモウトモ!イモウトハヒトナンカコロセナイ!」


聖女オータム

「貴様の妹は生きている。私が保証する。なんならこの戦争の正当性がない場合は即時変換する様私が取り計ろう。」


バックアイ

「ソンナノ!シンジラっ!」


ヴァルトヴァーデン大佐

「落ち着けバックアイ。それを確かめる為にも私が直接行って見てくる。」


バックアイ

「ヴァルトヴァーデン…、オーケー、モシイモウトノ「バウム」「ヴァルトヴァーデン」ニナニカアレバオマエ!コロス!」


というとバックアイと呼ばれる彼女を含めた残りの「G」ルマン兵士達は


本件をラーファイアに伝える為に首都フューラヴンカーへと向かった。


ヴァルトヴァーデン大佐

「聖女様、どうかバックアイヴァール・クーヘンを許して下さい。妹の件からずっとあの調子なんですが普段はとても優しい子なんです。」


オータム

「ああいった口ぶりには慣れているから別に気にしていない。」


うちの中隊にも似た様な人間がいるしな…。


オータム

「それよりもこの現状は緊急事態だ、急いで後方に戻ろうと思っているのだがいいか?ヴァルトヴァーデン大佐」


彼女は自分のバイクに跨るとエンジンをかけた。


ヴァルトヴァーデン大佐

「かしこまりました、私の方がこのあたりの地形に詳しいので聖女様はこちらのサイドカーにお乗りください。」


私は言われた通りサイドカーに乗り、自分が来た道を戻るのだった。


これはとてもマズい事になっている気がする。無事でいてくれよ皆。


小一時間バイクで来た道を戻る中私は急に始まった敵兵とのツーリングという


謎の初体験をしており何も喋る事ができなかった。


そんな空気に気を使ってくれたのかヴァルトヴァーデン大佐の方から話始める。


ヴァルトヴァーデン大佐

「一つ疑問なのですが、何故聖女様は私の言葉を信じたのでしょうか?私があの場から逃れる為に言ったデマかせの可能性もあったと思うんですが。」


オータム

「信じてるかはわからないが、私自身この戦争に違和感を感じたのもあったからだ。仮にお前が私を騙していたとしても部下を守る為に自分の首を晒す大佐なんていないと思っただけだ。そんな奴がいたらそいつはお人好しのバカだ」


ヴァルトヴァーデン大佐

「はは、違いありませんね(笑)しかしあなた様にメリットがあるとは思えないのですがこの戦争がもし不正だったとすれば、それを看破した聖女様には最悪の場合、国家反逆罪などに問われる可能性もありますし」


オータム

「うむ…そうだな。」


私はヴァルトヴァーデン大佐に今の私の置かれている十二聖女第九席代行という立場と


私たちの国家について軽く説明した。


オータム

「つまり、もしそうなってしまったら貴様の国で傭兵でもやるよ。」


ヴァルトヴァーデン大佐

「なるほど今はほとんどの国家が帝国の傀儡国家というわけですね。理屈はわかりましたがオータム様は十二聖女にも関わらず欲も少なく地位や名誉と言った物に囚われていないのですね」


オータム

「天涯孤独の私達にとって母国なんぞ二の次だ」


ヴァルトヴァーデン大佐

「しかしそれでは母国「I 」ルランド国民は困るのでは?」


オータム

「知ったことか。私達は私達の為に戦争を終わらせたい。だから戦っているのだ。その理想に最も近いと思ったから帝国側にいたが、その帝国に不正の疑いがあるのなら真実をあばき追求するまで。私にとって最も大事なのは自分の仲間を守る事、その私のレギオンが今帝国軍と共にしているのが心配だからこうやって作戦を放り出して来た道を戻っているのだ」


