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荒鷲、西の空を舞う  作者: ひえん
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第11話 フランス国境の衝突

 中国戦線に続々と現れるドイツ兵器、その出所を探るべく日本陸軍は必死で輸送路を探していた。中国国内のスパイや侵入した偵察隊、更にはソ連やモンゴル国内等でも諜報活動を活発に行って探りを入れていた。そして、遂に一つの手がかりが手に入った。

 ソ連国内のスパイが貨物列車に満載された兵器を確認したのだ。だが、それらの送り先が問題であった。欧州方面からではなく、アジア方面から欧州へと運ばれる貨物だったのだ。報告を受けた関係者は頭を抱え、一つの結論に至った。

 「中国のドイツ兵器は輸入ではない、全て国内で生産している」と。


第十一話 フランス国境の衝突


 イギリス空軍の奇襲攻撃隊がフランス国内に帰還した。だが、煙を噴きつつ最寄りの基地に滑り込む機体が出る等、部隊は満身創痍の有様であった。更に人員と機材に損失を出してしまったこともあり、攻撃を終えた部隊内には重苦しい雰囲気が漂っていた。暫くは戦力の立て直しを図らねばならないだろう。そんな中、基地に緊急発進の警報が鳴り響いた。

 一方的に攻撃された側も黙ってはいない。ドイツ空軍の各航空隊が一斉に飛び上がる。目指すはフランス国内、国境付近の航空基地と軍事施設に対する報復攻撃を行う為である。だが、急な出撃であった事から戦闘機と爆撃機がうまく合流できず侵攻を開始する事例も多々起こった。そして、大規模な機数がドイツ国内上空で悠々と編隊を組んでいた事、昼に近い時間であった事からフランス側の監視哨からいち早く発見され、各地の基地に敵機来襲の急報が鳴り響く事となったのである。緊急発進の命を受けたフランス・イギリス空軍の戦闘機が各地で轟音を響かせて空へ飛び上がる。対空陣地でも弾薬の装填を終えた対空火器が空を睨む。そして、最前線たるマジノ線にドイツ空軍He111の攻撃が始まった。


 尋常ではない数の敵機が飛び上がったという報が舞い込み、先の攻撃を終えたばかりの第700中隊に中隊長は即座に指示を出した。


「飛べる機は空中退避!ここも危ないぞ!飛べない機はどこかに隠せ!!」


 九七戦は燃料弾薬の積み込みも途中であったが、作業を打ち切ってすぐにエンジンを回す。予備機として置かれていた機も飛び上がる為に動き出した。稼働機は全て飛ばすつもりである。戦闘機も地上に留め置かれていてはただの的になってしまうのだ、それなら空に飛び上がって身を隠した方が安全である。その間にも緊急発進に備えていたフランス機が真っ先に飛び上がって行く。

 パイロットのアンソニーはビスケットを齧りながら機体を動かす。愛機は地上攻撃時、幸いにも被弾なく帰還することが出来た。機体の調子は良好でいざ空戦に巻き込まれても何とかなるだろう。だが、周りを見ると胴体に穴が開いている機体もいる。エンジンや機体重要部に被弾していない為、飛べると判断したのだろう。だが、戦うにはあまり良くない状況だ。最悪の場合には傷を負った彼らを庇いつつ戦わねばならない。覚悟を決めて滑走路から飛び上がった。飛び上がってしばらくすると、遠くの方で黒煙が立ち昇るのが見えた。仏独国境の辺りだろう。上空で何かが爆発したような閃光が見えた。大規模な戦いになっているのだろう。今はひたすら上昇し高度を可能な限り得る必要がある。低空で敵機に襲われると必然的に不利になる為、とにかく危険なのだ。そんな中、中隊長から無線が飛んだ。


「2時下方で空中戦、フランス機だ」


 そちらを見るとドイツのBf109とフランスのMS406が激しいドッグファイトを繰り広げている。敵味方合わせて20機ほどだろうか。敵味方とも目の前の敵機に喰らい付いている。


「被弾した機や状態が悪い機は西に退避しろ。戦える機は味方に加勢するぞ、続け!」


 中隊長の後ろに続いて降下、乱戦に飛び込む。手近なBf109を狙い、照準器に捉える。こちらは降下しながら飛び込んだ為、スピードの付いた状態だ。獲物がすぐに近づいてくる。エンジン辺りを狙って一連射浴びせる。だが、相手は直前に気付いたらしく機体を横滑りさせてエンジンへの被弾を免れたのだ。そのまま、相手は旋回して逃げていく。この状況で深追いは危険だ。どこから敵機が狙っているか分からない。いつの間にか後ろに付かれて奇襲されるリスクもある。


