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遺言

作者: 春ウララ


昨日、私は死ぬことを決意しました。

きっかけは些細な事であり、簡単に言えば金銭的な問題である。生きていくにはお金が必要であり、お金を稼ぐには働かなければならない。

その繰り返しに僕は飽きてしまった、堪えられなくなってしまったのである。某スマホゲームでは運極を作るために運極を作るの繰り返し。馬鹿げていると非難する評価を見たことがあるが、この世界はどうであろうか?

人は生きるために金を稼ぐ

食べるために、住むために、養うために・・・

それが世界の仕組みであると、身をもって体感した僕は消費社会から逸脱する事を選ぶことにする。

月々、数十万の金を稼ぎ、数十万の金を消費する。たまに節制し、いくらかの金をため込み、その金も何かに使っていく。

なにかを恨むことはしない。

タイトルはシンプルな遺言としたわけだが、別に今から首をくくる訳ではない、煉炭や飛び降りも考えてみたものの、味がない。今まで、20数年の全てを捨てて旅に出ることにした、住み処を交遊を、家族を・・・。名前をつけるのなら、死への旅立ちである。そして、もしくは新たな自分へと生まれ変わる創世の旅とも言えるのではないだろうか?

親や、親しいモノ達には遺言として手紙を送りました。そして、私がこの数十年1番世話になったネットと携帯電話。それを使って1つの遺言を残すのも、また良いかと思ったのである。

愛する両親。何度も過ちを繰り返し、励ましてくれた我が愛する両親。ありがとう、あなたの息子はようやく、考えて選ぶことが出来ました。現代社会で生きてくことが出来ない息子は、何かを奪うこと、何かを捨てることはなく。ただ、自らの生を捨てることにします。選び捨てることにします。老いた身を案じ涙が溢れ、我が身を案じてくれる心に涙が溢れる。親不孝な子なのかもしれません。ただ、あなた方は、僕に好きに生きなさいと何時までも言い続けてくれた。辛いときは絶対に相談しなさい、私たちはずっとお前の味方だよと。ありがとうございます、世界で1番、尊敬する母と父。もしもう一度会うことがあっても、僕の身も心も死んでいることでしょう、もしくは生まれ変わっていることでしょう。愛しています、どこまでも心を根本に。

反抗期のなかった僕はきっと、この社会に反抗的なのでしょう。親や教師に反抗しなかった半面、僕は生き方に反抗しました。自分の生や未来を賽の目の様に転がす事しか出来ないのです。

過去への後悔を持つのもやめにしました。受験に落ちたこと、自転車の窃盗で補導されたこと。仕事をクビになったこと。何かあれば、勝手に何処かへ消えようとする僕を、ただ1つだけ。あの娘の事をのぞけば。

唯一、僕は彼女のために生きようと思えた。普通に暮らし老いていくことはしたくないと強く考えていた僕も。彼女と共に暮らすためなら、その決意を捨てて心に楔をかけて生きられると。何故、あの時。僕は彼女を追わなかったのでしょう。もう一度、好きだと伝えなかったのでしょう。そんな後悔こそ無駄な事、始めるのに遅いなんて事はないように彼女へ今からでも好きだと伝えればいいのではないか。

だがそれでも全て同じこと、人は死ぬまで金に縛られる。愛にも金がかかり、無償の愛などない。全ての事柄に金が絡み、金がかかる。金に無頓着であった僕もそれくらいの事はわかる。くだらない、くだらない。むなしい空虚さしか感じられない。100万円がお年玉で貰えたとして人は幸せになれるのか? 僕はなれないと思う。それが1億だろうが、1兆だろうが。結局、それを消費するために生きなければならない。そして、消費された金を稼ぐためにまた人生を消費しなければならない。その繰り返しは動物的なことかもしれない。アリも毎年、毎年冬を越すために夏の間、せっせと食糧を溜め込む。

僕は死ぬまでただ、物事を書いて暮らせれば良いと思っていた。本を読み、考え。人と会い、考え。言葉にして遺していく。遺された言葉は、ずっと生き続ける。自分に才能があればそれも出来たのかもしれない。僕は自分の事を天才だと思っていた、勉強も運動も。仕事もそこまでの努力をせずに上手くこなせていたからだ。

だが、僕は凡才であった。こなせるだけで、生み出すことは出来なかったからである。

非動物的な考えを持てる数少ない職種の1つは作家であると考える。いや、結局突き詰めれば言葉を金にすることなのだから変わらないのだが。例えば、金を使わずに暮らす方法を記した本を出版し、その印税で暮らすことだって出来るわけである。それは、役者も同じこと。ホームレスを演じて、温かい家に住むことが出来る。どちらも二律背反であるが、面白味のある職種だと思える。


皆さん、さようなら。

世界の変革か、自分自身の変革、もしくは死が行われるまで______

最後に僕の言葉と、最も愛した言葉を遺して。



赤ん坊が泣くのは、この世界に産まれた不幸を呪ってのことである。


死は始まりにすぎない。


人生は劇的であり、まるで舞台の一幕が、日々開かれて閉ざされている。


大丈夫、大丈夫。人はそう簡単に死にはしないよ______


2019.1.27

しがない物書きより


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