ヴァルトヴァーデン大佐

「なるほどそれを聞けば聖女様の行動に筋が通りますし、聖女様にも欲があると言う事がわかりました。」


オータム

「私は我が儘なんだ。代行とはいえ十二聖女第9席だからな、こういう考え方は十二聖女という立場と力があるからこその思想だ。」


ヴァルトヴァーデン大佐

「確かに我々には到底出来ない考え方です。久しぶりに妹の話を聞いたときの事を思い出しました。」


オータム

「久しぶり?妹とはあまり合わないのか?」


ヴァルトヴァーデン大佐

「そうですね、必要な事だと言ってフューラヴンカーの地下に自ら幽閉されてから、かれこれ2年3年は顔を合わせて話をしていないですね。」


オータム

「そうなのか…」


なんか申し訳ない事を言ってしまった様な気がする。


ヴァルトヴァーデン大佐

「気にしないでください、妹が必要な事というのであればそうなのでしょう。姉は妹の我が儘を聞くものなんですよ。」


オータム

「そういう物か…ん?止めてくれ。」


気配を感じるおそらく「G」ルマン兵だろう、


50人以上いるがヴァルトヴァーデン大佐に事情を説明しもらえれば問題はない筈だ。


しかし殺意が出たまんまだな、もうとっくにヴァルトヴァーデン大佐の顔は認識できる距離のはずだが…。


謎の兵団

「両手をあげてバイクを降りろ!これは警告だ!今すぐに両手をあげてバイクを降りろ!怪しい行動をすればすぐに発砲する!」


この声…。


オータム

「メープルか!」


私は身を隠す為にかぶっていた布を剥いで大声を上げる。


メープル

「オータム?」


何故かは分からないがそこにいたのは私の中隊員達であった。


ルーアイス

「隊長!皆!隊長だ!このクソ「G」ルマン人!隊長に何してやがる!撃ち殺せー!」


ルーアイスの部隊がヴァルトヴァーデン大佐に銃口を向ける。


オータム

「やめろ!やめろ!やめるんだ!」


慌てて私は間に入ると。


オリヴィア

「何してるんですか隊長!殺されますよ!」とオリヴィアの部隊まで銃口を向け始める。


メープル

「オリヴィア!ルーアイス!銃をおろしないさい!オータムに敵兵が化けているかもしれないわ!私が確認する!」メープルは私達に銃口をむけたまま私に質疑応答をする。


メープル

「答えなさい!でなければ発泡します!」


私が聖女の力を使えば良いだけの話だとは思うが、怪しい動きに反応して撃った弾が万が一にも


ヴァルトヴァーデン大佐に当たると面倒だと思い私は答える。


メープル

「ルーアイスのサングラスはどこで買ったものかしら?」


オータム

「それは買ったものでは無く戦場で拾った物だ」


メープル

「オリヴィアが普段吸っているタバコの銘柄は?」


オータム

「アンラッキーストライク」


メープル

「先日亡くなった同胞の名前は」


オータム

「【エイコーン・F・ノーヴェンヴァー】

【マニーホット・L・ノーヴェンヴァー】だ」


メープル

「そう。合っているわ、では最後に私と出会ったのはどこ?」


オータム

「北「 I 」イルランドだろう?」


メープル

「詳しくその状況を話しなさい!あなたが本当にオータムなら答えられるはずよ!」


オータム

「わかったよ、北「 I 」イルランドのそれこそこの森みたいな場所で悪漢に襲われて犯されそうになっていたお前を私が助けた。」


メープル

「正解よ…あなたは本物だわ、皆も納得できるわね?銃を下ろしなさい。」


とメープルが言うと中隊員は銃を下ろした。


オータム

「全く私の聖女の力を見れば良いだけだろ」


メープル

「えぇ、けれど操られている可能性もあると思ったから試させてもらったわ。」


ヴァルトヴァーデン大佐

「生きた心地がしなかった。」


ヴァルトヴァーデンは腰が砕ける様にその場に座った。


メープル

「で?オータムそこの「G」ルマン兵のお姉さんは誰?何?浮気?」


………。浮気ってなんだよメープル……。


オータム

「お前らこそ何故こんな所にいるんだディフォリエイトの部隊にいた筈だろ?」


メープル

「私達も訳があってディフォリエイトの部隊から離れました」


オータム

「無断でか!?」あれほど問題を起こすなと言っただろうに!


てかなんでディフォリエイトは私との約束を破るんだよ!


ルーアイス

「それよりも隊長こそなんでここに?フューラヴンカーに向かってると、それにそこの女についても説明してもらいたいんだが?」


ルーアイスがヴァルトヴァーデンに指を差す。


オータム

「どうやら私達は騙されていた様だ。それについて私から詳しい話をしたいんだが少々刺激の強い話なので場所を変えたい」



私は小隊長3人について来てもらって中隊から離れた川辺に移動した。


そこで私は小隊長3人に首都フューラヴンカーに向かっていた際に起きた出来事を


ヴァルトヴァーデン大佐を交えて詳しく詳細を話した。


ルーアイス

「そんな話を信じろってのか?この「G」ルマンのお偉いさんが嘘を付いているかもしれないだろう?」


ルーアイスはサングラス越しにヴァルトヴァーデン大佐を睨みつける。


ヴァルトヴァーデン大佐

「私は真実を伝えたまで、信じるかどうかはあなた達の自由ですが、「G」ルマンの誇りと私の首にかけて真実をお伝えしております。」


メープル

「しかし…これが真実なら大問題よオータム。帝国の信用が落ちるどころの騒ぎでは無いわ。帝国は条約にて必ず宣戦布告の義務がある事を謳っていた筈だし…」


メープルの言う通り【宣戦布告をせずに戦争】


これはどう考えても【平和的解決】のプロパガンダを掲げる国のする行いではない。


オータム

「そういえばお前らが何故ここにいるか聞いていなかったな。」


メープル

「私達も一○三○ごろにディフォリエイトの部隊に合流したのだけれど、聖女ディフォリエイトがどこを探してもいなかったの。」


オリヴィア

「相当な数では合ったんですが、聖女ディフォリエイト様が率いる本部隊だけいなかったと思います。そしたら急にルーが隊長の所に向かった方が良いって言い出して抜け出して来たんです。」


