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荒鷲、西の空を舞う  作者: ひえん
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第7話 怪鳥狩り

 英国からの技術協力により日本の航空戦力には様々な変革がもたらされた。航空機に搭載されている無線機の性能向上、電装系の見直しによる整備性と信頼性の向上。一見地味な改修ではあるが、たったこれだけでも空の戦いは大きく変わるのである。


「敵機、11時下方。数6、機種はJu87」


 敵機発見の無線が鳴り響き、九七式戦闘機の編隊が敵機目がけて降下する。

 今までは無線機の信頼性が悪く手信号などで意思疎通を行っていた。だが、無線の信頼性向上の結果、音声で僚機とやり取りができるようになった為、空中戦が優位に進むようになったのである。


「今田、ちゃんと付いてきているか?」

「ばっちり後ろにいます、小隊長!」

「お前が先に行け。後ろはしっかり守ってやる」

「了解!」


 意思疎通の円滑化は僚機の状態を把握しやすくなり、編隊空戦を有利に行うことが出来るのである。更に地上からの無線連絡によるサポートによって、迎撃や地上部隊の支援等もやりやすくなった為、航空作戦の幅は大いに広がったのであった。


 一方、日本から英国には機体や武器以外にも人員を派遣していた。中国戦線での戦訓やドイツ製航空機の情報を直に伝える事で、ドイツ軍に対抗する為の新たな航空機開発と新戦術の構想を日英共同で進めていた。


第七話 怪鳥狩り


 イギリス空軍第700中隊の九七戦は目標であるHe111の編隊を捕捉。直ちに攻撃すべく、優位な位置から攻撃を開始した。しかし、他の敵機が雲中から次々姿を現す…合計で約20機、数が多い。ここまで多いと爆撃機の防御火器の密度は分厚くなり、下手に飛び込めば戦闘機でも危うくなる。アンソニーは中隊長に進言する。


「中隊長、自分が先に突っ込んで敵機の注意を引き付けます」

「了解、くれぐれも無茶はするなよ!」


 アンソニーの九七戦が敵編隊の右端の機を狙いダイブを開始。他の機は敵機の注意がアンソニー機へ向いた瞬間を狙うべく待機する。照準器に映るHe111の姿がぐんぐん大きくなる。狙うはエンジン、航空機最大の弱点である。相手もこちらに気づいたらしい。胴体上部の銃座が一斉に火を噴いた。約20機から放たれる曳光弾がこちらへと次々飛んで来る。それが当たらないことを天に祈りつつ、機銃を撃った。そのまま敵編隊下方まで突っ込み一度離脱、結果を見る余裕も殆ど無い。狙った機の右主翼から煙が出ているのをちらりと見た程度だ。敵機の各銃座はこちらへ更に銃弾を撃ち込んでくる。


「獲物が引っかかった!各機突っ込め!!」


 狙い通りにHe111の注意がアンソニー機へ集中した瞬間を見計らって他の中隊機が襲い掛かった。慌ててHe111の銃座が撃ち始めるものの、各銃座が目標をばらばらに狙った為、防御火器の密度は薄くなった。そして、同じく一撃を浴びせて次々離脱。アンソニーは再び戻って来てもう一度銃撃を浴びせた。編隊最後尾のHe111に機銃弾を叩きこむ。すると、機体下方の銃座が被弾したのか火を噴く様子が見えた。更に先の攻撃によっていくつかの機体が速度と高度を落として編隊から脱落していく。


「命中!敵編隊の陣形が崩れ始めた」


 そして、中隊各機が再び戻って来て攻撃を行う。このまませっかくのチャンスを逃すわけにはいかない。敵編隊が混乱に陥った為、もう一度離脱したアンソニーも急いで敵編隊に攻撃を行う。だが、九七戦の小さな7.7mm機銃は敵機の重要部を狙わなければ効果的なダメージを与える事が難しい。狙う場所をよく考えて撃たねばならない。機体の重要部や銃座へ機銃弾を狙って機銃弾を撃つ。その瞬間、被弾してエンジンから煙を噴いたHe111が爆弾倉を開いた。爆弾を捨てて逃げるつもりである。黒いものが次々と下へ落ちていき、傷ついたHe111はゆるやかに旋回して逃げていく。それを見送りながら次の機を狙う。爆弾を放棄し、作戦遂行を諦めた機体はすでに脅威では無い。逃げる相手を永遠に追い回すよりも爆撃能力を残している機を狙う方が得策なのだ。


「深追いするな。まだ侵攻を続けている奴を狙え!」


 中隊長からも指示が飛ぶ。ここまでの攻撃で敵機は5機ほど減っただろうか。しかし、未だ大多数が健在だ。相手の攻撃目標がどこなのかは分からないが、これ以上内陸に侵入されるのは阻止せねばならない。


「被弾した!駄目だ。エンジン不調、帰還する」


 無線から焦った声が鳴り響いた。こちらにも被害が出始めたのである。他にも被弾している機がいるかもしれない。これ以上、戦闘が長引くのはこちらにも大きな負担になりかねない。そう考えていると、再び無線が鳴った。


「そこの九七戦へ、こちらも攻撃に加わる!」


 その瞬間、ハリケーンの編隊がHe111に襲い掛かった。増援がやって来たのである。火力は九七戦よりハリケーンの方が圧倒的に高い。爆撃機相手に戦うのなら彼らの方が向いているだろう。事実、主翼に積まれた多数の7.7mm機銃が一斉に火を噴く様子は圧巻である。それを見て遂に諦めがついたのか、He111が爆弾倉から一斉に爆弾と白い紙をばら撒き、針路を変えて逃げ出した。どうやら敵機は爆弾だけでなく、フランス国民の戦意を削ぐためのビラを積んでいたようだ。


「中隊各機、追撃は今来たハリケーンに任せて帰還するぞ。お疲れさん」


 中隊長から帰還の指示が飛ぶ。すでに残弾や燃料も少なくなり、パイロットの疲労も考えての事だろう。九七戦は次々に基地へと機首を向けた。


風邪ひいたり色々とトラブったりでずるずると長引きながらも続きが出来ました。

描写がもっと深く書ければいいなあ、と考えてはいますがなかなかうまくいきません。もっと精進せねば…

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