「敵機を引っ掻き回せ。一機だけに喰いつくな!」


 無線で誰かが叫ぶ。相手を疲れさせるのも手だ。空中戦は心身ともに消耗が激しい。それが長く続くと疲労し集中力を欠く事となるのだ。そうなれば撃墜のチャンスは大きく増す。その瞬間を狙うのだ。更に相手は侵攻側、迎撃する側と違って帰り道もある。その分まで考えて戦わねばならない。大きなプレッシャーとなるだろう。だが、こちらも一度任務を終えた身だ。体力的にも不安がある。そう考えながら操縦桿を引く。旋回しながら手ごろな敵機を追い求める。

 すると、下方で味方機を追い回すBf109が見えた。相手は必死なのか地上ギリギリでも追いかけるのを止めようとしない。味方を救わねば、そう直感的に思って機首を下げた。Gが少なくなって一瞬体がふわりと浮くような感覚を覚えつつ、機体のスピードを上げる。上から覆いかぶさるように敵機の後方上空に付いた。照準器に敵機を捉えて引き金を引く。曳光弾が敵機に吸い込まれ…命中!主翼付け根付近に機銃弾が飛び込み、破片が飛び散った。敵機は慌てて右に急旋回するものの、もう遅い。スピードを生かしてそのまま同方向に旋回。高度も速度もない敵機はまさに鴨だ。再び機銃弾を撃ち込むと、敵機はエンジンから白煙を噴いてそのまま地上に突っ込んだ。すると、無線から感謝の言葉が飛んできた。先ほど敵機に追われていたMS406からであった。返事を返しつつ敵機を探す。

 だが、Bf109は先ほどより大人しくなってきたように感じる。そろそろ燃料が足りなくなってきたのだろうか?そう思いながら様子を見ていると、敵機が一斉に空戦のただ中から離脱を始めた。案の定、相手の時間切れだったらしい。逃げる敵機を追撃すべく、機銃を撃とうとするも弾が出ない。弾切れだ。補給が半端だった為、短時間で弾が尽きたのだ。追撃は諦めざるを得ない、他の味方機も空戦で疲弊して追撃どころではない。それぞれ編隊を組んで帰り支度を始めていた。改めて、地上を見るとあちこちから煙が立ち昇っている。墜落した機体が炎上しているのだ。今日だけで敵味方何機落ちたのだろう、そう考えつつ基地を目指して飛んでいると、様子がおかしい。基地の方角から黒煙が立ち昇っている。大規模な火災が起きているようだ。基地が見えてきた。滑走路は穴だらけ、格納庫や施設がいくつも火災を起こし阿鼻叫喚の様相である。見るからに着陸不能だ。


「仕方ない、近くの不時着場に降りよう」

「了解、牧場でしたっけ?」

「ああ、喜べ。草が好きなだけ食えるぞ」


 中隊長のジョークをやり過ごしながら事前に指定されていた不時着場を目指す。基地や機体に問題が起こった際に着陸可能な場所である。少なくとも他のよく分からない土地よりはいい条件で降りる事ができる。指定された場所の上空に着いた。下は一面の牧草地らしい。だが、既に陸軍部隊が展開し受け入れ準備をしていたらしく、焚火で目印を作っていた。


「よし、まず俺が先に降りる。大丈夫そうなら続いて降りてこい」


 中隊長機が先に降りて行った。地上の状態を確かめて、着陸の手本とする為でもある。中隊長機は一度低空を飛び、下の様子を確かめた後に着陸に挑んだ。九七戦が地面に接地、少し上下に跳ねつつ停止した。どうやら無事に降りたようだ。中隊長に続いて着陸を始める。何とも忙しい一日だった、心の中でそう呟くと草地に固定脚が接地した。滑走路よりガタガタ揺れる、一抹の不安が過りつつ機体を真っ直ぐ保持しながら減速。無事に降りることができた。フランス陸軍の兵隊が駆け寄り、機体から降りるのを手伝ってくれた。そして、地面に足が付いた途端に猛烈な疲労感が押し寄せた。


 こうして、第700中隊激動の一日が終わったのである。

基地を破壊された第700中隊、彼らの戦いは果たしてどうなるか…


という事で続きです

ドッグファイトの描写がうまく書けたかちょっと不安です


次回更新をお楽しみに!

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