ルーアイス

「隊長…この作戦。私達をディフォリエイトの所に預けたっすね?」


ほんとにコイツは勘の良いガキだな。


オータム

「メープルお前か?」


メープル

「私は気付いていたけど、違うわ。この子が勝手に気が付いたの。」


ルーアイス

「指令書に追加されていた最後の一文、あれは隊長の字だ。」


はぁ…。(しかし、ディフォリエイトの奴、これじゃ仮にはならんぞ。)


ルーアイス

「違和感を感じた私が聖女ディフォリエイトがどこにいるか聞いて回ったんですが「軍機」の一点張りと来やがった。隊長…これは本格的に臭ってませんか?この「G」ルマン人の言う事が仮に本当だとしたらの話ですが。」


オータム

「あぁ、確かにかなりきな臭いな。とりあえず帝国にも一度確認を取りたいので後方の部隊へ一度帰還するとしよう。」


ルーアイス

「そうっすね。」


私達は中隊員に今の内容をかいつまんで説明し理解して貰い出発しようとした矢先。


ルーアイス

「なんで付いてくんだよこっからは私達が隊長を先導する。お前は「G」ルマン領に帰れよ」


ルーアイスがヴァルトヴァーデンに突っかかる。


ヴァルトヴァーデン大佐

「私は本件とは別件で捕らえられた捕虜の生存確認に来たのですが、バウム達は無事ですか?それが確認できるまで本国へは戻れません。」


ヴァルトヴァーデン大佐は目を伏せて答える。


ルーアイス

「バウム?しらねぇな、誰だそいつ。」


オータム

「お前がいびっていた「G」ルマン兵だ。」と私が言うとルーアイスは笑い出す。


ルーアイス

「あぁ!あのビビって小便漏らしてた奴か!はっ!臆病な兵士がいると大変だな!」


とルーアイスが言った途端ヴァルトヴァーデンの顔が急に険しくなる。


ヴァルトヴァーデン大佐

「貴様…」


ルーアイス

「あぁ?」


ヴァルトヴァーデン大佐

「訂正しろ!」


ルーアイス

「てめぁどの口が言ってんだよ!」


ヴァルトヴァーデン大佐

「彼女は確かに人を殺める勇気はなかったが上官である私を逃す為に、私にできる事はこのくらいしか無いと言って残った勇敢な兵士だ!私をいくら愚弄しても構わんが私の部下への愚弄は許さない!」


その部下を想っての鬼気迫った表情を見た私はやはり彼女は人の上に立てる人間だと認識させられる。


正直私の仲間に欲しいくらいだ。


ルーアイス

「それはお前が無能だからだろうが!」


オリヴィア

「やめよう?ルー。そもそもこの件が本当だったら私達は罪の無い「G」ルマン人を沢山殺めていたと言う事になるわ。」


オリヴィアが止めに入るも激昂し頭に血が上ってしまったルーアイスは止まらない。


ルーアイス

「でも!私達は悪く無いぞ!騙されてたんだから!それに仲間だって殺された!」


今度はメープルがルーアイスの胸ぐらを掴み静かに語りかける。


メープル

「仮にだ、仮に、ヴァルトヴァーデン大佐の言う事が本当だとして、お前はこの戦いで殺した人の墓の前で同じセリフが吐けるか?」


ルーアイス

「っ…。」


この一言にルーアイスは歯を食いしばる。


メープル

「ほらっ!答えてみろ!言えるのか!」


ルーアイス

「…それは…。」


メープル

「敵兵にエイコーンの墓の前で同じ言葉を吐かれたお前はその言葉を許せるのか!」


メープルの鬼気迫る問答にルーアイスは考えると、ヴァルトヴァーデン大佐に頭を下げる。



ルーアイス

「わかったよ。お前の部下をバカにして悪かった。」


ヴァルトヴァーデン大佐

「事情が事情だ。本件に関して私は君達をこれ以上責めるつもりは無い。原因は別にある。それに私が無能なのは本当の事だ何人もの部下を死なせた。そして君の言う通り私達も君達の仲間をたくさん殺した。お互い様と簡単に割り切れないかもしれないが今は一時休戦協定を結んで欲しい」


ヴァルトヴァーデン大佐は被っていた軍帽を取り私達に深く頭を下げる。


ルーアイス

「悪いがお前の部下は捕虜にした時にディフォリエイトの憲兵隊に預けちまった。申し訳ないが完全に無事とは言い切れないぞ。」


オータム

「先を急ごう。」と私が言うと大佐はバイクに股がりエンジンをかける。


ヴァルトヴァーデン大佐

「ではノルトホルツまで最短の道を使って先導いたしますので、みなさん私の後を着いて来てください。」



そうして私達は急ぎノルトホルツのテントへ戻るのであった。


つづく…。

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